観察してみよう
個性的なヤツは、どこの世界にも居るもので。鼻につく、押しが強い、うるさい、あるいは無口。とっつきづらい。
などの欠点はあるものの、なぜか魅力的だったりする。
波風立てず平均的な友人とばかり付き合うのもいいが、どうせ一度の人生だ。個性的なヤツと仲間になって、
新しい視点を得たり「人と違う行動をとる理由」などを分析すると、価値観、世界観が広がる。
目立ちたがりなだけじゃない、個性的と映る表現の中に、自分に活かせるヒントがないか?
考えてみるのも、毎日が豊かになるコツだ。
そんなヤツとは関わりたくない、と思うならそれでもいい。
ただ、極端に「個性を排除」する側には回らないで欲しい。
個性を否定し、潰し合う社会は息苦しいのだ。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-26 ザキ
「センパァーイ・・・」
「うるせぇな ザキ」
シノザキって いちいち言うのもめんどくさい。「こんちくしょう」と思って、思いっきり縮めてやった。ザキの反対は「キザ」だし。こいつにゃ合ってる。
「お前、今日からザキな」
「ハイ。わかりました」
妙に素直な所のある奴ではあったけど。
「センパイ、センパイ」ってアヒルみたいに まとわりつかれちゃ、ウルさくってしょうがない。嫌いだったし。
「ピーッ」
“三管”という救助用の笛を吹いて、ザキが飛び込んだ。溺れている人がいると、その笛をふく。そうすると 待機中の監視員も飛び出して行って、全員で救助にあたる。
「アイツ、また飛び込んだよ」
瀬戸さんが笑った。
泳いでいるつもりの人。泳いでるんだけど、ヘタだから・・・溺れているように見える人もいるでしょ? そこらへんの判断は難しい所でもあるけど。
ザキの場合、疑わしきは全部救助。見せ場だから。
必要以上に派手な救助法をやったりして。
相手をあお向けにさせて、アゴを持って 泳ぐ 泳ぐ。
「おーい、ザキ。そこ足つくぞ。プールだから」
泳がなくていい。プールの中で 立って救助すればそれでOKな話。
溺れてる人、可愛そうに。溺れちゃいないんだから、目を白黒させて。
「ヤバイ。なんかヤバイ方向に行っちゃってるよ。このまま溺れたフリしてないと いけないのかな?」
なんて神妙になっちゃって。
それでもザキの派手なパフォーマンスは続く。
プールサイドに寝かせて。大勢の人が集まって注目される中で、水を吐かせるために腹を押しちゃったりすると、恥ずかしさに耐え切れなくなった溺者が、
「あ、あの。ボクもう大丈夫ですから」
そそくさと逃げていく。
かくして ここは「恐怖のプール」となった。
ザキ本人は さっぱりした、すがすがしい顔しちゃって。
大仕事を終えた職人みたいに、さっそうと肩で風を切って監視控室に戻っていく。日誌を取り出して、
「本日も2名救助しました。シノザキ」
サインしちゃう。
まぁ、でもね。だんだんコイツの事がわかってきた。
ザキっていうのは、ズルい奴なんだ。ズルい奴なんだけど、憎めないというか・・・
つまり。
とことんずる賢く、うまく立ち廻ればいいんだけど、どっかヌケてる。ズルさが途中でギャグになるタイプ。カラッとしたズルというか・・・やれやれ。
夏が終わり、監視員たちの社員旅行があった。
伊豆の別荘で2泊したのかな?
その時、ボクとザキだけ皆より遅れて、後から合流することになったんだ。2人で電車で行くってことで。
北千住で待ち合わせしたんだけど、いつまでたってもザキが来ない。どうしたのかと思って、電話した。お母さんが出て。
「まー、まー、いつもうちの友ちゃんが お世話になってます」
トモヨシ って言うんだ、アイツ。
「もうねぇ、甘やかされて育ってるんで、なかなか起きないんですよォ。でも、さっき やっと起きて出掛けましたから。申し訳ありませんねぇ。待っていて頂けますか?」
「ハァ」
しばらくして、ザキが来た。
「ハア、ハア・・・センパァイ、いや ちょっとそこで・・・通行止めがあったもので。足止めくっちゃって、まいったな。遅れました」
「フーン、オレは寝坊でもしたのかと思ったぜ」
「まさか そんな。今日は先輩待たしちゃ悪いと思って、早く出て来たんすから。アクシデントですよ、アクシデント」
「・・・・・・・・」
ボク、後ろからはたいてやろうかと思った。
電車でビールを飲みながら、長い列車の旅をした。とりとめもない話をして。
「コイツと何時間も一緒に居て、会話がもつのかな?」
と思っていると、
「いやぁ。ボク、バンドもやっているんですよ」
ガタン、と電車がゆれた───
ふてくされて眠ろうかと思っていたボクに、まさに寝耳に水をかけられたような話をしだした。
「なに!? お前、バンドやっているのかよ?」
ボクは 思わず飛び起きて、ザキの両腕をつかんだ。
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