寝る場所がないのはツライ
夢を見る、希望に燃えて突っ走る。
その気持ちは、わかるよ。でも、ちゃんと計画は立てよう。最低限の「衣食住」は確保しないと地獄を見る。生活がガタガタになると、夢どころじゃなくなるからね。
そんな無理をした、ボクの例を紹介しよう。
ボクは住む場所を失った。ホームレスになった。その辛さと言ったら・・・
元々、かなり古いアパートに住んでいたけれど 詳しくはこちら参照
それでも家が無くなるよりは、マシだった。ホームレス、マジではつらいよ。
詳しくは本編のストーリーで。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィール を見てね
SONG-33 ホームレス
練習にはロングトーンのトレーニングを取り入れ始めた。
ザキが音楽の発声法を持ち込んだんだ。
「ア―――」って、長く息を吐く。全部吐ききったと思ったら、さらにもう一度。最後の最後に残った息まで、全部吐き出すんだ。
腹式呼吸のいい練習になるよ。今でもやってる。
でもね、当時は。「長い息のコンテスト」みたいになっちゃって。皆、細く長く息をもたせて、「勝った」なんてやってる。本来の意味とは違うんだけどさ。とにかく練習はよくやってた。
肉体訓練から発声、演技、歌。くたくたになる。
でも練習のある日はいいんだ。いくらハードでも、終われば寝れるでしょう?
「シューコ、シューコ」 ザキと2人でエアベッドをふくらましてね。楽しい我が家。
問題は練習の無い日だよ。これ、つらかったなぁ。
週に4日ぐらいは他の劇団が使ってるから。夜遅くまで。
オーナーに掛け合って、「例の小部屋」は ボクがメインで使っていい、ってことになった。
でもーー
ボクらの練習日以外は、他の劇団が着替えに使ったりするから、
「他のグループが使っている時には”なるべく”遠慮してくれ。それ以外は自由に使っていいから」
って言われた。
結局、自由に使えって言われても、他のグループの練習日は「なるべく使うな」ってことでしょう?
てことは、自分たちの練習日だけの権利だし。夜遅くなると 屋根裏には「怪人」がいるから気を使うしで。あんまり使い勝手のいい部屋じゃなくなった。
結局、ホームレスになっちゃったんだよ ボク。
家のない辛さって初めて知った。これ、ホントにツライ。
寝不足、慢性疲労。いつも「ぐっすり寝たい、死ぬほど寝たい」って、そればっかり考えてる。
普段、歩いていてもクラーッ、とする。
激しい練習もしていたから「そのうち倒れるかも」と不安になってきた。今、ボクが倒れたらグループはたちまち空中分解。すべてが終わる。
なんとかしなきゃ。
ホームレスはつらいよ。
眠いんだけど寝れないから、公園のベンチで寝たり・・
ザキはそういう時には実家に帰っちゃうから。
雨降ってたりすると行くとこなくて。
1人で狭い「あの事務所」に舞い戻る。でも、練習の声が聞こえちゃうとね、気になって又、外へ出る。
夏に。
寝不足が続いて困っていたら、ザキが言ってくれた。
「先輩、俺の友達んちに行きませんか?」
同じ大学の友達が、今 夏休みで田舎に帰ってていないんだって。留守中 換気が悪くなるから、たまに部屋に来て窓を開けてくれるとうれしいんだけど、って頼まれたって言うんだ。
行ったよ。三軒茶屋の「友だち」の家。
新聞受けを開けると 長いひもがあって、引っぱると先っぽにカギが結んであった。
久し振りの畳の上。フトンなんか敷かなくても充分気持ちいい。
ビールを買ってきて、そのまま ざこ寝した。
「ザキ。オレ もう畳の上じゃ寝れないかと思ったよ」
「センパイ。それ ヤクザ映画のセリフですよ」
「うん・・・こんなキツイ思いするなんて、考え足り無かったのかな?オレ、どうしても自分たち専用のスタジオが欲しくて・・」
ポツリポツリ。お互いの昔話をするうち、弱気に流されそうになって。
「・・・先輩。疲れがたまったら、またここ来て ゆっくり体を休めたらどうですか? 夏休みに入ったんで、俺も実家帰りますけど、先輩1人でも来れるでしょう? カギのありかもわかったし」
「えっ? オレ1人で来るのか? ヤッバイよそれ。もし帰ってきたら、どうすんだよ 友達」
「大丈夫ですよ。絶対帰ってきませんって。もし帰ってきたら、俺の名前を出せばいいんスから。ね? 先輩、折角部屋も空いてることだし、この際 利用出来るもんは利用しないと」
「うーん」
でも、まさかな。と、思った。思ったけど、何日かしたら また寝不足がひどくなって、フラフラしてきた。
「どうしようか?」―――さんざん迷った挙句、中目黒から三軒茶屋まで 金が無いから歩いて行った。眠い、眠い、眠い、眠い。でも、ザキの友達が帰ってきたらヤバいな。引き返すか?
思いとどまるんだけど、また 眠い、眠い、眠い、眠い。が襲いかかってきて覚えているザキの友人宅への道を歩いてる。
途中で、弁当買って部屋の中で食いながら、帰ってきたらどうしようかと思ってびくびくした。それでも横になると、眠りに引き込まれた。夢も見ない。ただ、温かい平和な世界へ舞い降りたんだ。
ブルッ、と小さな寒気に襲われた。布団も掛布もなく、畳の上で横になっていたから朝方、寒くなったんだな。顔も腕も、畳模様に跡がついていた。
寒いから何か無いかと見回すと、ソファに埃よけのカバーがかかっていたから、それで身を包み、再び目を閉じた。
泥のように眠って、アパートの住民たちが 起き出す前に帰ったんだ。
「ザキ、実はあの後さ」
その話をザキにした。1人で歩いて行って、1泊したこと。そしたらザキの奴、
「えっ? 先輩、1人で行ったんですか?」
「うん。だってお前が・・・」
ザキが驚くもんだから、こっちがびっくりした。
「まぁ いいですけど、見つからなくてよかったですねえ。もし見つかったら”泥棒”になるとこでしたよ。大胆だなあ。もうやめて下さいよ、先輩」
「・・・・・」
そういう奴なんだよ、ザキって。
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