突然の出来事、不慮の災害、寝耳に水
ある日、突然 予想もしていなかった天変地異が起こる。
その意味を考えても答えは出ない。人間の営みとは別に、自然界の流れがあるから。
「雨が降った」今日はツイてないなと考えるのは その人の勝手。でも雨も降らなきゃ地球は回らない。それが自然の摂理だから。
人間にとって不都合でも、地球にとって必要なこと。雨が降り「街に降り積もっていた埃を洗い流す」「大地に水を染み込ませ動植物の命を育む」「川に水を与え海に運ぶ」
人間視点から見れば不都合な災害。多くの人の命を奪い、理不尽な悲しみを与える。
「なんで? どうして? こんなことが・・」
人間からしてみれば許せない出来事。大地震、山火事、津波、雪崩。
偉大な文明も、一瞬で津波に飲まれ水の中に沈んだ。有名なアトランティス文明だけではなく、日本でも。
沖縄の与那国島の海底には、その昔あった王国が「海底遺跡」となって沈んでいるという。
地球が回っている限り起こる「突然の出来事」
聞いてないよー、って話。でもそれは、地球の営み。人間も動物も植物も、その地球の循環システムの中で生きている。あえて理由を挙げるなら 地球は「変化」を求めている。
ゆく河の流れは絶えずして、しかも もとの水にあらず <方丈記>
さらさらと川は流れ、常に新しい水と入れ替わっている
立派な英雄も、モーツァルト ぐらい天才な芸術家も、死ぬ。死ぬから新しい才能にチャンスが巡ってくる。死ぬもまたよし。それが変化だ。自然は変化を求め、変化させるために「しばしば天変地異を起こす」
ならば、
人間にとっては「不都合」なことも、地球の営みなら、それをどう受け入れてまた歩き出すのか「あるいは、もう歩き出さないのか」
選択の自由は我々にある。
そして、その時選択した行動で、未来が変わる。良くも悪くもーー
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィール を見てね
SONG-35 アトランティス
ライブハウスでは、曲の合い間に MC の替わりに小芝居を入れてやってた。
※ MC= 曲と曲の間の喋りのこと:Master of Ceremonies
あくまでも形はバンド。でも、芝居志向のメンバーの中から、そろそろ本格的なミュージカルをやりたいって要望が出て。
芝居小屋を捜しに行ったんだ。
新宿二丁目のヤバい方。あっちの方に小さい小屋があった。
「アートシアター新宿(じゅく)」
70年代には 随分実験的な公演が行なわれたホールらしい。
安かったんだよ、使用料。で、みんな強気になっちゃって。
「なんだ、これならロングで公演打てるじゃん。ロングでやろうよ、ロングで」
「そうだよ。大丈夫、みんなでチケット売るからさぁ。1人200枚づつさばけば、7人で・・・大もうけだよ」
盛り上がった。
こういうの「とらぬ狸の皮算用」って言うんでしょう?
で、10日間ぐらい、ベタ押さえにしたの。
―――なにが「チケット売る」だよ。せいぜい1人10枚売ったかどうか。
女子高生のメンバーが一番売った。クラスメイトが多いっていうのは強みだね。それでも60枚ぐらいなもんじゃない?
公演初日、行って驚いた。
どこにもステージが無いんだ。あたり前だ、芝居小屋だもん。セットも照明も、全部自分達で作るんだ。ど素人軍団のボクたちは真っ青になった。こっちはライブハウスの感覚でいたからさ。全部お膳立ては出来てるモンだと・・あわてて作業に入った。
公演初日だぜ。初日にトンカン トンカン、ステージ作りがはじまったんだ。もうあと数時間で幕が開く。見たことも、やったこともない芝居のステージ作り。
照明もやんなきゃいけない。「照明ってどうやって取り付けるの?」スタッフ誰にする? とか。
全然知識もなくて。ぞっとするね、今考えると。
感覚はバンド。でも、やってることは劇団。
なんとか公演には間に合ったけど、ステージ 高く作りすぎちゃった。人の背の高さぐらいあんの。客席から見えずらい。みんな見上げてたもん。
あと、ギシギシ 動くたびに揺れて。いつ崩れるんだろうと思って、ひやひやした。
照明も暗くってさ、まるでお化け屋敷だよ。音響なんてもっとひどい。
「きっかけ」になってもシーンとして音が出なくて・・・
焦ったスタッフが、効果音のテープさがしてカチャカチャやってるのが、客席中に響いてるんだ。
もう、史上最悪。あんな劇団 どこにもないぜ、きっと。
初日は、まあまあ客が入ったよ。あと、土、日もね。
でもそれ以外は・・・
ゼロの日もあった。ゼロだよ。誰も居ないってこと。
しょうがないから客引きしたんだ。大通りに出て、 チケット売ろうとしても売れないから、タダで配るの。客がいなけりゃ、始めるに始められないでしょう? だから必死だ。
メンバー1人 最低5人は連れてこいって。2時間ぐらい前から客引き。
なかなか貰ってくれなくてねぇ。
「ただ」でも何か裏があると思われて、警戒されちゃうんだね。
やっと何人かが事情解ってくれて。時計を見ると、もう開演時間を過ぎてる。
耳をすますと向こうの方から、オープニングテーマが流れてくるんだ。幕が開いたの。
「やばいっ! 出番に遅れる」
あわてて走る。全力疾走。間に合うか? 冷汗、冷汗、ドドドッとふき出してくる。
裏の路地を抜け、ステージの後ろの非常口から駆け込む。コースケも遅れて走り込んできた。
と、そこはもうステージの上。そのままスタートだ。
「ハァ・・・ ハァ・・・ ハァ・・・」
息を整えながら見回すと、皆が連れてきた客が座ってる。
買い物帰りのおばちゃん。仕事の合間の営業マン。学生とか。工事の途中の現場のおじさん。
そんな綱渡りの毎日。無謀だぜ。あまりにも無謀で無知な計画。
ああ、もう思い出したくもない。
超ド素人の顔から火が出るような、めちゃくちゃな公演。恥知らずの数々。あの頃見てくれた人には、心から謝りたいね、出来れば会って金を返したいぐらいだ。今、もう一度見に来てほしい。
今 振り返ってみると「何やってんの」と思う。無茶苦茶しすぎだろ。「若さで突っ走った」じゃ済まされないレベルだ。今のボクがいりゃあね。いろいろ教えてあげた。
でも、当時ど素人のボクにはプロデューサーもアドバイザーも居なかった。超 実戦主義。
敵と本物の刀で斬り合ってたもん。死にそうになったこともあった。剣術の達人に出会ったらアッサリ斬り殺されていただろう。でも、そうやって憶えていくしかなかった。この世界のルールを。
「これをやっちゃダメ」「あ、こうやればうまくいくのか」「そっち行ったら断崖絶壁だ」「コイツと関わったら騙される」
みんな真剣で斬り合って憶えた。深い傷、浅い傷。いっぱいある。だから、今は少し自信を持って作品を発表できるようになったんだ。そうなるまでは、まだまだ深い傷を負うんだけどね。
公演期間中に台風が来てさ。
すっごい雨が降った。
コースケが家に帰って、次の日 血相を変えて言うわけ。ニュース見てたら・・
「俺たちのス・スタジオが。あのマンションの地下がTVに映ってましたよ。目黒川のドブが氾濫して、地下に水が流れこんできてました。レスキューが劇団のやつらを救助して。カベをよじ昇って逃げる所をカメラが映してた」
ウソだろ? って感じで、誰も本気にしなかった。
したくなかった。公演中で見にも行けないし、
「そんな状況の所へ戻ったって、芝居に影響するだけだ」
そう思って、無理に無視することにした。
やっと公演が終わって、恐る恐る見に行ってみると。
マンションの地下の入り口が無い。消えた。
どこにも入口が無い。階段が見あたらないんだ。
「アレ?」
と思って見ると、水たまりの奥に階段らしきものが沈んでいる。
水たまりがゆれて、驚いたオレの顔が映っていた。
アトランティス――――
失われた宮殿のようじゃないか。
やけにドブくさくて、カビくさかったスタジオが思い出された。
料金もなぜ破格に安いのか。
しょっ中、水の底に沈む名所だったからなんだ。
気づいた時には すでに。
アメリカ時代から今まで書きためていた詞の束や、アイデアの走り書き、マイクとかギターアンプ、衣裳・・
そういう物が全部、下水の底に沈んじゃった。
文字通り 「水の泡」と消えたわけだ。
コメント