思えば、日本で落ちこぼれになり。
知り合いが 誰もいない場所でやり直そう、人生をリセットしよう。と、日本を飛び出し渡米。アメリカの路上で見た「アクションが激しいロックバンド」を見てノックアウトされ。
自分もバンドをやろう、とメンバーを探し。見つからず日本でもバンド結成をしようともがきながらもうまくいかず。何人にも会って裏切られたり失望したり大借金を負ったり・・
やっと結成した 理想のバンド。いや、理想に近づけようと日々激しく活動をしている仲間達。そして、導かれるように「最初にアメリカで見たストリート・バンド」のようにボクも 日本のストリート。原宿の歩行者天国をライブハウスにすべく 毎週日曜日 朝から夕方まで 路上に出てロックし続けた。
年間 100ステージ を達成すべく、お客さんをいかに引き寄せ、感動させ。ファンにするにはどうすれば良いかと日々考え、練習し ライブで試したことを分析、修正し さらに良いステージをやる準備をしてきた。
最初こそ、パラパラだった観客はみるみる増え、黒山の人だかりとなり熱烈なファンが出来、やがて「原宿 歩行者天国 バンドブーム」が巻き起こっていく。
このように、目的があって行動すれば、方向が間違っていてもあちこちぶつかりながら正しい道を見つけ、やがて願いは達成される。それが、これから話される内容だ。
作り話ではない。すべて真実であり、その気になれば誰でも願いを叶えられるノウハウを あなたとシェアしたい。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィール を見てね
SONG-49 原宿サンダーロード
よく考えたら100ステージと言ったって、「100日」ステージをこなすには3日に1度のペースでライブしなけりゃいけない。
バイトの身にはそれは無理だ。
「よし、100日は無理でも 1日3ステージやれば100回には到達するぞ」
すごい こじつけなんだけどね。どうしても100ステージにこだわりたかった。
ストリートライブを毎週日曜日にやるとして、月に4回。×1日3ステージとして12。これを1年だから12を掛けると・・
おお、楽勝で100ステージ越えるよぉ、 しかもこの他にライブハウスやイベントのステージなどを入れれば 100日ステージにも限りなく近づく。 やったぁ、って皆喜んだ。
「オレたちはジーニアス。天才だ。目標を達成していくんだ」
みたいな、ぎらぎらしたプライドがあったの。
マコトはレスポールのギターに花火を取り付け、ここぞってところでタバコの火で点火するの。
「ピシュワーッ!」って。
ドラゴン花火っていうの? 火花が3メートルぐらい吹き出してさ・・ 綺麗だよ。
「タマやーっ!」って叫びたくなる。「アッチッ、チッチ」火の粉が飛んできて、軽いヤケドをしたりするんだけどね、効果があった。
何だろうと思って遠くから人が走ってくる。
「ギャーン」ってポーズをキメて。マコトはそういう「引き出し」多かったからね。いろんなロックミュージシャンのビデオ見て、キメのポーズを研究していた。
困ったのはヒカル。あの頃の ヒカル は本当に地味だった。今はパフォーマーとしても優れたギタリストになってるけどね。この頃は・・いくら言っても、マジメな学生みたいにボーっと立って弾いてるんだ。華がない。
トミノスケがヒカルのいない時に、
「あの人、言えばやるからさ。皆でおだてて乗せようよ」
同郷のよしみっていうか、客がヒカルを見てないのを気にしていた。
「ヒカル、オレについてこいよ。一緒にからもうぜ」
なんて言いながら、みんなで派手なアクションでヒカルにからんでいくの。
おどおどしながらも、ヒカルもそれに応えるようになってさ、だんだんサマになってきた。
「オー」って客に拍手されると、本人もその気になってくる。
プレイヤーを育てるのは客だよね、やっぱり。
ボクは例のスピーカーに乗っかって、そこからジャンプするようになった。曲のエンディングのところでスピーカーによじ登って、ジャンプしてキメ。
「ジャーン」と終わって、「パチパチ」拍手、拍手。
この頃には、もう見てる客もニコニコ楽しんじゃってね。ボク達目当てで、毎週通ってくるようになってたんだ。
レイギャングは、女なのにリーゼントして、サングラスしてボクにからんでくる。
クールなの。カッコいい。ジョーン・ジェットかスージー・クワトロかって感じだよ。
ルックス的には一番ロックミュージシャンしてたんだぜ。
ベースはヘタくそだけど。
その頃から シンセベースをやめて、黒白のリッケンバッカー ベースを弾くようになったんだ。
実はそのベース、ボクん家にあった。
ボクが昔、ベースをやろうとして買ってたんだけど、メンバー見つからないウンヌンで、部屋でホコリかぶったままでね。
ミーティングでメンバーがボクん家に来た時、アイツがそれを見つけて、
「あっ、いいなー。カズさん弾かないんだったら・・・」
また例の勝手な思い込みモードに入っちゃってね。
もぎ取るようにそれを持って行っちゃった。
ま、
今 ボクが持ってるよりも、レイギャングが弾いた方がイメージ上がるし バンドのためだ、とも思って。新品に近い代物だったけど 中古価格で譲ったんだ。
本物のベースを持って、サングラスにリーゼント。見た目にはもうロックミュージシャン。
女のファンがいっぱいついてたね。キャーキャー言って見てる。バレンタインデーにチョコとかプレゼント山ほど貰って。
「スイマセーン。レイギャンさん、これ あたしから・・・気持ちを込めて」
「アリガト」
レイ・ギャング は、みんなから レイギャン って呼ばれるようになってた。
レイギャンの声を聞いたら、皆びっくりするんだ。女だから。
美形の男とばかり思って目をハートマークにしてプレゼント持って来たのに、突然 宝塚になっちゃった。
それでもあきらめきれなくて、後で他のメンバーに確認したりするヤツもいる。
レイギャンは、「そうかあ、ゴメンネ」
なんて謝ってんの。そしたらファンの子、
「いえ、いいんです。あたし レイギャンさんが女でも好きですから。ずっと応援していきます」
オイ、オイ。ヤバい方向に行ってないよなぁ、みたいな。
レイ・ギャングも苦笑いしていた。
ギターから花火は出すわ、スピーカーから飛び降りるわ、美形のベーシストはいるわでね、無茶苦茶ド派手バンドになってきたんだ。
TVや雑誌、新聞 マスコミから取材されることが多くなってきた。
トモコ チビ太は「ギャーン」とギターを弾いて、20メートルぐらいダッシュで走っていくし。
会長はサックス吹きながらバク宙。
キーボーディストのヤスコは、ポニーテールを白いリボンで結んで。激しく頭を振りながら叩きつけるようにピアノを弾く。
ブルースピアノが好きなんだ。アイツ。
普通、女のキーボーディストっていったら、シンセを「ヒヤーッ」って鳴らすだけの さしみの「つま」みたいな存在が多かったのにさ。ヤスコはそれを変えたんだ。
ホンキートンク、ブギウギ、ブルース。まだその頃は 技術的にはそんな大したことないんだけど、目指してる所がシブいんだ。
ピアノの上にジャック・ダニエルのボトルを“ダン”って置いて、弾きながら「グビッ」っとやる。中身はウーロン茶なんだけどね。
見てる客はびっくりしちゃうよ。「若い可愛い女の子が、ブルージーにロックンロールを弾いて、ジャック・ダニエル飲むかよ。普通」って呆気にとられてるんだ。
外人の客とかがさ、そういうヤスコの姿を見て、大ウケしてんの。
「イェーッ」って叫んで手を叩いて喜んでる。そのうち向こうは本物のジャック・ダニエル持って来て、ラッパ飲みでクビッとやりながら見てる。米軍のキャンプの連中じゃないかな? 腕にタトゥーとかがしてあって、ゴツいヤツら。
ヤスコもグビッ、負けずに向こうもグビッ。ステージが終わると、外人が何人もヤスコの所にやってきて取り囲んでた。
「サイン、サイン」って。
歩行天に名前をつけたんだ。
カミナリのように人の心に衝撃を与えようぜって、
「原宿サンダーロード」
TVとかが取材に来て、
「原宿サンダーロードのスター、ジーニアスです」
なんて言ってる。
カメラが廻ってるからね。ボク、歌いながら ワザとバッターンって大げさに路上に倒れて、そのままゴロゴロ転がりながら歌うの。
カメラが2台ぐらい追っかけてきて。
マコトはスモーク花火を使って、モクモク煙幕を張ったり。
ボク達の近くの屋台だけ、ダントツに売り上げが伸びてきた。真後ろの店なんかすごかったよ。ボク達目当ての客が、大量にビールを買い込んで差し入れしてくれるの。そういう連中が何人もいたからさ、もうビール飲み放題って感じ。
そうすると、テキ屋の態度も変わるよね。
ヤキソバ、タコ焼き、ビールも。向こうから差し入れ持ってくる。
いらないって言っても、置いてっちゃうもん。
「絶対、毎週続けてくれよ。アンタらにかかってんだからさ、ウチの売り上げ。その代わり、何でも持ってっていいよ。ウチで売ってるもの」
スタッフの昼メシになったりしてた。砂まじりの焼きソバ。お好み焼き・・・・
スタッフはね。コンソールをいじれるオペレーターを2人、バイトでやとってた。1日5千円ぐらいで。
ギャラを払ってたのはその2人だけ。あとはステージを見て、ファンになった連中が少しずつ近づいて来て、いつの間にかスタッフになってる。ボランティアで。
桜田って奴もステージを見て、通いつめるようになって。ボク達のマネージャーになったんだ。
マネージャーといえば。
評判を聞きつけて、倉本が戻ってきた。あの、スクランブル交差点で悲しみの別れをした倉本。詳しくは、こちら
借金、思ったよりも早く返済のメドがついたんだって。よかったよ。本当に良かった。
WELL COME BACK クラモト サン って感じだった。嬉しかったなー。
それからコースケ。
笑っちゃうでしょ? アイツもまた近づいて来た。
先日、テレビで取材された映像が朝の番組で流れて。それ見てやってきたらしい。
「いやあ、こんなに盛り上がってんのに、仲間はずれはズルイですよ」
って言うから、「自分からヤメたくせに」と言うと、
「アレ? そうでしたっけ? フハハ」
って無邪気なのか、ズルいのか?
「俺さぁ、カズさんとは昔からの仲間。ダチなんだよ。つまり、君たちの先輩ってとこかな。ウン、フハハ」
なんて自己紹介してる。
「調子いいな」とは思ったけど、ま 来るものは拒まず、去るものは追わず だ。
ただ、メンバーには昔のいきさつを話して、
「コースケって奴は、そういう奴だけど、あいつは1つのバロメーターになる。あいつが喜んで近づいてくるうちは、バンドがうまく行ってるってことだ。あいつが離れたら・・・ヤバいよ。気ぃ抜かずに、このままガンガン行こうぜ」
って、メンバーの気を引きしめたの。そうだよ。こういう時にこそ、調子に乗らずキチンとやらないとね。
風はいい風が吹いてる。心配事は天気予報ぐらいなもんだ。
毎週、空模様だけが心配だった。
雨は恐い。もしライブの途中で降ってきたら・・・・
ローンがまだ終わってない、大切な機材がダメになっちゃうからね。
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