人生の「どん底期」は誰にでも やってくる
もう、このモヤモヤ。しがらみ。すべてを捨てて、やり直したい。
そういう時には、中途半端じゃダメだ。何もかも捨てる覚悟で生まれ変わらないと。中途半端では、底を打って反転することができない。
これは、この物語の冒頭でも、ボクがやった やり方だ。しがらみ全消去!
その方法は こちら⇨ SONG-8: RE-BORN計画
家を捨て、友人知人を切り離し、名前まで捨てた。
その「人生リセット」を、今ここで 再び行うことになろうとは・・
しかし、この時には気づいてないんだけど、その後も何度か ボクは人生リセットしなきゃならんほどの危機を迎える。性格的に、危険地帯に入り込み過ぎるからね。
まぁ、そんなマヌケは ボクぐらいだろうけど、どんな人でも「失恋」「倒産」「病気」「お金」「転職」「投獄」「離婚」「その他人間関係」などで1度は「人生リセット」したい時も来るだろう。
その時のキーワドは「潔さ」だ
今までの「かび」のように がんじがらめになった しがらみをすぱっ、と全て断ち切る覚悟でリセットすること。躊躇すれば、そのリセットはうまくいかない。
「人生リセット」とは、一度「死んだ気で生まれ変わること」
ならば 人間関係への要らぬ気遣いも、空気を読む必要もない。まさに死んで生まれ変わるつもりでスパッとすべてを切り離そう。
大丈夫。
全て断ち切っても「本当に大事なもの」だけは失わないし、むしろ「それだけの覚悟ができて はじめて 本当に大事なもの が見えてくる」
全てを捨てても、今まで努力して身につけた技術やスキルも失われることがない。
つまり、全てを捨てても「以前よりは遥かに高い場所からの挑戦」になる。
その覚悟と身につけたスキル、そして不要なお荷物をバッサリ切り捨てて身軽になれば、今度こそ うまくいく。かもよ。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィールを見てね
SONG-72 素人バンド
レイ・ギャングとヤスコ・クイーンに連絡をとったんだ。
足立区の喫茶店に呼び出して、
「また やろうぜ。もう一度、一からやろう。今までの栄光とかキャリアも関係なくさ」
でも、気分的には 二人とも「あまり気が進まない」って感じだった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「みんなは、音楽やめられるわけ?」
ボクは、バンドをやめてから 歌う場所がなくて、強烈に歌いたくなって カラオケに行った。その時の気分を話したんだ。
「これからも カラオケがあれば、何とか生きていけるかなと思ったけど・・結局だめだった。何十曲も歌ったんだよ・・・・・・だけど、虚しさがつのってくるだけだった」
カラオケとステージは 似ているようで、やっぱり全然違う。まるで対極にあるんだ。
カラオケは、どこまで行っても 自分。自分のために歌うんだ。人の歌なんか、聞いちゃいないだろ? 拍手をしながらも、皆 次に自分が歌う曲を探してる。
そういう話をしたんだ。フーちゃんの曲が、ラジオから流れてきた話とかも。
「ステージってさ。普段、あまり うまくコミュニケイションがとれなかったり、言葉選びが下手で誤解されやすいオレたちが、唯一 心を解放出来る場所じゃない?人間関係では、イヤな思いをたくさんしたけど、それは 音楽のせいじゃない。音楽は・・いつだってオレたちを ときめかせてくれたじゃないか」
熱心に話をしてるうちに、皆の目にもわずかながら 光が戻ってきた。
「メンバー探しなんかしなくていいよ。とり合えず三人からはじめよう。オレ、ギター弾くよ」
「え?」
レイ・ギャングが驚いた。
「三人だけ?」
ヤスコ・クイーンも身を乗り出して聞いてきた。
「そう、オレのギターじゃ 素人バンドに逆戻りで申し訳ないけど・・」
「へー、面白そうですねぇ」
ボクの言葉に、ヤスコ・クイーンがニヤニヤしながら言った。
「そうですね、三人がいいですよ。もう人間関係で ごちゃごちゃしたくないし」
レイ・ギャングも嬉しそうに何度も頷いた。
「いいの?ヘタだよ。オレのギター」
変に期待されて 練習中に失望されても困るから、予防線を張ると レイ・ギャング は、
「いいですよ。自分達だけでスタートすれば、本当にやりたいように出来るじゃないですか」
と 包み込むように言った。うす暗くて寒い店の中だったけど、心はあたたかかった。
それから三人でのスタジオ練習がはじまったんだ。
ヤスコ・クイーン の地元の、江東区の 区民センターの音楽室で、週に二度ぐらいのペースで、いろんな曲をコピーしてさ。まるで学園祭の練習をしてるみたい。
「キャン、キャン、キャン、キャン」
「ンキャ、ンキャ、ンキャ、ンキャ」
リズムの練習ね。「表、表」「裏、裏」「表、裏」「裏、表」
ファンキーなリズム感を楽器で練習するわけだから。ただ歌ってた時よりも「サウンドの仕組み」がわかってくる。
「きっとこんな感じなんだよな、学園祭バンドって」
ボクが言うと レイ・ギャング は微笑んで、
「楽しいですねぇ」
と言った。ヤスコ・クイーンも、
「何か、バンドの原点に戻ったって感じ。好みの合うメンバーだけで、好きな曲をやってセッションするのって・・・・ あたしたち、最初からうまい人達とやってきたから、こういう経験してなかったですもんねぇ。新鮮だあ」
と はしゃいでいた。あいつは子供みたいなとこが ぜんぜん抜けてない。
そうさ、こうやって少しづつ うまくなっていけばいい。また、ゼロからの出発さ。
黒いレスポールを弾いた。「ブラックビューティー」って呼ばれてる、レスポール・カスタム。
すごく重いし、ギブソンなんて うまいギタリストが弾くもんだけど。チューニングが狂わなから、初心者にも都合がいい。
関連曲 BLACK BEAUTY, SILVER JET PLAY
「ドゥドゥーン」って、ベースをレイ・ギャングが弾いて。キーボードは ヤスコ・クイーン。ドラマーがいない。
とり合えずリズムボックスで練習しているからいいんだけど。将来的には必要だ。
「メンバーって、見つけようと思っても すぐには見つかるもんじゃないから、今から“メンボ” 出して 少しづつ探しはじめません?」
「うん、いいね」
レイ・ギャングの提案で、「メンバー募集」を 雑誌に戴っけてさ、色んなドラマーが来たけど ピンと来ない。
「これだったら、リズムボックスの方がマシですよね」
「そう、あまりヘタだとリズムが乱れて、練習にならなくなっちゃうよ。無理して決めないでじっくり探そう」
ヤスコ・クイーンの言葉に みんな納得した。
こんなもんなんだろうな、と思った。そう簡単に見つかるワケないよ。
テクニックの問題もあるけど、今回一番気にしてるのは 性格が合うかどうかってことだ。
「それが一番大事だよねぇ」
「そうそう。妥協はやめましょう。せっかく三人で楽しいのに、嫌な奴が入っちゃったら 又つまんなくなっちゃう」
お見合いみたいなもんだからさ。テクニック、ルックス、性格に音楽的指向。
こっちが気に入っても、向こうが気に入らないことだってあるかも知れない。なにしろ、ボクがギターを弾いてから、バンドのレベルは下がっちゃってる訳で。
プルルー・・
ガチャ。自宅にいる時、電話が鳴った。
「もしもし・・・・ワカル? 久し振り」
メンバー募集を見て、電話がかかって来たんだ。
「?」
「トミノスケ よ。・・・・・・元気?」
と、電話の向こうの声が言った。その声で、記憶がつながったんだ。
第一期「ロックンロール・ジーニアス」初代ドラマー「トミノスケ」からの電話だった。
全くの突然で、面くらってしまったよ。
「アレー?なつかしいなぁ、元気だったか?」
ボクが言うと、
「ウン。オレも久美子も元気にしとるけん。」
と聞き覚えのある 広島弁が返ってきた。
「そりゃ良かった、ハハハ」
「・・・しかし、すごかったねぇ ヤマハのコンテスト。ワシ、TVで見て感動したよ」
「ああ・・・・アレね。あれも もう昔話になっちゃったなぁ」
ボクにとっては苦い思い出になってしまったコンテストも、トミノスケには眩しく輝いているようで、「すごい、すごい」を連発していた。
ひとしきり世間話をしてね。
「・・・・・・」
そろそろ話も尽きたし、切ろうかな と思っていると
「ドラマー、探しているんでしょ? プレイヤーで見たよ」
※ プレイヤーは 超有名な 音楽雑誌
「・・・・・・・」
「もう見つかった?」
おそるおそる聞いてくる。
「いや、まだだけど・・・・」
“だけど”って言うのは否定の意味ね。まだ新しいドラマーは見つかってないけど、お前とは もうやらないよ。っていう牽制。別に急いで探してる訳じゃないから、もうツマんなくなるメンバーとはつるまない。
詳しくは、コチラ⇨ SONG-57【危険なサイン、国によっては⭕️されるぞ!】中指 立てるべからず
「ワシ・・・・ あれから随分色んなヴォーカルとセッションしたよ。でもカズさんみたいに歌える人には会えんかった」
「・・・・・・」
雰囲気でわかるよ。「まぜて」って言ってるの。でも黙ってた。黙って ただ話を聞いてたんだ。
「もし・・・もしさ、またドラムが必要になったら連絡して。すぐ飛んで行くから」
「ああ、そうだね」
「本当に? 絶対だよ。ワシ、待っとるけん」
必死さを感じた。寝ないで書いたラブレターを聞かされてる感じ。
トミノスケ にとっては、もう「音楽素人の kaz」じゃないわけよ。あの頃、散々「素人でしょ、kaz さん」って態度で接してた男が。今や伝説のヒーローに見えてる。
自分で結成したバンドで「ホコ天バンド・ブーム」を作って ヤマハのコンテストで優勝させた。そういう憧れの目で見られてんのがわかる。トミノスケ には、その後のボクの「転落劇」なんか見えちゃいない。
トミノスケ にとって。今、ボクは大尊敬の的なの。もう 音楽の世界知りつくしてる大成功者に映ってるわけ。ぜんぜん違うけどね。
本当の ボクは、また ど素人 に逆戻りで 下手なギター弾きながら活動を始めたばかりのアマチュアでしょ。なのに、トミノスケ のひれ伏さんばかりの雰囲気といったら・・・
「・・いいよ。気が向いたらセッションでもして遊ぼうぜ。」
ちょっと可哀想になっちゃってね。そういうふうに返事をしたんだ。
それに、話してみてわかったけど、もうゼンっぜん 昔と違う。あの斜に構えた理屈っぽさは無くなり。素直なの。シッポ振って 前向きで、ボクを尊敬してくれてるって感じ。
「でもオレ、今は歌はやんないんだ。ギターを弾いてる。ヘタなギターの練習に付き合うっていうんなら、今度遊ぼうよ」
「えっ、本当? いつにする?」
かなりせっぱ詰まってるんだな、バンド活動に。なかば強引に日にちを決められた。
その話を レイギャンとクイーンにしたらね、
「えー、トミノスケとセッションですかぁ?」
ヤスコ・クイーンは、ぷーっとふくれた。そして怒りが湧き上がってきたようで、
「やだ絶対!! あんなのと。2度と会いたくないよ。クミちゃんとあたし達の仲まで引き裂いてさ。許さないんだから」
例によって、また ふくれた。あいつは子供みたいなとこが ぜんぜん抜けてない。
しかし それは当然の反応でもある。昔を知っていればね。ヤスコ・クイーン の、あまりの拒否反応に、レイ・ギャング は 拒否することを忘れて
「まぁ、まぁ。落ち着いて」
と とりなす側に回ってる。ハッ、と それに気がついて、
「あ、私だって嫌だよ。トミノスケ には 散々 素人扱いされたんだからさ」
レイ・ギャング も、思い出したように鼻息を荒くした。
でも、
「うーん。それがさぁ、今 お前らのこと スゴイ、って褒めてんだよなぁ。ほら、レイギャンもクイーンも、ベストプレイヤー賞 もらっただろ。あれで評価が 180度 変わったみたい」
今のトミノスケの様子を説明すると
「へー、そんなに前向きに変わってるんですかぁ」
レイ・ギャングは興味を示した。クイーンは“フーン”って感じで、ほっぺた膨らませて。ぶつぶつ言ってたけど。
それでもセッションしてみようかって気にはなってくれたんだ。
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