SONG-78【人との出会い、別れが運命を変えていく】 再会

人生の分岐点

アッチを立てれば コチラ が立たず

そういう選択を迫られる時は、きっと来る。

その時、「安易な道を行けば 必ず後悔する」しかし「困難な道を、覚悟なく選択すれば 途中で挫折する」

だから、心が弱ければ「どの選択をしても行き詰まる」し、「困難が襲ってきても、歯を食いしばって先へ進むなら、いつか素敵な場所へ辿り着く」

あの時、こうしていたら・・

と思うのは、意味のないこと。何度 同じ場所に巻き戻されても、「その時の自分は同じ選択をするだろう」
その人の「思考法」「生き方の癖」がどっちへ行くか決めるからである。何気なく決めたつもりでも、それぞれ独自の「選択パターン」がある。意識して 劇的に人生を変えない限り、パターンは大して変わらない。

だから、過去の選択を後悔するよりも、今後「どんな選択をしても良い未来を創る」と決意を決めて行動することの方が遥かに有益な考え方なのだ。

過去はもう、終わった。今と未来の選択はあなたの手の中にある。考え方と行動が変われば、未来は必ず変わる。良くも悪くもーー


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィールを見てね

クロスロードに立つ男の画像。テキストメッセージで、

You can't change the past, you can only change the present and the future
目次

SONG-78 再会

事務所の扉を開けて入ってきたのは意外も意外。
ずっと ご無沙汰していた ケーシー・ランキンさんだった。

「どうして?」

「ああ・・・・・・・」

みんな、うめくように。思わず声が漏れた。

「ケーシーさん・・・どうして・・」

レイギャングは、再会の感激と、意外な場所でのめぐり合いの疑問とで混乱し、涙目になってやがる。ボクらの混乱と疑問に答えるように、ケーシー・ランキン さんは ゆっくりと口を開いた。

A touching reunion

「今サッキ、マーキ カラ電話アッテネ。ボクノ知ッテル バンドニ 会ワセルカラ六本木マデ来イッテ イウンダ。デモ ボク、レコーディングヲ シテイタ時ダッタカラ、断ワッタノ」

ケーシーさんは、ボク達を見廻して。

「ソーシタラ、ドッカノ ロックバンド ダッテ イウジャナーイ? ロックンロール・ジーニアスの名前 出サレタラ、来ナイ訳ニ イカナイデショウ? レコーディング中断シテ、ヤッテ キマシタ」

「わざわざ・・・・・オレ達の為に・・・・・ですか?」

ジーン、とした。ボクとケーシーさんの距離は、六本木と自由ヶ丘なんていう簡単な距離じゃない。
この再会までに 何日も、何年もの月日が流れた。 やっと。やっと再び出会えたんだ(ボクらと ケーシーさんとの出会いについては、コチラ)⇦Click

casey-raygang
Mr. Casey Rankin と Ray Gang

「真木さんは・・・・・ケーシーさんと知り合いなんですか?」

ボクも レイ・ギャング と同じように感情の起伏のコントロールができなくて、今にも涙腺崩壊しそうだったので、気を紛らわすために質問をした。

「うん。昔からの知り合い。よく一緒に仕事をしたよ。なぁ、ケーシー?」

真木さんの軽口をかわすように、ケーシーさんは、

「フン。仕事ダカ、ヤバイ事ダカ、昔ゴイッショ シマシタ」

ケーシーさんは、どうも真木さんをよく思っていない、というか警戒している感じだった。確かにうさんくさい系の業界人の匂いをプンプンさせていたから・・・

scammer and music producer

「おいおい。そりゃねぇだろう?」

真木 さんの抗議を遮るように、

「・・・・・デ?」

ケーシーさんは 事務所の人間たちに用件をたずねた。
まさか、ただ再会を喜ばせるだけではないだろう―――  答えを待っていると、真木 さんが口火を切った。

「いや、実はさ。彼ら、ジーニアス。今 この事務所で面倒見てるんだよ。で、プロデューサーにジミー木場をつけてたんだけど・・・・・」

「ジミー?」

Shady meeting

ケーシーさんの顔色が さっと変わった。慌てた真木さんは、

「いや。ケーシー、ナーバスにならないで。お前と彼が いろいろあったのは、知ってるからさ。・・実は、そのジミーと この事務所の社長とがもめててさ。彼と手を切ろうと思ッて・・・それで次のプロデューサーとしてどうかと思って、来てもらったんだ」

「えっ!?」

今度はこっちが驚ろく番だった。

同時に真木さんの手腕に「うまい!」と うならざるを得なかった。

「何という ウルトラCだ。これで オレたちは、この事務所と縁が切れにくくなったってことだ」

舌を巻いた。

conspiracy

ジミーさんとケーシーさん。いろいろあったみたいで、今は疎遠なんだって。
そういえば、ジミーさんもケーシーさんの話をする時、ちょっと変だった。口の端をゆがめるように話してた。
 
二人に何があったかは知らないけど、水と油ってことだけは確かだな。

「デ、カズタチハ ドンナ事 ヤッテルノ? 今」

ケーシーさんの質問に、ジミーさんをうならせたビデオを再び使用した。ガチャンとセットして・・

VHS VIDEO DECK

「おっ」

と 真木 さんが声を発すると、マネージャーは「うへっ」と半笑いになった。

事務所 の社長である、中島は

「すげえな、セクシーじゃん」

と下品に手を叩いて喜んだ。

事務所のスタッフが口々に感嘆するのと対照的に、ケーシーさんは 終止無言だった。

Reactions from all three parties

「あれ? やっぱり突飛すぎて、嫌がられたかな? ケーシーさん、音楽に真面目な人だから、こういう色物っぽいのは やっぱり・・・」

と心配するうちに、ビデオが終わった。

「・・・・・・モウ一回 見ヨウ」

ケーシー・ランキン さんは静かに呟くと、

巻き戻して、再び再生する。やはり無言で。ただ見つめているだけ。
終わって。再び巻き戻して。再生。そのくり返し。

producer thinking about something
producer thinking about something

「フゥーン。頑張ッテ イルンジャナイ」

何度目かの再生の後、ケーシーさんは やっと口を開いた。

最初、扉を開けて入ってきた時、表情がすごく硬かった。ボクたちが感激して話しかけても、ずっとよそよそしかったんだ。

アレって、警戒していたんだと思う。

大抵の場合、再会って失望に終わるものだよ。
昔、あんなに輝いていたのに、どうしちゃったの?
そういうことって あるでしょう? 友達に会ったり、昔の恋人に会ったりした時でもさ。

想い出が素敵なほど、お互いが過ごした時間が大事なほど、再会は怖い。
もしかしたら、あの頃が消えてしまうほど ガッカリするかも知れないからね。


成長、それが見られないと「現状維持」でも後退しているように見えてしまう。

meet-again-and-be-disappointed-in-the-other-person

だからケーシーさんも、すごくよそよそしかった。バリアーを張りめぐらしていた。
いかがわし気な真木さんも からんでいたし。

でも、認めてくれたんだ。新しい姿に変わった ボクたちを、受け入れてくれた。

ケーシーさんはいつも、そう。物事の本質を、作品の質を見つめている。ちゃんとやっていると 努力を認めてくれるんだ。

「アノ時、ジーニアスト再会シテ、前ヨリモ 良クナッテ イタコトガ、トッテモ ウレシカッタ。ロックンロール・ジーニアスガ 今も続イテイル事サエ 奇跡ナノニ、モット パワー アップ シテイテ クレテ・・・・・・最高ヨ」

後になって、ケーシーさん そう言ってくれたんだ。ピザ屋か何かで飲んでる時だ。

「コノ ビデオ、ボクニ プレゼント シテ クレルンデショウ?」

ケーシー・ランキン さんは そう言って、持って帰ってったんだ。奥さんとか娘さんに見せたいんだって。皆、ジーニアスの復活を、心から喜んでくれたらしいよ。

それから方々回って業界の知り合いに見せて回ってくれていたらしい。ボクたちを何とか世の中に出してやりたい。今度こそ、って。そういう人だよ。ケーシーさんは・・・

Genius-BAND MEMBERS

でも。

なぜ 順番が逆じゃなかったんだろう?

ジミーさんにビデオを見せて、OKが出た。
さぁ、やろうと思っていた その二時間後に、ケーシーさんと再会。どんでん返し。

どうして これが逆じゃなかったのか?
あのVTRを見るまでは、ジミーさんは これほど本気じゃなかった。

あの日、ケーシーさんが帰ってから、真木さんと 中島 社長 に迫られた。

「どうするんだ? これ以上 ジミーと関わるって言うんなら、俺たちは手を引くよ。でもジミーと別れて ケーシーと新しくやり直すっていうんなら、全面的にバックアップしようじゃないか。ケーシーをプロデューサーとして、レコーディングして レコード会社と契約する」

recording work

真木 さんの突然で、あまりにも一方的な言い草に ボクは抗議した。

「ちょっと待ってくださいよ。さっきジミーさんに このビデオ見せて、ジミーさんもやる気になってくれたんですよ。レコード会社を決めるって言ってくれて・・・今さら、そんな」

「じゃ、ケーシーはどうする? 彼はジミーとは確執があるからな。一緒にはやらないよ。ジミーかケーシー、俺たちは どっちでもいいんだ。ハッキリ決めてくれよ」

真木 さんの独壇場になった事務所で、ボクの頭はヒンヤリして他人事のような気分になった。

さぁ、これが芸能界ってヤツだよ。THE 芸能界。

どっちでもいいとか言いやがって。人の弱い所を突いてるもんだから、えらく強気じゃねぇか。

「さぁ」

「どうする?」

真木 さんと 中島 社長が 歌舞伎の見栄を切るように 詰め寄ってきた。

put on an impressive show

「どうするって・・」

急にそんなことを言われても答えなんか出てきやしない。何を信じ、誰を選ぶ?業界はウソつき野郎の吹きだまり。全部が全部そうとは言えないけど、ボクが見てきた連中はそうだった。一般の社会では考えられないような いいかげんさが まかり通る世界だ。

「どうするか決めてくれよ」

真木さんはポーカーフェースで言ってるんだけど、目の底が笑ってるんだよ。
ほっぺたに傷もった連中に脅される、みたいな物語や音楽マンガなんかを見たりもするけど。本物の業界の怖さってそういうことじゃない。もっと、ヌルっとした・・

そう、ウナギを手でつかんでいるような感覚。目の前の 中島 社長 のような男。ヌルヌルしてて 実態がなく、掴もうとするとスルッと逃げてく。そんなとらえどころの無い苛立ちがずっと続く恐怖なんだよ。


微笑む悪徳音楽会社社長のイラスト。背後に彼の「つかみどころのない ヌルッとした気持ち悪さを表現する」ウナギのイラスト画像。


そして そんな所から逃げ出そうとすると

「ケーシーにプロデュースお願いしちゃったんだよ、どうするの?」

真木 さんの言葉に 逃げ場を失ったボクは、

「どうするって・・・ケーシーさんが出てきちゃったら、もう答えは出ていますよ。ジミーさんにも大変お世話になったけど、ケーシーさんとのつながりは、もっと長く 深いですからね。でも、レコード会社はどうするんです? ジミーさんは、すぐにでもデビューさせるって言ってくれてるんすけど」

「あっ、その事だったら任しといてよ。俺、メーカーは全部知ってるし」

defeated warrior

メーカーというのはレコード会社のこと。

「俺がお願いすれば、どこのメーカーも一発で決まるよ。どこがいいの? レコード会社?」

えらく明るい声で 真木さんが言う。

「どこのって・・・・オレたち、選ぶ立場になんていませんよ。今までさんざん レコード会社決まらなくて苦労したんスから。受け入れてくれて、ケーシーさんのプロデュースでやれる所なら、どこでも」

「あっそ。じゃあ簡単だ」

「簡単って・・・・・本当ですか?」

「アレ、疑ってんの? この事務所のタレントのレコード会社も、みんな俺が決めて来てやってるんだよ。ねぇ中島さん?」

「そうですよ。全て真木さんに任しとけば間違いないですから」

微笑む悪徳音楽会社社長のイラスト。背後に彼の「つかみどころのない ヌルッとした気持ち悪さを表現する」ウナギのイラスト画像。
怪しいなぁ、コイツらの言葉・・

中島社長 と 真木 さんの言葉に、

「本当に? ・・・本当にレコード会社、決めてもらえるんですか?」

にわかには、信じ難い話だ。真木 さんは呆れたように笑うと、

「何で? 何 そんなにビビってんの? レコード会社って言うのはね、ノルマがあって。毎年、何人かのアーティストのレコードを出さなきゃいけないことになってんの。ディレクター連中も必死だよ。必死で探してるんだ。新人を。そこに友達の俺が行くだろ? 間違いなく決まるって。しょせんコネの世界なんだから。ワカル? 君たちよりヘタなバンドだって、たくさんデビューしてるだろ? なぜか? なぜ、君たちには順番が回って来なかったか?」

「・・・・・」

Waiting for your turn forever

バンドメンバー全員が、その答えを知りたかった。その答えを、待った・・・

「簡単さ。俺のようなコネを持った人間と めぐり会わなかっただけのことだよ」

真木 さんの言葉に、後ろから殴られたようなショックを覚えた。

「何ということだ。しょせん その程度のことなのか? そんな事で、沈んでいかなければならなかった才能を オレは山ほど知っている。 ひどい。もし、それが事実だとするなら、この世界はひどすぎる」

心の中で世界を罵っていたボクに、あっけらかんと 真木 さんは言った。

「今週中に レコード会社の契約書、持ってくるから。安心して待っててよ」

「はい」

丸め込まれた、という心の声に 強引にフタをした。

be rounded up and enslaved

瓶に詰め込まれた男の画像。背後に、捕虜収容所の鉄剛毛の向こうの男たちの画像。


信じよう。信じるなら、何という幸運だ。
ケーシーさんと作るアルバムでメジャー デビューだ。これこそ理想、夢に見た姿じゃないか!

「そのかわり」

と真木さんは言った。

「そっちは そっちで、今週中にジミーと決着つけてきてくれ。それが条件だよ」

「・・・・・・・」

全員、黙っていた。

ひどい交換条件を突きつけられても、ボクたちは何も言いかえせなかったのさ。
世話になったジミーさんに後ろ足で砂をける、

裏切り者になるわけだよ、これから。

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Become a traitor out of necessity
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