今回より、第二章の「アメリカ」編がスタート!
再出発、英語では Fresh start というが、新しい出会いはいいことばかりではない。傷つくこともある。今までの価値観に囚われすぎていると、いいことや良い人との出会いもマイナスに捉えがち。
これでは未来が開けるわけがない。
どうせ再出発するんなら、今までの常識や行動に縛られず、つまり自分の中の「常識を壊す」ぐらいの勢いで受け入れ、前とは違う行動をしてみよう。
これはどうしても嫌だ、というものを弾いて、そうじゃないものは一旦 肯定的に捉えてみる。
そうすることで、再出発前とは違う未来を切り開けるのだ。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-11 ワイルド フレーバー(第二章スタート!)
アメリカに着いてからずっと感じてたんだけど、自然の匂いがするんだよね。土の匂い、水、ワイルドな森や動物、果物とか。アメリカの大地からそういう匂いが風に混じって流れてくる。
日本だとかなり田舎の方に行ってもなんとなく人間の管理下にある「屈服した自然」に見えちゃう。木も森も、なんだか「自然風」に作られてるイメージがあるな。子供の時は、日本にも本物の自然があったけど、もう一度取り戻せないだろうか?
アメリカの大地から吹き上がる空気がボクの野生の本能を刺激していた。
多少の英語は話せるように中学英語から勉強し直したはずなのに、まるで歯が立たない。
何言ってんのかちんぷんかんぷん。話そうと思っても「アウアウ」ばかりで何も出てこない。こうなったらもう、身振り手振り。オーバーアクション。本当にジェスチャーだけは短期間でうまくなった。
空港からリムジンに乗って、わけもわからず身振り手振り。ホテルの宿泊券を見せてなんとかかんとか「ホリデイ イン」にたどり着いたんだ。
※ 注 ホリデー イン とは
アメリカの有名なホテルチェーン。割と安価で、日本のアパホテルのようなもの。
日本でケアしてくれたのは、ここまで。さぁ、これからはひとつひとつ。全部、自分でやらなきゃならない。冒険の始まりだ。
メシでも食うか、とメニュー開いても全部英語で書いてあるから、すぐ閉じた。辞書を片手に調べる。コーラルゲーブルって・・・ あー、珊瑚のことか、サンゴ礁か。こんな調子で怖いけど、ボクはここから赤ちゃんになって生まれ変わるんだぞ、と怖がる自分に言い聞かせていた。
入学手続きの日、メキシコあたりの顔した連中が、巻き舌で喋り合ってる。大声で笑って、陽気。こっちは笑うどころじゃない。どこへ行って、何をすればいいのか? まったくわからない。まさに、ボクのことを誰も知らない場所にやってきた。
なんだか学校側の事務員のような人にカタコト英語で尋ねると、ペラペラーとまくしたてられて「ドゥーユー アンダ スタン?」目を見て言われるから思わず「イ・・・イエス、イエス」わからないけどとにかくイエスとうなずいてその場を離れて考えるんだけど、さっき言われた英語をつなぎ合わせても、やっぱりわからない。
再び聞きにいくと、すごい剣幕で怒鳴られた。「ヘイ!」何度同じこと言わせるんだ。さっきアンタは「わかった」って言ったよなぁ。みたいなことを大声で、しかも早口でしゃべって最後に指で机をコツコツ叩きながら
「OK? ネバー アスク ミー、ア・ゲ・イ・ン!」
金髪の女のスタッフに挑戦的な目で覗き込まれたボクは「ハウス!」と言われた犬のように尻尾を巻いてすごすごと退散した。
見かねたメキシコ顏のひょろっとした男が、巻き舌の英語でゆっくり説明してくれる。
「おー、こっちの方がわかるぞ」
南アメリカの独特の訛り英語に感謝した。外国人同士の方が、本物英語より聞きやすいって、どういうことよ? と思った。
アルフォンソ
「ホェア アーユー フロム?」
そのメキシコ顏が聞いてきた。
「ジャパン」
ボクは日本代表みたいな誇らしい気持ちになって、そう答えた。ナショナリズムの芽生えだろうか、ボクは日本のいいところ、おすすめなんかを誇らしげに、でもつたない英語で伝えた。向こうも目を輝かせて行ったことのない日本に興味深々だ。
そのメキシコ顏はアルフォンソと言った。ベネズエラって国から来てるらしい。とにかく陽気だ、人懐っこい。ボクはアルフォンソと友達になった。
アルフォンソは 自分の仲間たちを紹介してくれ、ボクも彼らのコミュニティーに溶け込みサルサの踊り方を教わったり海に行ったりバーベキューをしたり、恋をしたり一緒に勉強したりしたんだ。アルフォンソはボクの日本自慢に魅了され、3ヶ月後に、本当に日本旅行に旅立ってしまった。
宿泊は「ドミトリー」という、つまり学生寮に入ったんだ、家賃が安かったから。2人一部屋。
部屋に入ったら、薄暗い部屋の中に「真っ黒」な同居人がいた。マイアミ大学の社会学部の学生らしい。同居人に英語教えてもらえば上達早いな、ラッキーと思っていたら、コイツ。あの狭い部屋の中に友達連れてきて、しょっちゅうパーティーやってた。音楽を夜通しガンガンかけるからふとんかぶってもうるさい。寝不足が続いてついに堪忍袋の緒が切れて
「うるさくて寝れないんだよ、静かにしてくれ」
って言ったら
「え? そうなの? 何にも言わないからキミも音楽が好きなんだな、と思っていたよ。ごめーん」
と言って次の日からそいつは友達の部屋へ行ってパーティーを続けましたとさ。言わなきゃわからん、という風土と言わなくても察しろという日本文化の違いに出会った瞬間だった。
スコール
マイアミはスコールの街。
昼下がりの決まった時間に、決まったように大雨が降るんだ。ザーッと、空が破けたみたいに。そして三十分ぐらいでカラッと嘘のように晴れてくる。毎日そのくり返し。ボクはシャワー代わりに使っていた。スコールが降りそうな時間に石鹸を持って歩いてる。ザーッとくると頭にも服にも石鹸つけてゴシゴシ。人間洗濯機。
洗い終わった頃にピタッと雨がやんでピーカン。そのまま散歩してると一時間もしないうちに服も髪も乾いた。
サンダルで舗装されたキャンパス内を歩く。大学の中にでーっかい湖があって、一メートルぐらいの魚がジャンプしてたり。休みの日に、海の桟橋まで釣りに行って釣り糸を海に投げ込むと釣竿がギューンって海面に突き刺さる。必死で巻き上げると肩幅よりずっとでっかい「ジャック」って魚が釣れた。
鯛もよく釣れる。そういう魚をさばいて刺身を食いながら、一切れを餌にして海に放り込むと、再び強烈なアタック。リールに巻かれた釣り糸がビーッと出ていき竿をあおったら、沖の方でジャンプする。巨大魚だ。もう、テクニックも何もない。魚との引っ張りっこ、綱引き。
40分ぐらいかけて上がってきたのは二メートル以上もある細長い魚。「バラクーダ」という巨大カマスだ。牙がびっしり生えた大きな口で、人を襲うこともあるらしいよ。南の海だから、そういうのがいるんだ。
湿地帯の陰で立ちションしようとしたら
「ワニがいるから危ない」
って言われたり。本当かな、いるの? と半分冗談に思っていたら別の湿地帯で見た。大きいワニ。あれなら人間でも襲ってくるね。
「いててて」
サンダル履きの指が突然痛くなったからよくよく見てみると。でーっかいアリンコが足にかみついてる。蟻だよ、可愛げない。柔らかい皮膚の部分めがけて攻撃してくる。すごく好戦的。
血がにじんでた。虫までがワイルドに暮らしてるんだな。もう毎日が無茶苦茶。はしゃぐしかない。
バリーマニロウの「コパカバーナ」が街中に流れていて・・・ そんな時代だった。
フリーズ! マイアミは麻薬地帯
キャンパスには黒人の学生が多かった。胸のところで短くカットした チビT を着てる。
変なファッションだな、と思ったけどマッチョなボディを自慢げに見せたいらしい。海兵隊出身で「この間まで ヨコタにいた」というヤツがいっぱいいた。アメリカで兵役を務めると大学の学費が免除になるとか、そういう制度がある。
連中は、日本人とは体格が違う。猛獣みたいだ。特にマイアミ大のアメリカンフットボール部の連中なんか怪獣だと思ったもんね。
大学構内では、ヤクの売人がごろごろ逮捕されていた。バハマやキューバ。あっちの方から良質の大麻や麻薬なんかがどんどん入ってきてたし、特に大麻の質が最高らしい。キューバ産のマリファナを取引する中継地点がフロリダのあたりなんだそうだ。麻薬が入ってくる表玄関、そんな場所とは知らず、渡航先に選んじゃったんだ。
大学生がだよ、自分の寮のベランダで上手に栽培した鉢植えの大麻を自慢してる。「大学生兼ヤクの売人」みたいなヤツらもいたからキャンパス内が「薬物取引の隠れ蓑」になってたのか、とにかく大捕物で手錠をかけられ連行される学生がいたり、パトカーが大学の周りをよくパトロールしていた。
夜、歩いていると スーッと脇にパトカーが近づいてきて、ピストルをつきつけられる。壁に両手をつかされ、足も広げて身体検査。ガンに狙われているって、あまり気持ちのいいもんじゃない。
ある日、道を歩いていると
「アーユー ジャパニーズ? 日本人ですか?」
と近づいてくるヤツがいた。日本語・・
何だ、やっぱりここにも日本人はいたのか。日本人の顔した連中とは何度もすれ違うが、ほとんどは中国人か韓国あたりの人間だ。
久しぶりの日本語を、懐かしさと照れ臭い気持ちで聞いていた。
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