SONG-12【協調性と個性と同調圧力】日本人村

SONG-12main-visual 同調圧力イメージ 一人の男の子を除け者にし、数人がコソコソ陰口を叩いてる。
みんながやるなら、悪いことでも自分もやります?

同調圧力と自己のポリシー

みんながやるなら、悪いことでも自分もやります。「和を乱さないために」そういう感覚、ずるいと思う。日本の企業犯罪なんか、このパターンが多いでしょ? 「会社のためにやりました」と言ってエリートがつかまる。いい悪いの判断の前に、仲間外れにされたくない。同調圧力に従う。

ひとりぼっちになりたくないから流されちゃう。

というのが今回の物語のテーマだ。


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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university -students
目次

SONG-12 日本人村

実際に、思ったよりも日本人はいた。マイアミ大学の留学生とか、ボクの通う付属の英語学校の違うクラスにもチラホラ。十人ぐらいはいたんだ。

まぁ、どの国の連中もそうだけど、同じ人種で集まる。それが安心だし安全だからだ。ボクに声をかけてきたやつらも日本人同士でかたまり自分たちの「村」を作っていた。日本人が少ない分、あいつらの結束は固く、最初ボクに会った時も「貴重な仲間」として親切に迎え入れてくれたんだ。

ボクも最初は、同国のよしみってことで懐かしさと安心感があって話したり行動を共にしてたんだよ。でも、すぐに離れた。

あの時、あの場所で出会った連中は「人種が違う」と思うぐらいに考え方が合わない。南アメリカの連中といる方がよっぽど心が安らぐ。同じ日本人として恥ずかしい人間たちだ、恥を知れ、と思った。

choose -alone

というテキストと

Cap をかぶり自然を見つめるCool Guy の後ろ姿。

外国にいると特に愛国心が強くなるのだろうか。たとえば「日本文化を専攻しているドイツ人」から日本の偉人たちの話を聞かされ誇らしい気分になる。

「日本は武士の国。普段は穏やかで優しく礼節でありながら、いざとなると刀を抜く。守るべきものや名誉を守るために命をかけて戦う民族が日本人だろ?」

って言われて「買い被りすぎだよ」と照れると、

「いや。ボクの知っている日本の偉人たちはみんなそうだ」

と言う。「そうなの?」と思うぐらい詳しく日本のことをドイツ人留学生から教わった。日本人って、そんなに素晴らしかったんだ、という再発見。日本人が、日本の教育では決して習わない日本の偉大さ。大きさ。海外に来て知るなんて。

それに比べて、このマイアミの地で この時出会った日本人たちのなんというだらしなさよ。ドイツ人が話してくれた、日本の栄光に泥を塗る連中は同じ日本人として許せなかった。

侍が刀を抜く瞬間の、手元の画像。

知り合った頃、その日本人仲間とダウンタウンに飲みに行ったんだ。その帰り道、パトカーにサイレンを鳴らされ止められた。ドイツ人の友人が運転して、ボクが助手席。後ろのシートに日本人が3人乗ってた。

「あちゃー、結構酒飲んでるけど大丈夫かよ?」

ボクがそのドイツ人に聞くと平気、平気。ノープロブレム、って涼しい顔してる。あの頃の時代はそういう感じだった。アメリカで ある程度の飲酒運転はお咎めなし(もちろん逮捕されることだってある)

飲酒運転にはゆるいアメリカン ポリスだが、相変わらず取り調べは銃を突きつけられて厳しい。もっと重大な事件を起こしてるヤツや薬の売人も多いから。

例によって一人づつ、拳銃を突きつけられ外に引っ張り出された。ボクも壁に手をつこうとした時、

「フリーズ!」

警官が叫んだ。

Freeze!

拳銃を構える二人の警官。

見ると後ろの席の日本人の一人が、二人の警官に拳銃を突きつけられている。非常に緊迫した、今にも発泡されそうなやばい状態だ。撃たれそうなその日本人は、両手をTシャツの中に入れている。

普段からの癖だった。そいつはいつも両手をシャツの中に入れて「ハト胸」なんてジョークを言っていた。

ポリスはそれを拳銃かナイフなどの武器を隠し持っていると思ったようだ。毎年、何人ものポリスが命を落としている国だから警官も必死の形相で拳銃を持つ手がガクガク震えていた。今にも引き金を引きそうだ。

ところが、当の日本人はまったく事態の深刻さが飲み込めていない。頭の中がお花畑のそいつは、いたずらを見つけられた子供みたいにヘラヘラ笑って、手をシャツから引き抜こうとしている。

「ノー! ドント ムーブ!」

警官が叫ぶ。意味がわからずニタニタ笑いながら、なおも手を引き抜こうとするそいつから警官が後ずさりした。

「ストップ! おい、その手を動かすな。動いちゃいけない、ガンを持ってるって誤解されてるぞ。お前、動くな。引き金に手がかかってるから撃たれるぞ」

ボクが必死の日本語まじりの英語で言った。

「えっ?」

その日本人、ヘラヘラ笑った顔のままこわばっちゃって。みるみる血の気が引いて顔が白くなっちゃった。

二人の警官が、容疑者の乗る車の後部座席に2つの銃を突きつけている画像。

ほんとに危機一髪。撃たれる寸前だった。

そいつは、それから乱暴に蹴飛ばされて道路に寝かされ押し付けられ、うつ伏せの体の下に両手を入れた状態で体を踏みつけられた。そうっと一本づつ腕を抜くように言われ、足でシャツの中の拳銃が無いか探られている時にも、ずっとそいつの頭をポリスの拳銃が狙っていた。

ボク達には別の警官の銃口が狙いをつけているから一歩も動くことができない。

車の中も調べられて、何もないから無罪放免になったけど、そいつのせいで本当におおごとになった。そいつはポリスに無茶苦茶怒られて泣きそうな顔で、それでもヘラヘラ笑っていた。英語もわかんない。危機意識も無い。日本の「おぼっちゃん」

そいつ、もう何年もいるんだよ、アメリカに。マイアミの「日本人村」で、日本人とばかりつるんでいるから英語も何も全然身についてないんだ。

逮捕

一人の男を警官が押さえつけ、もう一人の警官は拳銃で犯人を狙っている画像。

マリファナ・モンスター

クラスメイトは、例のベネズエラから来たひょうきん者のアルフォンソ。コロンビアのボゴタ出身のベンは、もじゃもじゃ頭で大金持ち。それから、どっかの国の将軍の息子。

南アメリカには政情が不安な国もあり、その息子のおやじの将軍もクーデターで前政権をひっくり返して今は政府の中心に座っている。しかしまた、不穏な動きがあるらしい。部下の裏切りに遭わないかと、びくびくしていると言っていた。一歩間違えれば彼は帰る国を失う。世界にはいろんな人間がいるんだな。

小銃を持って立つ兵士。

テキストメッセージで

「coup regime」

と書いてある。

クラスはボク以外、全員南アメリカから来てる。巻き舌全開のセニョールとセニョリータ! 女の子は「メアリー」とか「マリア」って名前が多い。

マリア様のマリアだ。熱心なクリスチャンばかり。日本人みたいに小ちゃくて細い子もいれば、グラマラスで歩くたびにあちこちユサユサな子もいる。でも総じて若い女の子はみんな可愛い。残念なことに、おばさんになると太っちゃう国民性のようだ。年配の女性はみんな太っていたから。

女の子は小さい時からピアスをするようで、耳にあけた穴が大きく広がっている。ボクはそういうラテンの女の子とデートして、実践的な英会話を磨いていたからブロークン英語の上達はかなり早かった。

ラテン系美女と、

「彼女の耳にはpierced earrings」が付いていますよ、と解説するため、ピアスをした耳の部分の画像も拡大して美女の画像の隅に配置している、

しかし授業についていくのは大変だ。

教科書を開くと全部英語、あたりまえだけど、その英語を説明するのもまた英語だ。おじいさんの先生にはよく怒られた。

「こんなのは小学生の英語だぞ、これ以上簡単には説明できない。明日までにこのページを暗記しとくように」

って言われ、次の日に読んでつっかえたりすると「ピシッ」

指揮棒で手をぶたれる。「アイテッ」思わず日本語が飛び出すとチッ、チッ、チッ。口の前で人差し指を振り子のように動かして

「ノー、アウチ」

アウチって言うのが英語だよって訂正された。結構スパルタで老人特有の頑固さも持っている先生だったから、ムチで叩かれないように平日は朝から晩まで勉強していた。宿題も多くて「これじゃ、日本の学校と変わんないな」つまんねーなー、と思った。

Ouch!

指揮棒で生徒の腕を叩き指導する老教師。

それでも週末は、ストレスを吹き飛ばすようなパーティーがあった。アメリカ人はしょっちゅうパーティーをする。知らない人同士が集まって出会いの場になる。

「このラザニア、あたしが焼いたの」

なんて金髪美人がテーブルに熱々の鉄板プレートを運んでくる。香ばしくて食欲をそそる焦げて暴れているチーズ。

切り分けるとこぼれてくるトマトとひき肉、ホワイトソース。ひと口食べて、美味くないわけない!

ブラボー、

って拍手が湧き上がる。こういう喜びを全身で表すところがいいな、と思った。喜びは、意識して膨らませた方が幸福度が高い人生になるね。

こういう表現方法は、この時ボクの中に取り込まれた。

男女の出会いばかりじゃなく、いろんな人との出会いによって友人知人の人脈が広がるのはすごくいいと思う。

チャンスは人が連れてくる。アイデアやひらめきのタネは必ず誰かが持ってやってくるから、いい出会いが増えれば成功確率が上がるのは道理だろう。考え方やアイデアの交換こそ、ビジネスが生まれたり研究が発展したりするきっかけになる。

Let's-party

そういう外国人とのパーティーは楽しく、刺激があることも多かったけど「日本人村」の連中とのパーティーはすぐ嫌になった。

連中の目的は、はっきりしてる。マリファナ・パーティー。

「クスリが目的でマイアミに留学してきた」

って自己紹介するクズも一人や二人じゃなかった。「日本でやれば捕まるけど、こっちでやれば合法に近いからねー」と解説してたけど、そんなことはないだろ、だったらなんでキャンパス内で「薬物違反」でつかまるヤツがこんなにいるんだ? まぁ連中にまともなことを言っても通じない。すでに目が飛んじゃってラリパッパになってる。

初めてその光景を見たのも「日本人村」のパーティーだった。

テーブルの上に薄い紙を置いて、細い木の枝みたいなものをタバコみたいに包んでいく。細くねじった「こより」の太いやつ─── それがマリファナだった。

最初の一人が火をつけて吸う。「パチパチパチ」木の枝が燃える、はぜる音がする。深く吸い込んで煙を肺にためて、息を止める。「ウッ、ププッ、フゥーッ」やがてそいつは我慢できなくなって、その煙を細く長く吐き出す。そのやり方が一番効くみたいだね、音楽がクリアに聞こえたり、感性が鋭くなる、って言うよ。吸い終わったら隣の人に渡して、吸ったらまた次の人。

怪しげな雰囲気。
illegal party

みんなで丸く円陣を組んで吸いながら回していくのが作法らしい。同じ釜の飯、じゃなく。同じマリファナを吸った仲間になるわけだ。

ボクにも回ってきたけど、吸わずに隣へ回した。一瞬空気が「えっ」ってなるよ。和やかな空気が乱れる、みたいな。

でもボクは何度回ってきても吸わずに隣へ回す。どんなパーティーに行ってもね。ある日、たまりかねた「日本人村」の村人が聞いてきた。

「吸わないの?」

「ああ、吸わないよ」

とボクが答えると場がしらけた。それまでずっと我慢していた日本人村の村人たちから不満の声があがった。

「なんで、なんでいつも吸わないんだよ」

「べつに。興味がないから」

それはボクの本心だったけど、連中はボクが喧嘩を売って「村」の空気を乱そうとしていると受け取った。

「あのさ、そういうの良くないと思うよ。みんなで楽しんでるパーティーでさ。なんで雰囲気悪くするの?」

「悪くしたか? オレはただ、葉っぱを吸わなかっただけだろう?」

年長の、村のリーダーとボクとの言い合いになった。村人は全員、村長の援護射撃にまわった。

大人数でプレッシャーをかけている画像。

Peer pressure

マリファナは日本じゃ吸っちゃいけないことになってるからさ、と言っても

「ここはアメリカだ、日本じゃない、ルールが違う」

と言うし、じゃ、日本帰ったら親にも周りにもマリファナ吸ったこと言えるのか、と問えば

「そんなこと黙っていれば問題ない」

と言うし、

「日本で禁止されてても海外へ出ちゃえば違法じゃなくなる」

とか言うから、いや。確かその理論は通じなかったような気がするよ、日本に帰って警察で

「アメリカでマリファナ吸って帰ってきました」

って言ったらたぶん無事では済まない気がする。と言っても

「そんなことはない、お咎めなしだ」

と言うしね。話が平行線でまったく噛み合わない。場の空気では完全にボクが悪者だよ。

ボクシンググローブをつけ敵対する2つの腕。

テキストメッセージで

「議論不毛」

「平行線」

と書かれている。

「協調性がない」

だとか、

「日本人なのに和を乱すのは美しくない」

とまで言いやがった。

こういうの、よく新聞に載るよね。組織的隠蔽がありました。悪いとは分かっていても会社を守るために。みたいな。同調圧力がかかれば悪い事でも平気で出来ちゃう。

ボクは子供の頃、赤痢で強制入院させられて孤独になるのは慣れてるから、自分の信念に従う。

煙たがられて、しばしば1人になるけど、自分を裏切るより1人になる方がましだ。

Cross Road に立つ一人の男の前にテキストメッセージ。

「どっちへ行くか」

「決めるのが人生」

ドイツ人がボクに教えてくれた「サムライ日本人」は、ここにはいないようだ。戦後の教育がこういう日本人を作ったのか、個体差なのかはわからない。たまたま、そういう日本人ばかりがここに集まっているのか。

男だけじゃない。女も。

チンピラだけじゃない。真面目そうなツラしたやつも。ここでの本性はみんな同じ。バレなきゃなんでもやる。有名な日本の大学行ってるヤツも。一流企業に勤めてるサラリーマンも。人を指導する立場にいるヤツも。日本での仮面を外せばだらしない乱交野郎たち。

こいつら全員、マリファナ・モンスターだ。

「オレがマリファナを吸わないのは協調性がない、和を乱すって言うんだね? よしわかった。じゃあもうこんなパーティーには来ないから安心してくれ」

そう言ってボクは、二度と日本人村には近づかなくなった。

山の山頂に立つ男。

横にテキストメッセージ。

「Alone-is the best」

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関連コラム:マリファナについて(読みたくない人はスキップしてね)

みんながやっていても、やらない勇気はあるか?

ボクはさ、マリファナなんかに本当に興味がないんだ。真面目ぶってるわけじゃない。ただ、やりたくないだけ。海外に行って、そういうことに興味があっていろいろ実体験したいヤツはすればいいじゃない。ボクは止めないよ、自己責任でやるなら。

最近、マリファナはタバコより害が無いとか、医療に効果的だから認めるべきだっていう意見があるのも知ってる。それはそれで、学術的に証明されるんなら治療に使ったりタバコと一緒に売り出せばいいじゃない。ボクは反対じゃない。ただ、何度も言うように ボクには興味がないだけの話だ。

実際アメリカでいろんなパーティーに出たけどさ。高確率でマリファナは出てくる。デザートみたいな扱いだ。教師だってポリスだって、パーティーに来たら吸ってたもんね、それが文化みたいに定着してる。アメリカの州には禁止してるところとほぼほぼ解禁してる州があるようだし。禁止してても黙認されてるグレーゾーンな感覚だと思うよ、アメリカ人にとってのマリファナは。

もっとヤバいドラッグもあるし、それに比べりゃ可愛いものだとも思う。

でも、ボクは嫌だ。合わない。ボクひとりだけシラフだからさ、ラリパッパしてる顔を冷静に見ちゃうんだ。突然笑い出したり、口元がだらしなくゆるんでたり。まぁ、そういう問題以前に匂いも嫌だな。昔子供のころ、悪いことをやってお灸すえられた時のような匂いだ。

まぁそんなものは表向きの理由だけど・・・

party

ボクがかたくなに拒絶する理由の一番根底にあるのは

「ボクはそんなことをやるために苦労してアメリカに来たわけじゃないんだ」

っていう思い。自分を素敵に変えようとしてるのに、マリファナを受け入れたらすべてが台無しになると思った。正々堂々と、自分で誇れる自分になりたいんだ。ボクはリセットしてここにいる。

日本人村のやつら。あの時あの場所にいた連中。男も女も全員がマリファナを吸ってたよ。女の子なんかはマリファナをパンに練りこんで焼き上げてきた。外人のテニスコーチのダーリンと、朝食にはマリファナパン。

オシャレでしょ、って。

その子は帰国する時、ちょっとだけでも荷物に忍ばせて日本に持っていく、と言ってた。バレても少量のマリファナならお咎めなしだろうから、って。完全に感覚が壊れてる。麻痺してると思ったよ、

見つかったら少量でも即、逮捕でしょ。それが日本の法律だ。

みんながやるなら、悪いことでも自分もやります。「和を乱さないために」そういう感覚、ずるいと思う。日本の企業犯罪なんか、このパターンが多いでしょ? 「会社のためにやりました」と言ってエリートがつかまる。いい悪いの判断の前に、仲間外れにされたくない。同調圧力に従う。

ひとりぼっちになりたくないから流されちゃう。

日本人村の連中、日本ではいい大学行ってるヤツも何人もいた。生き方がうまいというか、日本に戻ったら何事もなかったように過ごすんだろ。外人とバリバリ遊んでた女の子も、「そろそろ日本に帰ってお見合いでもして結婚するわ」と言ってた。「旅の恥はかきすて」昔の武士が聞いたら泣くわ。

ひとりぼっちが、そんなに怖いのか? 自分の納得できないことを受け入れるぐらいならボクは喜んで孤独を選ぶ。

すべてを捨てて、ここに来たんだから。

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