命のやり取りになることもありますよ。
って話が今回の物語。
大袈裟な話なし! 話の盛りもなし!
ただ事実を、ありのままに公開する。くどくど解説するよりも物語へ GO!
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィール を見てね
SONG-16 ボヘミアン・ラプソディー
────車から飛び降りたこと、ありますか? ボクはあります────
ダイブ、した。刑事ドラマみたいに。死ぬかと思った、ヤバかった。
ボクはついに、アパート代を払えなくなった。先月で英語学校の授業も更新手続きをしなかったので、自動的に学生ビザは無くなり今後は観光ビザとなる。もうアメリカに長居はできない身だ。それでもバンドメンバーを探したい。
仕方がないから、ディックというドイツ系アメリカ人の家に、しばらく居候させてもらうことにしたんだ。ディックとは、バークレーに移住してすぐに仲良くなった日系アメリカ人のパーティーで知り合い、友達になった。
お互いにバカだったので常識はずれなところが気に入り、かなり仲良くなっていたのだ。でも、コイツはかなり危ない男だった。
金ぴかの護身用の銃を見せてくれたことがあって、
「これでズドン!撃ったら気持ちいいだろうな」
なんてぬかしやがる。笑えない冗談言うな、と返すと、
「たとえば夜、うちの庭に人が入り込んだら、俺は何も言わず発砲するぜ。バーーン! 一発で仕留めてやる」
「クレージーだな。道に迷って、ここがどこらへんか尋ねにきた人かもしれないのに」
「夜、人んちに道を尋ねにくる自体怪しいやつだ。まぁ、表の玄関から来るならそれも許そう。でも裏庭はダメだ。裏から来れば即、射殺」
そんなディックと飲みに行った。
ディックは酒グセが悪い、というよりも「酒が尾をひく」タイプだった。そんなこと知らないボクは、あいつとサシで昼間っからピザ屋で飲んだ。巨大なピザとフレンチフライをつまみに競うように飲んだんだ。
クアーズの空のボトルが机の上にたまってくると、ウイスキー。その後はウォッカになった。ボクも同じペースで飲んでたんだけど、だんだん飲み疲れてきて。ディックの方は相変わらず水みたいにクイッ、とウォッカをあおってる。でも話がくどくなってきた。
いい加減、その話聞き飽きた、って話題をぐるぐる。突然大声を出して店のひんしゅくをかったり。
「おまえは俺の親友だぜ」
と言ってテーブル越しにボクを抱きしめるから、テーブルの上のビンが落ち、派手な音を立てた。
「おい。そろそろ帰ろうぜ」
いいかげんイヤになってたボクが切り出すと「じゃ、あと2杯飲んだら」と意外に素直な返事。
ところが2杯飲み終わって「じゃ、行こうか」と言うと「もう1杯」となり、それを飲み終えると「今日の日に乾杯」「俺とおまえの友情に乾杯」それが空になると「じゃ、ラストにもう1ッ杯!」
目がすわってるし、酔っ払いの言うことだから「しょうがないな」と付き合っていた。やっと腰を上げて店を出たのは、もうテーブルの上に酒瓶が乗らなくなってから。
このあとディックは酔っ払い運転するが、以前の「日本人村」の話でもわかるように、当時のアメリカはそこらへんの意識も低い人が多く、警察に捕まってもさほどおおごとにならなかったのだ。そこらへんの是非は今回のテーマと違うので先に話を進めよう。
ピックアップトラック
今でいうRV車のようなディックのトラックに乗り込むと、車は別のバーの前に着いた。
「この店のシェリー酒はうまい。日本に帰ってからの思い出になる。飲んでこうぜ」
不覚にも、ボクの堪忍袋はここで切れた。
「ヘイ! ユーアー ライアー。帰るって言ったじゃないか」
気色ばんだボクの頬を、ポンポンとなだめるように叩き、
「大丈夫、1杯だけだよ。1杯飲んだら帰る」
と、ディックはさっさと車を降り、店に入って行った。
「ちくしょう!」
吐き捨てるように怒りを口にし、ボクも店の中へ入った。案の定、1杯で終わるという約束が簡単に破られ、またしても2杯目を注文しやがったのだ。
「コイツ。なめてやがる」と血気盛んだったボクは、「タン」と音を立てて飲み干したグラスをテーブルに置き、無言で席を立ち外に出た。
あわてて追ってくるディック。
「ヘイ」
「・・・・」
「ヘイ、ウェイト」
ボクの肩に手をかけてきたディックの腕を強めに振りほどきボクは足早に歩いた。すると走りこみ、ボクの前へ回り込んだディック。目が怒っている。
「送っていくよ。車に乗れ」
「ノーサンキュー」
「いいから乗れよ」
ボクたちは車に乗り込んだ。
「・・・」
無言の車内。
「・・・!?」
道が違う。
「ヘイ、ディック。道が違うぜ。オレはもう酒なんか飲みたくない。」
ディックはボクの話を無視するように無言で運転を続けている。
「さっき送る、って言ったろう?オレはもう酔いすぎて眠いんだよ。送ってくれ」
フン、と笑うディック。
「アスク? or オーダー?」
お願いか、命令か? と聞いている。
その時、ボクは「アスク」と「オーダー」の違いをあまり理解していなかった。「オーダー」という言葉の強さ。争いの最後の引き金をひく「命令」という言葉のこわさ。全然理解していなかった。だからボクは怒りにまかせて
「アスク。アンド オーダー!」
と叫んだんだ。
ディックは青い目でじっとボクを見て「ユー シー?」「ユ・シー?」ほらね、と何度も確認した。
そしていきなりボクの背もたれの後ろに手を入れると「バッ!」と素早く引き抜いた。
手には長いナイフが握られている。
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