自分を映す鏡
何かを始める時。誰でも最初はうまくいかない。なぜだと思う?
自分が「その程度のレベル」だからだよ。出会う人は「自分の今のレベルを映す鏡」なんだ。自分のレベルが低いから、いい人とも出会えないし つまずいたり転んだりして怪我もする。
でもね、それは誰もが通る道。この世の中、0を1にする作業が一番大変なんだ。
会社を創業する。グループを立ち上げる。今までやってきたことではない「新しい分野に挑戦する」
そういう時、問題が押し寄せる。絶望する。1つのことを解決すると、また別の障害が発生する。まるで世界中が敵になって、自分をいじめてるんじゃないかと孤独になる。
でも、それは 0を1にしようとしているから摩擦力が強いんだ。動き始めが一番エネルギーを使う。
ここを逃げちゃいけない。逃げると、次に「違うこと」に挑戦しても、また同じようなところでつまずく。何をやっても1つづつ障害を壊して先に進むしかないんだ。最初から良い出会いなんてない。「成長すれば出会える」と信じて進もう。
ただ・・「間違った方向」に進んじゃいけない。
「間違った方向」の、間違った努力は、苦労して疲れるだけ。何度も言っているけれど、自分が努力しなくてもある程度できる、人からも評価される、そんな自分の得意分野で頑張って欲しい。
「あまり頑張らなくてもそれなりにできること」が自分の得意分野だ。
頑張らなくてもできることを頑張って、さらに高みにのぼることが「努力」だ。
家の壁を毎日30分押し続けて「疲れた。頑張った」と思っているのが勘違いな「苦労」
そんなことをしても何にもならない。どこへも辿りつかない。
そういう苦労ばかりを背負い込んで、何にも実を結ばないことをやっちゃいけないよ。
苦労と努力は違う!断じて違う!!
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-21 類は友を呼ぶ
音楽雑誌で メンバー募集
音楽雑誌にメンバー募集を載せることにした。
でも、掲載されるまでには何ヶ月か、かかるらしい。こっちは気ばかりはやっていて、焦っているから・・まず雑誌に載ってる「メンバー募集」の記事に応募してみた。
方向性が合いそうなヤツに連絡して方々会いに行った。
成果なし。
駅で待ち合わせれば、すっぽかされ。
山ひとつ越えて会いに行ってもやりたい音楽がまるで違う。偉そうな能書きをレクチャーしてくる相手の話に頷くフリをしながらコーヒーをすすった。
手帳に、「今日もいいヤツに出会えなかった」と❌を書く。
もう、雑誌で応募してくるヤツを待つしかない。
不思議なんだけど、自分で応募するより募集かけた方がいいメンバーに会える、と信じこんでいた。そんなわきゃあないけど、素人だから。雑誌に載せさえすれば勝ち。メンバーはすぐ見つかると楽しみにしてたんだよね。
首を長~くして待っていたら半年ぐらいしてやっと、「プレイヤー」と「ロッキンF」という雑誌に載った。いっぱい募集告知が載っている中に小ちゃくボクの「メンバー募集」の投稿記事があった。
「こんな目立たなくて電話かかってくるのかな?」
と不安だったけど、ポツポツ電話がかかり出した。
最初にかけて来たのは「おっちゃん」
若いくせに、相当オジサンくさいから、ボクがつけたあだ名だ。同い年の21歳、男。
そいつが作曲した曲を聴かされた。「ジャラ~ン」とアコースティックギターを弾いて、「アウー」
「・・・・」
にわとりをしめ殺したみたいな声。ガックリ。
音楽での成功を夢見て上京していると言っていた。後日、渋谷を歩いていたら、そいつが公園通りでティッシュ配りをしているのに出くわした。
「よ、頑張ってるね」
と声をかけて別れたが、複雑な気分になった。努力してもリターンが得られると思えないからだ。
彼は冷静に見て、音楽センスのかけらもない。そんなことを断言する資格はボクにない。でも、多くの人から見て「美人だな」という人はいる。そうじゃない人もいる。
美人が努力すれば更なる美しさも手に入る。一方、美しくない人が美の世界で努力しても普通になるぐらいだろう。モデルになるよりも、美容で人を美しくする側に回った方が幸せになれる。化粧の仕方や振る舞い、表現方法でなんとかなるとしても・・
わざわざ苦労する場所で頑張らなくてもいいんじゃないか?
もしかすると料理の世界なら一流になれるセンスを持っているかも知れないのに。
前々から言っているように、「自分の得意分野で戦え」ということだ。好きなことは、得意分野の中で見つける。スポーツが好きでも、運動神経が悪ければ選手の道は諦める。もちろん趣味でやるならいいよ。でもプロとして、職業としての選手を目指しちゃダメだ。かなわない夢は苦労と悲しみと不幸しかもたらさないからだ。
だったら「好きなスポーツの世界で、自分の得意を発揮できる分野を探す」デザインが得意なら選手のユニフォームをデザインしてみたり。いつもそのスポーツのことばかり考えているなら専門誌に記者として就職してみたり、自分で発刊する道を探したり。得意なことがあって、好きなことは「得意なことの下にある」優先すべきは得意なこと。
自分のセンス、立ち位置、人脈、個性、得意をちゃんと見極めて夢を見ないと夢がかなわない悲しさを味わうことになる。せっかくの人生を浪費しちゃいけない。
「おっちゃん」に必要なのは「自分には音楽センスがない」という事実に気づき、じゃあ何の分野なら活躍出来るかを真剣に考えて未来の地図を描くことだ。
動かない壁を必死で押すことは努力とは言わない。
単なる苦労だ。
おっちゃんは、東京に出てきてティッシュ配りをして。そういう苦労をして、努力だと思っている。
それから来る日も来る日も、いろんな人に会った。男にも女にも、学生にも社会人にも。中学生にも、中年にも・・・ メンバー募集というけど、本当に性格悪いヤツが多い。音楽やってる人間。個性も強烈だし、変なヤツに会いに行くと、もうそれだけでエネルギー吸いとられてぐったりと、なってしまう。
すごく偉そうに腕を組んで、ひとしきり講釈をたれた後、音楽スタジオに入ってそいつがギターを弾くと、ひどい。
音が合ってない。当時の「音楽素人」のボクが聴いてもチューニングが狂ってるのがわかるほど滅茶苦茶。その「変な音」を爆音で誤魔化す。
「これがロックだぜ」
なんて言われても、苦笑いして
「やりたい音楽が違うね」
と、やんわり断ってスタコラ逃げるしかない。
新宿西口の裏通りの怪しいビルに住む「自称パンクロッカー」の家に行った時には弟子がいた。そのパンクロッカーの言うことにいちいち頷く。「カッコいいー」とか合いの手を入れてくるので話に集中できない。心底信奉してる熱烈なファンという感じだ。
パンクロッカー本人はガリガリに痩せていて真っ白な顔に青い毛細血管が命のモールス信号を送っているようにピクピク動いていた。
「生き様なのよ、ロックは。体制側をビートで破壊して・・」
くぼんだ目の奥からボクを睨んで、
「踊り出したくなるロックンロールバンドがやりたいなんて、青いのよオタクは」
と言うのを隣の弟子が「そう、青いの。オタク」と真似て続ける。
「コイツ、絶対クスリやってんな。ジャンキーだ」と思いながら帰るタイミングを測っていた。
鼻持ちならないイヤな人種がつづくと、もう誰にも逢いに行きたくなくなりますよ。五年も十年も、メンバーが見つからずに雑誌に「メンバー募集」を載せ続けている人間は、意外と多いんだ。
そうやって 時間ばかりが無駄に過ぎていく。
なかなかメンバーが決まらない理由は、ボクにもある。ボクはアメリカで見た「動き回って、人目を引いて楽しませる」エンターテイメントに優れたバンドがやりたい。
「エンターテイメント ロックやる。メンバー募集。弾きながら動けるプレイヤー、連絡乞う」
こんな風に書いても理解されなかった。そういうバンドはアメリカでは珍しくないけれど、当時、日本はフュージョンが大流行で、高中正義などが主流。みんな細かいテクニックを追及することに夢中になっていた。
「何で動くんだよ。音楽は動かないで、その場でスリリングにサウンドを生み出していくものなんだ。音なんだよ。動いてちゃ、ちゃんと弾けないだろ」
出逢うミュージシャンからは、そう言われ続けた。
「いや、違うよ。いつか”動く”バンドの時代が来るよ。先にやったもん勝ちだよ。イメージはあるんだ。やろうよ」
いくらそう言っても、同意する人はいない。今、弾きながら動くなんて当たり前のことだ。ボクの思った通り、動くバンドは主流になった。
ボクの言い方も悪かったよね。
「キッスみたいなバンドやろうよ」と言えば、もっと簡単にメンバー探しは出来たと思う。何年も経ってから、デイヴ・リー・ロスバンドを見た時、「あっ、これだよ、これ。ボクのやりたいの」と思ったけど、当時はそういう知識もなかった。
そして、知識がないってことは、どんどん遠回りすることになる。
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