すべての整備が整った綺麗な場所にチャンスはない
なのに、人はそういう快適な場所を好む。
就職するのも大企業、一流企業。外資系・・・
そこで実力を発揮し、飛び抜けるのは莫大なエネルギーを必要とする。なかなかチャンスは回ってこない。それなら、まだ完全には整備が整っていないところで実力を発揮したらどうか? そういう所ならば、ちょっとやれば飛び抜けられる。
良いものも悪いものも混在する「カオス」なところに人もチャンスも集まるのだ。
ただし、「混沌とした溜まり場」は、きちんと管理していないと「悪いエネルギーが暴走する」
ニュースで、悪いヤツらの溜まり場で殺人事件があったり爆弾作ってたりするでしょ。
そうならないように、悪いエネルギーは育たないようにして、前向きな仲間を探す場所を作るんだ。
というのが今回のテーマ。
今まで「どうやっても集まらなかった仲間がゾクゾク集まってくる」
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィール を見てね

SONG-28 難民キャンプ
旅行から帰ってすぐ、ザキが自分のバンドメンバーを連れて ボクのアパートにやって来た。
西新井のくずれそうなオンボロ アパート。
部屋に上げると、
「アレッ? 先輩 コレ、この畳 沈んでいっちゃいますよ」
ザキが驚いた。
「そうなんだ。そっと、そっと歩いてな。じゃないと床が抜けるかもしれないから」
そう言ったら 皆焦っちゃって。おっかなびっくり、恐る恐る。

「すごいとこ、住んでますねぇ」
「うん。金が無いから。でも敷金 礼金ナシ。そのうちビルかなんか建てるんだって。それまで居ていいって・・・」
「へー。敷金 礼金無しですか・・・それにしても」
ザキは何か言いかけて 飲みこんだ。
「お茶 無いけど」
「あッ、いいっス。自分で缶ジュース買ってきましたから」
メンバーがポケットからジュースを取り出して、「カチッ」っと開けて ゴクゴク。飲んだ。
「プフゥーッ。先輩、うちのメンバーです」
“どうですか” と言わんばかりに胸をそらせ、ザキが言った。全員を見廻すと。
横分け、横分け。ぼっちゃん刈り、横分け・・・うーん。
アイビールックの いかにも「おぼっちゃん学生」って奴らが座っていた。

でも。
「いいなぁ。ウラヤましい」
心底 そう思ったんだ。1年以上もメンバー探しをして、今だにバンドが組めない自分と比べたら。
全部のパートが揃っているのは、すごく贅沢なことに思えた。
「みんなバンドやって、長いの?」
「ええ。高校からですから、もう3・4年になりますか」
「へー・・やっぱり文化祭かなんかで結成したわけ?」
オレは、一生懸命 会話を続けようと努力した。
もともと無口な人見知りなのに。
世間話を交え、押したり 引いたり。 涙ぐましいぜ、まったく。

「ミュージカルですか? 生バンドのねぇ・・・ウーン・・・」
それとなく こちらのやりたい事を話して誘ってみるんだけど、 乗ってこない。
結局、バンドはオレとはやらない、ということで、ザキだけが参加することになったんだ。
「あーあ、やっぱり 駄目か・・・」
ちょっと失望した。
でも、それ以上に結構ウレシかった。今まで ずっと1人だったでしょう? それが2人になって。これは大きなことだ。心強い。
メンバー探しだって 2人でやれば効率もいいだろ?
実際この頃から、少しづつメンバーが増えていったよ。
だってホラ、1人より「仲間」がいる奴の方が本当に活動してるように見えるじゃない?
0から1になるまでが本当に大変。
でも1になっちゃえば、あとはどんどん増えていく。1じゃなく、2以上のかたまり。
そういう所に人は集まってくるんだよ。人が人を呼ぶっていうか。

夏が終わり、ローラースケート場がはじまって。そこで働きながら、めぼしい奴が来たらメンバーに引き入れようという話をした。
ザキも授業の無い時にアルバイトに来て。
「先輩、アイツいいんじゃないスか? 背も高いしルックスもいい」
「いや、ちょっと ひ弱そうだなぁ」
なんて。
メンバー探すのも、相棒がいるから楽しくなってきた。実に様々な奴らがやってくる。 社交場だから。
メンバー探しという目的があるから、ローラースケート場に来る 色んな奴らの相談にも乗ってやったりして。
「オレ、仕事が無くて」
と言う奴には、仕事探してやったり。家賃が払えなくて追い出された奴は、しばらくボクのアパートに住ませてやったりとか。いろいろ。
そんな訳で、ボクの部屋には 色んな奴が訪ねてきて、そのうち自由に出入りするようになっていた。もうメンバー探しの拠点というよりは、難民キャンプみたいだね。

冷蔵庫の中の物も、勝手に飲み食いしていいってルール。その代わり、気がついた奴が補充しとくこと、ってね。
あまり補充する奴はいなかったから、もっぱらオレが買っていれといてやった。
あっ、そうだ。1度 凄い差し入れがあった。
朝起きると、コタツの周りで ガヤガヤ同居人たちがパンを食っている。
「あっ、おはようございます。カズさんも食べますか?」
「アレッ? ナニナニ・・・サンキュ」
渡されたクリームパンをかじって、見ると机の上いっぱいにパンが散乱している。

「すげえな。こんなに買ってきたの? 誰の差し入れ?」
「ヤスオたちですよ。な?」
ヤスオと呼ばれた少年が照れ臭そうに頭をかいた。
「いや。いつも世話になってるから、たまには恩返ししようと思って・・・」
こいつらは地元の暴走族なんだ。家に帰っても面白くないからと、しょっ中ボクの家に来てた。ボクんちに来れば、話の合う奴がいっぱいいたからね。
「足りなかったら、食パンが まだいっぱいありますから、食ってください」
指差された方を見て、「ぎょっ」とした。
パンメーカーの名前が書いてある、四角いプラスチックの箱が2箱、部屋の隅に転がってるんだ。

「こ・・・これ、どうしたんだよ?」
オレがたずねると。
「道に落ちてた・・・な?」
と、ヤスオは別の暴走族仲間に同意を求めた。
「道って、どこのだよ?」
家を出て右に曲がって、突き当りを・・頭の中で地図を思いうかべてみる・・!!
「馬鹿、スーパーの前の道じゃねぇか。そういうのは、落ちてるんじゃなくて、置いてあるんだよ。返して来い」
そんな奴ばっかり。ふう。
見つからなかったからいいようなものの、共犯にされるとこだよ。
ボク、半分かじってたんだもの。

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