SONG-29【ヘタでも怖くても、スタートを切れ】はじめてのステージ

SONG-29main-visual-first-stage タイトル 「SONG-29 はじめてのステージ」
本番でしか身につかない

どんなに準備をしても、完璧ということは、ない。

どんな世界でもーー

本番でしか身につかないモノがあるんだ。何回リハーサルを重ねても、本番を経験しないと得られない感覚。

本番は、怖いよ。

当日が近づくと逃げ出したくなる。

でも、経験すると財産になる。本番の経験だけは、教えられない。やったモンにしか、わからない。何回経験しても緊張する。

でも、この緊張が成長させてくれるんだ。練習では身につかない「キャリア」を得られる。

「キャリア」とは、緊張とストレスを乗り越えて「本番で掴んだ経験値」のことだ。そういう本番を何度も乗り越えた人ほどキャリアがある。

本で読んだり聞きかじった知識を振り回し「自分は頭がいい。キャリアがある」と思い込んでいるのは勘違い野郎だ。

キャリアがあるかどうかは、その人の発する「言葉」でわかる。本番の緊張をあまり知らない人の言葉は軽いのだ。

緊張は、いいことだ。そのうち緊張を楽しめるようになってくる。一流の人は、みんな緊張を楽しむ。

enjoy the tension

どうやったら緊張を楽しめるか?

それは、本番までにどれだけ準備をしてきたか。トレーニングを重ねてきたか、だよ。

これだけやったから、後は楽しもう、そう思えた時、緊張が楽しみに変わる。

準備をちゃんとやれば楽しめる。

そして本番でいい結果を出せるんだ。


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィール を見てね

目次

SONG-29 はじめてのステージ

やっとメンバーが集まった。

アパートで結成式をしたんだ。ほか弁屋のカラアゲとビールで乾杯!

ボクとザキの他に、ローラースケート場の常連で、皆から「ウソつきコースケ」って呼ばれてた、水道屋のコースケ。 アフロで細身で、正露丸の匂いを漂わせてる。

いつも「使いっぱ」(使いっ走り)にされてる奴で、調子が悪くなると逃げる。 ふざけた奴だけど、どことなくコミカルなんだ。

ファンキーな「卑怯者」といった所かな。

Funky-man

アフロの陽気な男の画像。

それから、同じ「東京マリン」のバイトの後輩の増田。地味な奴だったけど、ハードロックが好きで真面目だし、人数足りないから仲間にした。

情報誌の「ぴあ」で応募してきた奴もいる。肉だんごみたいな女子高生。それと その友達。

あともう1人、ローラースケート場でスカウト? したメインの女の子。可愛かったけど、めっちゃくちゃ遊び人で、すぐ男とゴチャゴチャしてやめていった。

ど素人が7人集まって。とにもかくにもスタートしたんだ。

Strange-fellow

公民館を借りて、練習の1時間前に集まって ボクのアパートで、まずリーゼントのセットの仕方を教えたんだよ。雰囲気作り。フフ・・「グリース」も「スリム」も 皆リーゼントだったからね。憧れてるボクとしては、ここは どうしても そういうファッションに こだわりたい。

今のボクとは随分かけ離れた美意識だけど、あの頃は それがベストだと思っていたね。

Regent-style
Regent-style

ザキにもポマードをぬってやって。でもアイツ、ビッタ分けみたいになっちゃって皆で大笑いした。

A man with a strange hairstyle

脚本も演出も全部ボクの担当だ。

「ひまわり」で教えて貰ったこととか、「スリムの練習って、こんな風にやってるんじゃないか?」って想像しながら工夫した。

リー・ストラスバーグって人が主催する「アクターズスタジオ」の演技方法なんかの本を読んでね。

本当は分からないことばかりで心細い。だけど、ボクがそんな顔したら、すぐにでも吹き飛びそうなグループだ。あやうさは肌でビンビン感じていたからね。

弱音をこらえて、逆にガツンと演説をかました。

「いいか。オレは経験者だ。お前らシロウトとは違う。演技や、ステージの勉強だって ちゃんとしたんだからな」

ひまわりで。とは言わない。

「とにかく、オレを信じて ついてこいよ。そうすれば半年後、お前らはスターだ!」

Emperor の銅像の写真。

絶対的存在のイメージ。

「大きく出たね」と、自分で自分に つぶやいてみる。

でも、誰も疑わなかった。

「スゲー!そんな スゴい人と俺たちやるんだな」

ぐらいの暗示にかかっちゃって 目をキラキラ輝かせている。

Excited man blowing smoke out of his ears

演出をしようと思ったら、ハッタリも大事だよ。カリスマにならなけりゃ誰も言うことを聞かない。ボクは絶対的な存在になった。

体をほぐし、スポーツ選手のような肉体練習と発声で汗をながした後、いよいよ練習がはじまった。

ところが・・

セリフとかしゃべらせても、皆全然ダメ。カチンコチンになっちゃって、すげえ臭い芝居をはじめちゃったり。右手と右足が同時に出て歩いたり、とかね。

しょうがないから 50メートル ダッシュ!

ダーッて走らせて、「ハァ ハァ」息がまだ上がってる時に大声でセリフを言わせて、

「どう? セリフを言うことだけに集中すれば、こんなにナチュラルだろ? もう芝居なんてしなくていいから。とにかく大声を出して行こうぜ」って。

以来、体育会系の練習が定着したんだ。

Run-Run-Run.!
Run! Run! Run!

「アレ? お前そのセリフ、作ってない? よーし、100メートル ダッシュ!」

みたいな。

相手にセリフを言うときも、ダーッと走ってきて 体にぶつかりそうな所で止まって大声で言う。

「ウワーッ」とか「ギャーッ」って叫ぶだけの 芝居ごっこ。

でも発声も出来ない、恥ずかしがってセリフも言えない連中には、効果があったんだ。みんな 大声を出すことに抵抗がなくなったし、体を大きく使う演技をするようになったもの。

やってみたら「演出」っていうのは ボクに合ってた。

自分自身、 あんまり先生に恵まれてなかったから「オレだったら人のこういう所見てやるのに」とか。

「こういう いいとこあるのに、なぜ気付いてくれないんだ?」という不満があったからね。

頭の先まで詰まってた、満たされない思い。

だから人と逢うと、「あっ、この人は こういう面もあるんだ。へー個性的」とか、自然自然とね。人を観察するクセがついてた。

それに子供の頃から、心理学の専門書なんかを読みあさっていたから。その人の持ち味を引き出す

director

演出っていうのは 得意だったかもね。

ザキは吸収するのが早かったし、肉だんごみたいな女子高生も芝居をしている時は、かわいく見えるようになってきた。

コースケは追いつめれば追いつめるほど、コミカルさが際立ってきたし。なんとなく、みんなサマになってきたんだな。

「よし、ここらで 客を入れた ”公開練習”でもしてみるか?」

Stage

みんなの友達を呼んで。公民館のちょっとしたステージのある部屋を借りて、軽いドラマを見せたんだ。ザキが主役で、ボクは悪役。

例によって「ワーッ」と出てきて。漫才のような 小芝居のような。

はじめての経験。

SHOW

ボクも皆がちゃんと出来るか気にしながらステージに居たら、セリフ忘れちゃったり。

でも、それをコースケがうまく笑いに転嫁したりね。

チームワーク バッチリ。

まぁ、そうは言っても、客席はとまどってるって感じだったな。

自分の知り合いの、つたない演技を ハラハラしながら見てるっていう。

ボクらとしちゃあ、一生懸命やる以外に何のテクもないからさ。汗をかきながら動き回ってセリフを言ってたの。

そしたらね。ギーッ、とドアが開いて

「あのさ。お宅たち、ちょっとウルさいから もう少し静かにして」

管理人のオヤジが扉の隙間から 顔をのぞかせて、苦情言いに来たんだ。芝居の最中だよ。客席の連中も皆、振り向いた。

振り向いて、ボクらの方をまた見て。「どうすんだろ」って顔してる。

administrator

ボクが、

「あっ、わかりましたー」

って、芝居の流れのセリフみたいにして その場は切り抜けたんだ。

でも5分ぐらいして、再び。

「あのさ。静かにしてって言ったでしょう? ボリューム下げられないの?」

って管理人のオヤジ。

今度はドアを開けて、トコトコ こっちに向かって歩いてくる。

「うわっ、やめてくれ」って感じ。ワカル?

こっちへ来ないでくれって。

「お願いだから あっち行って」って逃げ出したい気分。

ところが そのオヤジ。ホウキを持って、ステージの上に上がって来たの。

Silhouette image of a noisy manager

スゴい奴だと思いません?

いくら照明も何もついてないステージの上でも、一応芝居の最中だぜ? 全然気にしてないの。

「オタクら、これね これ。この使用申込書に書いてあるでしょ?騒音は駄目だって」

紙キレをピラピラさせて。完全に芝居が止まっちゃった。コースケが何とかこの場取り繕おうとして、管理人のホウキにまたがって、 「魔女」とかって、おどけてみせたらよけい怒られた。

はじめてのステージ。

そう、これがボクのはじめてのステージだったんだ。

A witch riding a broomstick and flying through the sky

シルエット画像。
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