バイアスがかかった毎日
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ボクらは常に、偏見や先入観でモノを見ている。
そうじゃない、と言う人もいるけれど「自分が感じることが常識」で自分の価値観が中心である以上、その人が掛けている「色眼鏡」で世間や人を見てしまうのも仕方がない。
「認知バイアス」 7つの思い込み
もし、あなたがそういう「色眼鏡」で見るのは嫌だ、と思うなら。自分がどういう偏見、思い込みに陥りやすいかを知っておく必要がある。
人間の偏見、非合理的な判断をしてしまう心理現象のこと を「認知バイアス」という。
「認知バイアス」には、以下のようなものがある。あなたにも思い当たるフシはないか? これらのバイアスを使って あなたをコントロールしようとする敵も多い。
1 自分に都合のいい情報ばかりを集める
常に宣伝の嵐に晒されている現代社会は「これみんな持ってますよ。持ってないと恥ずかしいですよ」みたいな CM で、「本当だ。あの人も、あの人まで持ってる」と洗脳される。
そして1度そう思い込むと、これ「みんなが持っているから自分も買わなきゃ」と洗脳された自分に都合のいい情報を、自分で探して回る。
でも、そんなものは 持っていない人の方が多いんだけどね。
2 自分に都合の悪い情報を無視
今、世界情勢が急変している。日本も完全にヤバい状態になって税金ばかり上がる。ボクの子供の頃よりも明らかに貧困になっている。政治も行政もひどい。
なのに、ぼんやり「生活が苦しい」とは思っても、「まぁ誰かがなんとかしてくれる。大丈夫だ」と(考えないようにして)放置。選挙にも行かず、政治が悪いことをしてもTVが伝えないから「無かったこととして」無視。誰が本物かを自分で調べようともせず新聞、テレビなどのマスコミを丸ごと信じて「自分の頭で」考えない。
マスコミが常に大資本、権力者側の大本営発表しか報じず、しばしば戦争や貧困、薬害に導いてきた歴史があるのに、眠ったままの羊でいようとする。船が沈めば目が覚めるのだろうか?
3 自分を過大評価
ボクシングの井上尚也は、あれだけ強いのに「対戦相手を必要以上に恐れて」徹底的に分析。トレーニングを重ねて万全の状態で試合を迎える。どんなに周りから「今度の相手は楽勝だよ、実力差がありすぎる」と言われても 本人は自信がない。自信がないから不安を打ち消すためにさらにトレーニングして強くなる。そしていつも、圧勝する。
大谷翔平とかも、そうだよね。偉業を達成しても浮かれない。常に明日のためにトレーニング、準備をする。三流の選手は飲み歩いて今を楽しむ。
つまり、アスリートに限らず「一流は自分に心底は自信が持てない」そして不安を打ち消すためにさらに高みに登ろうとする。だから一流に磨きがかかる。
それと正反対なのが「根拠のない自信で ふてぶてしい ヤツ」
強がってみたり、やたらと喧嘩っ早かったり、マウントを取ってきたりで偉そうだ。実際には大したことないのに。若くても、老人でもそういう醜いヤツ、いるでしょ?
そういうヤツを見かけたら「あー、バイアスかかってんな」と理解しよう。
3 ハロー効果
1つのことを見て総合的に思い込む。「美人だから性格もいい」とか「ブスだから頭も悪いだろう」のような決めつけ。なんの根拠もない。
4 成功した時には「自分が頑張ったから」と思い、失敗したら「周りのせい」
のように思いがち。
5 バンドワゴン効果
Amazonなどで買い物をするとき「大勢の人がいいって言ってるから良いものに違いない」と思う。
ある意味、1つの判断材料ではあるけれど絶対じゃない。最近では「サクラ」「やらせ」のレビューも多く、特に「変な日本語で書いてあるレビュー」は海外の大量やらせレビュー投稿である場合も多い。
「赤信号、みんなで渡っても轢かれるときゃ轢かれる」のである。
6 結果が出た後で「そうなると思っていた」「自分にはわかっていた」と思う心理
本当にそうだろうか? 人には「後出しジャンケン」のように思ったことを後から塗り替えてしまうバイアスがある。事前に「こうなる」とメモしておいてその通りになったらビンゴだけれど、そうじゃない場合「自分の考えが後で書きかわっている」「それとは正反対のことを考えていたのに、結果によって思いがすり替わっちゃった」場合がある。人間とは調子のいい生き物であると思っていた方がいい。
7 他のグループよりも、自分が所属しているグループが一番優れている
そう思うのも「認知バイアス」の なせる技であることを理解しよう。
人間とは、かくも「思い込みで判断する」偏見の多い生き物なのだ。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-32 屋根裏部屋の怪人
公開リハの失敗から「もっとちゃんとした練習場所が欲しい」って思うようになった。
調べてたら、中目黒にあったんだ。
目黒川の川っぷちに建つ、大きなマンションの地下。
雨が降ると 川があふれて、道路が下水で水びたしになってたな。
地下室への階段を降りていくと、カビくさくて ドブ臭くて 薄暗いの。
うさんくさい芸能事務所だとか、「河原こじき」と言われていた頃の名残りを残す アングラ劇団の稽古場がいくつも並んでいた。
まさに「最果ての怪しき芸能界の裏通り」
事件が起こる雰囲気だね。
その部屋のひとつが空いているらしい。
怪しいビルの地下室。
月15万で、専用スタジオが借りられるって話。使い放題。
憧れてたんだ。そういう「自分たちの城」みたいなの。
それでボク、アパートを引き払って その家賃に当てたけど、全然足りない。
他のメンバーは「金 無いから払えない」って言うし・・困って。
部屋のオーナーに理由を話すと、5万で3分の1の時間だけ貸してやるって話になったのかな? うん、そうだ。
それ以外は他のグループが使うけど、空いてる時間は全部使っていいからって。そういう契約。
さっそく丸井に空気ベッドを買いに行った。
「シュコ、シュコ」空気入れて、スタジオで寝る。だってアパート代、全部使っちゃって帰る場所なくなっちゃったんだ。
「フン。先輩、面白そうじゃないですか。オレも付き合いますよ」
ザキが部屋を見回して つぶやいた。
「えっ!? お前も ここに寝泊りするの?」
「だって 先輩1人、こんなとこに置いて帰れませんよ。心細いでしょ? ねぇ。俺が一緒に居てあげますから」
コイツ、本当はいい奴なのかな? と思った。
「俺って そういう男。頼れる男なんですよ、先輩。アッハハハ」
しっかり”売り込み”も忘れてないけど。
そんなわけで翌日、ザキの 空気ベッドも買ってきたんだ。ベッドの上で二人、かっぱ巻きとお稲荷さんを食べた。
「センパイ。かっぱ巻きって、マグロとかエビ食べた箸休めに食べるものでしょう? これメインで食っても・・あじけないなぁ」
「しょうがねーだろ、金ないんだから。でもさ、今は貧乏でもロックスターになればこっちのもんさ。いい家に住んで、家に銀座の鮨職人 呼ぶんだよ」
「いいっすねぇ・・・いつですか、それ」
「もうすぐだよ。オレには構想があるからな」
「早くしないと。僕も親がうるさくなってきてますからね。あっ、センパイ」
「ん?」
「いいこと発見しちゃいましたよ。先輩も靴脱いで、アグラかきながら かっぱ巻き食べてみてください」
「なんで?」
「ほら。足の匂いとかっぱ巻きが混ざり合って、なんだか 納豆巻き食べてるみたい。お得」
「うへえ」
翌日、コースケ も新しい稽古場を見に来た。
「おお、広い! いいじゃないですかココ。・・あれ? このドア、ナンデスカ?」
スタジオの隅に小部屋がついていた。
「おお。気になってたんだけどさ、鍵閉まってて開かなくて」
ボクが言うとコースケが
「あ、俺。水道屋だから。こういうの開けんの得意ですよ、ちょっと待っててください」
コースケは一旦外へ出て、しばらくすると針金を拾ってきて鍵穴へ挿してガチャガチャやっていた。
カチッと音がして扉が開いた。
「おお、すげえ」
「コースケさん、泥棒とかやってないですよね」
とザキが言うと
「フハハ・・バカ言うな」
とコースケは虫歯でところどころ隙間の空いた歯を見せて笑った。ぷーん、と歯の痛みを止めるために詰めている 正露丸の匂いがした。
扉の中は、畳一畳ぐらいの小さなスペース。電話がついてて。長イスが置いてある。多分、着替えとかに使ってたんだろうね、あの部屋。
電話が置いてある台の上に扉の鍵も置いてあった。
「やったぁ。ここキープ」
ドアのところにペタンと貼り紙を貼った。
「関係者以外立ち入り禁止・・・・と。これでよし」
「先輩、大丈夫ですか?そんなことして」
「馬鹿、オレはこのスタジオの3分の1の金を払ってんだぞ。いわぱ大口株主じゃないか。このぐらいの権利はあるだろ?」
「カチャン」とドアを閉めて。外からも出入りできるドアが付いていた。
「おお! この鍵があれば この小部屋からも直接 外の廊下に出入りできる。合鍵作っちゃおう!」
早速、近所に合鍵を作りに行った。
「この鍵さえありゃ、他の劇団が稽古してても この部屋に居られるな」
稽古場に戻って来て。
小さいながらも、いつでも居られる場所が出来て嬉しくなった。
稽古場の隅の小部屋に、オレとコースケとザキと。 3人でベンチに腰かけて。
「どうだ コースケ。やっと城が出来たぞ。今日から この部屋をオレたちの事務所にする。電話も・・・使い放題みたいだしな」
「いいっスねぇ」
「いいっスねぇ・・・・! いいじゃないスかぁ!」
コースケは二度返事をしたんだ。コイツは、ひとの話なんか聞いちゃいない。言われたことには何でも 相槌を打つ。それがコースケなりの処世術ってやつだよ。
ところが いつものように生返事をして、よく考えてみりゃ 本当にいい場所が手に入った事に気がついたんだ。だから、思わず。二度、返事をした。
「”城”というには 小さいけどな。しかし・・・」
三人が自分たちのスペースに満足しながら天井を見上げた時、見知らぬ2つの目と遭遇した。
「うわっ!」
3人とも驚きの声を上げ、その場に凍りついた。「目」は さっと天井の穴から消えた。
コースケがあわてて外に逃げ出し、オレ達も後に続いた。
「見たか?」
「見た。誰かいるよ」
「誰だアイツ。天井裏に住んでるみたいだぜ」
管理事務所に行って。説明を求めるんだけど、ニヤニヤ笑ってウヤムヤな返事しかしない。
“そいつ”が天井裏に居ない時に、コースケがのぞいたら――
「うわっ。部屋になってるよ。キッタネー。弁当のゴミとか・・・ぎゃっ。ポリのでかいバケツに水が入ってる。ションベンじゃねーだろうなあ」
「まさか。ただの飲み水だろ? スケさん、もう降りて来ないと。帰ってきたらどうすんですか?」
ザキが コースケの不法侵入をとがめた。
ある日、コースケが その「住人」の姿をとらえて、
「ヤバイ、ヤバイ。フランケンだよ あいつ」
って報告しに来た。
この地下室の掃除人だったんだ。大男で、言語障害と知能障害、それに少し”せむし”だった。
働き者でね。よく掃除してたから、トイレも廊下もピカピカだったよ。
見た目とは裏腹。心優しい奴なのさ。階段のところで重い荷物を上げてる人がいると、手伝ってくれたり。
「どうもー」って。演歌の、ホラ、瀬川なんとかって歌手いるじゃない? ああいう鼻にかかって 裏返ったような声でアイサツしてた。
ルックスで随分、損してるよ。女のメンバーも、最初はトイレの前とかで遭遇すると「ぎゃっ!」って叫んで逃げてくる。
そりゃそうだ。薄暗いトイレの所で、いきなり出て来たら 驚くよ。責められない。
「屋根裏部屋の怪人」なんて、まるで江戸川乱歩の世界じゃないか。あるいは ヴィクトル・ユーゴー の ノートルダム のなんちゃらみたいな話。
ボクね、差別で言ってるんじゃないよ。でも差別してるのは社会の方だ。あんな所でしか働けない。仕事が無い。
屋根裏部屋が棲み家なんて・・・悲しすぎるよ。
もっとも、そんな所でも仕事を与え、「家」を一応与えてる このマンションの管理人の方が、何もしないで ただ気の毒がってる偽善者どもよりは、はるかに優しいけどね。
その後も新しいメンバーが入って、
「ぎゃっ」って声が聞こえる度に、「ああ。またか」と、思った。
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