どこまで無茶に突っ走ればボクは気づくのか
答えは「大失敗して、立ち直れないほど転落するまでわからない」である。
人は失敗しないとわからない。頭でわかったぐらいでは、また同じ過ちを繰り返す。身も心も傷ついてどうにもならない。ビルから飛び降りたくなるほど追い詰められて、初めて「心から反省し、今までのやり方を改め 改善方法を学ぶ」のである。
だから、飛び降りてはいけない。まだ道は続いている。
絶望のその先に、栄光を用意している。神様は「そういうことをする」
絶望は怖くて悲しくて怖くて、あなたを内部崩壊させる。病気にさせる。おかしくさせる。エネルギーを奪い無気力にさせる。でも、諦めるな。
その先に、必ず栄光は待っている。
信じて再び立ち上がり、歯を食いしばって希望を抱えて歩き出す未来に。神様が用意してくれているのが「幸せ」や「栄光」だ。
次はきっと うまくいく
失敗は何のため? それは「傲慢さを取り除き、優しいけど強い人間にあなたをする」ために与えられたものだよ。辛いけど「受け入れるんだ」
ちゃんと考えて計画を練り直し、素直になって傲慢さを改めれば、次はきっと うまくいく。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-36 馬鹿げた賭け
バンドマンを志ざしながらも、遠回りしていた時代。
あの頃のことをこれ以上 細かく書いても意味がないような気がする。笑っちゃう話は、山ほどあるけれど・・・
話をはしょって少し先を急ごう。
バックバンドが充実した。
例のドラマー。宗教活動がますます忙しくなってやめていった。次に入ったドラムは、行動的な奴でうまいプレーヤーを次々に見つけてきた。
それまでの奴らは、ヘタなくせに態度が悪かったからね。
劇団のバックバンドなんかできるかって感じで、やる気なさそうに弾いていた。
「先輩、俺 自分の曲をバカにされてるみたいで、くやしいっスよ」
楽屋でザキが涙ぐむこともあった。
そういう奴らを新しいドラマーが一掃したの。やる気のない素人とは、つるみたくないって。
「栄」と、いう奴だった。そのドラマー。
ずっと有名なバンドのローディー(機材運び)やってたから、プロの厳しさも 楽しさも知っているんだよね。
だから。ちゃんと練習して、手を抜かないプレイをするメンバーを、どこかからスカウトしてきてくれたんだ。
それでバンドの実力が上がり、いろんなライブハウスに出れるようになってきた。
芝居を少なくして、ほとんど曲を聞かせるスタイル。
ボクは このまま、バンドになっていってくれればと思ってたんだけど・・
原宿の 有名な「クロコダイル」にも出るようになって。
「おー、だんだん一流になってきたじゃないか」
って自信が湧いてきたんだ。
「先輩、ここらで ぶちかましませんか?」
「?」
「何かでかい事、ぶち上げましょうよ」
言葉の意味を探っていると、さらにザキは
「そろそろ親もうるさいし、芸能界にデビューするんなら急がないと、俺いなくなっちゃいますよ、先輩」
とかって、おどしをかけてくる。
まるで先が見えない状況ではあったけど、だからって どうする?
ボクの心を見透かしたようにザキは、
「新宿にシアター・アップルってあるじゃないですか? ああいう所でやりたいなあ、俺」
で、見に行った。シアター アップル。新宿コマ劇場の地下ね。
今はもう失くなってしまったけれど「新宿コマ劇場」って言ったら当時 歌舞伎町のランドマークだった。北島三郎ショーとか、芸能界の大御所の演劇やショーが連日催されていた。
その コマ劇場 の地下には もう少し若い人向けの劇場があった。コマ劇場に比べれば、少し軽いというか砕けた現代劇やショーが繰り広げられていたんだ。しかしカジュアルとは言っても、プロのステージばかり。
とてもじゃないけど、アマチュアが出来るような所じゃない。
設備もすごくて、スタッフとか どうすんのって感じ。
だいたいホール借りて、セット仕込んで、なんだかんだ・・・莫大な金がかかるよ。
マネージャーの倉本に相談した。
「うーん」って。 うーん、それしか言わない。
今ここでザキに抜けられたら、グループは倒れるぜ。
何とかあいつが納得する「形」を作らないと。
それがいけなかった。人間、焦って無理すると、ろくな事にはならない。
渋谷に ヤマハのエピキュラスって音楽ホールがある。
でかい所だ。そこは規模の割には安かった。
とりあえず、ザキを連れて行って。気に入ったから、そこを押さえたんだ。.
1週間ぐらいかな? 6日だったか? またベタ押さえ。
それで、再び倉本と相談したら、客を呼ぶためには 誰か知名度のあるゲストを客演させないと駄目だって。
彼に連れられて、代官山の 倉本が前にマネージャーをやっていたモデル事務所に連れていかれたんだ。
交渉したけど、有名な連中はみんなギャラがバカ高いし、第一スケジュールが取れないって。
とぼとぼ2人で駅まで歩いてたら、後ろから
「倉本さーん」
って追いかけてくる奴がいる。べスパに乗って。
見た目は悪くないけど、おしゃべりで軽い奴だなって印象だった。
「どーも」
お互い挨拶して。状況を話した。
喫茶店でなんだ、かんだと。とりとめもなく。で、そのベスパの男が
「俺も踊りとか得意で、ミュージカルも主演したことあるけど、今 ホサれちゃって、どこにも出ちゃいけないことになってるから。協力できないなあ」
無名の奴だったから、そいつ。”別に協力してもらっても、客寄せにはならないんだけど” と思った。それにしても、何してホサれたんだ?
それから1週間ぐらいしたら そいつがTVから出て来た。タモリの「お昼休みはウキウキ」ってやつ。それが羽賀ケンジだったんだ。
関係ないけど、ちょっと思い出した。
いろいろ当たっているうちに、「五十嵐 夕紀」っていう元アイドル歌手が出演してくれることになったの。
さっそく脚本を書いた。オレが勤めていたローラースケート場に集まってくる、面白おかしい奴らの話。
生バンドのローラースケート ミュージカル。
「ローラー・スター」
「これはいける」って思ったよ。バンドもうまいし、ゲストは五十嵐夕紀。ローラースケートはいて、歌って踊るショウ。ローラースケート場で、スケートのうまい連中もスカウトした。
倉本と金を集める約束をして。オレはいろんな所に頼みこんで一大借金をした。
「ぴあ」に広告を出して、ついでに出演者募集って小さく書いたら、ドッと応募の手紙が来て。何百通の中から、書類で落として、オーディションをした。
結構たくさんの出演者が出来て、楽しくなってきたんだ。
その中に「池田の新ちゃん」と言って、変な踊りする奴が混じっていた。
「真面目でいいんだけど、ちょっとカマっぽいな。どうする?」
「採用でしょう」
その後、そいつ 「ラッキイ 池田」って名で、TVに出るようになったよね。人気振付師になった。そのラッキイ 池田 も、ローラー・スターに出演していたんだ。
「ローラー・スター」は、その後どうなったか?
結果、言おうか?
芝居そのものの出来は悪くなかった。そこそこ受けてた。名古屋のイベンターから
「全国にあるローラースケート場を廻って、この芝居をやりませんか?」
っていう誘いがあった。あと、某 石油会社のコマーシャルの話とか。ファンレターも何通も届いて。プチ芸能人扱いされるようになった。
でも そういうものは全て。
巨大な借金の渦の中に飲み込まれていった。
チャンスが虚しく目の前を通り過ぎていく中で、借金取りとの攻防がはじまったんだ。
倉本は結局、公演前には資金繰りに動いてくれなかった。
前金、前金で渡していけば安く押さえられるものでも、後払いとなると割高になる。しかも、オレの作った現金はすぐ底をついた。
倉本が用意する分の予算が決定的に不足し、迷惑料のような金が余分に出ていく。
それにローラースケートを滑れるような特殊なステージは、さらに借金の額を広げた。
一週間の公演が終わり、最後の幕が降りた後、全てを出しつくしたザキは、ステージ裏で吐いて倒れた。ドラマの主人公みたいに、「燃え尽きた」って感じ・・・
ザキ、なに燃え尽きてんの? って思った。こんなところがゴールじゃないだろ。もっともっと上にいくんだよ。
満足そうなザキの表情を見ながら、それでもボクは倒れる訳にはいかなかった。
これから始まる地獄を思えば・・・
何年か後に、「光ゲンジ」が ローラースケートをはいて現れた時、ひどく胸が痛んだのを覚えている。
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