言い間違えじゃないよ。虫、カナブン。
人もカナブンも同じような特性で動いている。
光あるところにカナブンは集まり、ブンブンと楽しそうに飛ぶ。協力者、ファン、友人、知人。いい時にはいっぱい集まってくるね。それが人間。それが虫。
人間も虫も、本質的には変わりゃしない。
楽しい場所が好き。盛り上がってるとこが好き。成功している人が大好きなんだよ。
そうじゃない、って人も「その光を基準に」興味ないそぶりをしたり関係ない行動をとって「自分は他の人と違う」っていう特別感に浸っていたり。
そういうもんだ、って人の特性に気づくと「その友情も」「愛も」「仲間意識も」今がいい状態だから保ってるんであって、永遠じゃない。いつか無くなるかもしれない、っていう覚悟ができる。
この覚悟がある人を「強い人」って呼ぶ。
「友情は永遠だ」なんていう幻想を抱いて何かのきっかけで友達が離れていったとき「騙された」と騒ぐ人は弱いだけじゃなく「依存している人」
人にすがっても、離れる時には人は去る。追いかけるほど逃げてゆく。そんな不確定なものを追いかけるよりも、再び己が光り輝けば人は追っ払っても寄ってくる。その程度のものよ、人間なんて。これは馬鹿にして言ってるんじゃない。そんなもんだと覚悟を決めろ、と言ってる。
まぁ、友達や仲間とギリギリの関係で突っ走ってきたボクとしては
「人間は簡単に裏切ったり、離れていったり敵に変わったりする」
という真実と何度も向き合った。修羅場くぐってる身としちゃあ、
人間を「好きだけれど」「無防備にリミッターをはずすほど信じちゃいない」
それは「人が悪い」からではなく「弱い」生き物だからだ。弱いから裏切るんだよ。悪気はない。ただ「自分を守るために」
人は裏切り。嘘をつき、騙し、陰口を言ったり離れていく。自分を正当化するために他人を悪く言う。
そんな時、どう思えばいいか?
「ああ、自分がそういう状況を作っちゃったんだな。人は弱いのに、彼らに危険が及ぶ状況を生み出してしまった。人は光が集まる楽しい場所が好きなのに、わたしは光を消して暗い状況を作ってしまったのかも」
そう思えるようになれば、人が離れるのも裏切られるのも上等。今度は、もっと光に満ちた明るい場所を作ってやる。離れていく人、さようなら。あなたの道で頑張ってね、成功を祈る。さぁ、次行ってみよう!
と、なる。
そして最後一人になって「やり直そう」と覚悟を決め。周りを見回した時に、暗くなったあなたのそばに ポツンと居てくれる人を発見することがある。ごくごく稀にだけどね。滅多にいないよ。でも、たまーに。そういう人がいたりする。
なんか理由があって残ったわけじゃなく、灯りが消えてもあなたを好きだと言ってくれる人。だからといって依存してこない。こっちベッタリじゃなく自立してる人。
本当の友人。
そんな人がいたら、その人こそ あなたが人生で大事にすべき 本物の人、だろうね。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-37 消えたザキ
つわものどもが 夢のあと。
マネージャーの倉本とボクの部屋には、借金取りの電話がひんぱんにかかってくるようになった。四六時中だから、フトンかぶせて音を消してたんだけど、今度は部屋に直接、ね。訪ねてきて。
「倉本さん、このままじゃ まずいよ。どうする?」
対策を話し合って。今ある借金を分けることにした。ボクは事前に作った借金と、二重にかぶることになる。支えはグループのクオリティが上がってきたってことだけだった。
バンドのギターの奴が訪ねてきて、
「楽しかったですよ。またやりましょうよ。続けていけば きっと有名になると思うな、俺たち」
自分の知っているプロダクションに連れてってくれて、紹介された。こっちは借金で火の車だったけど、周りは”すごいやる気”って雰囲気になってきたんだ。
「大丈夫。ここを乗り切れば、きっと うまくいく」
そんな確信があったね。
ところが公演終了後から ぱったり。ザキの連絡が途絶えたんだ。消息不明になったの。奴の実家に電話を掛けて、
妹が出たから、
「もしもし。池松ですけど、トモヨシ君は・・・」
『ガチャン』って。電話を切られる。取り次いで貰えないんだ。
家族ぐるみでボクを拒絶してるって、そんな空気。なんだか雲行きが怪しくなってきた。
あいつ、その頃 学校の先生になるための準備を進めていてさ。教職課程を取るために どーの。どっかの大学院へ行って ウンヌン。教育実習かなんかやってたんじゃないの?
まったく なんて運命だろう。学校教育ってヤツは、こんな所でも ボクを苦しめるのか?
やっぱり日本の教育は、ボクの敵だ。
ボクからプライドも何もかも取り上げといて、さらに「ザキ」というメンバーまで さらっていく。 憎んだね。教育というものを、とことん。
ボクが事後処理に追われている時に、自分は知らんぷりか?そんな奴が学校の先生になって、子供たちに一体何を教えるっていうんだ? 世渡りのうまさか?
「自分さえ良ければ」「いい学校へ行って、いい会社に勤めて自分さえいい暮らしが出来れば」
そんな子供たちばかりが 増えてしまったじゃないか。日本は。 教師って何だ? 教育って、うまく立ち廻る方法を教えるってことなのか?
雨が降ってた。
「ローラー・スター」が終わってから、もう何日がたっただろうか? 1か月か? もっとだろう、多分。
夕方。
「借金返済の交渉をあちこちにして回り」身も心も疲れて部屋に戻ってみると、ザキがいた。 カギなんか かけちゃいないからね。盗られる物なんて、無い。
「パチン パチン」と。 おもちゃのピストルをはじく音が聞こえた。ステージで使った「小道具のピストル」
ザキが弾の無くなったピストルの引金を引いていたんだ。何度も。何度も・・・
ドアを開けて、目が合って。最初2人とも無言だった。
「どうも・・・先輩、元気でした?」
先に口を開いたのは、ザキの方だ。
「元気に見えるか? ずっと捜してたんだぜ。どこに居たんだ?」
自分でもびっくりするほど静かに話した。
「俺、教師になろうと思うんですよ。いろいろ準備が忙しくて・・・連絡しなくてすみません」
いろいろ話した。いろいろ話したけど、結局それは同じ糸を紡いで布にしていく作業ではなくて、編み上げたセーターの糸をほどいていくようなもの。 自己弁護と、それを追求していく検事のような関係で、どっちが良いとか悪いとか言う以前に、お互いの目指す方向が違っていた。 もうザキは戻ってこない。そう感じたよ。
「パチン、パチン」おもちゃのピストルが、ボクの心を「希望」ごと撃ち抜いていった。
その後、コースケも訪ねてきた。 コースケの野郎。フフ。あいつはお調子者だから、さっぱりしたもんだったね。
状況が悪いと見てとるや、すごくドライな顔をして、
「ザキがやめるんなら、俺もやめますよ。ウン、もう未練ないもん。フハハ」
差し歯の抜けた顔で笑った。ボクも思わず笑ってしまった。皆の噂は本当だったんだな。「都合が悪くなると逃げる。信用できない奴」
でも、ひょうきんだったし、ザキがやめた時ほどショックは受けなかった。
主要メンバーが抜けて。
もう人の息吹を感じたくなかった。その頃付き合っていた女の子ともうまくいかなくなって。気が抜けたようになったボクを彼女は責めた。でも、口論する気力もエネルギーもなくなって、遠くばかり見つめるボクに失望したように黙って。
彼女には申し訳なかったけど、放っとかれて少しホッとしたんだ。孤独だけが傷を癒してくれる。真っ暗なトンネルを一人で。どこまでもどこまでも歩きたかった。
「ふーーーー」
長いため息がもれた。ボクは ポツンとこの街にいる。
グループのメンバーは、まだ何人も残っているけれど、ぽっかり空いた穴から情熱が逃げていく。
世界中から取り残されたような息苦しさ。絶望を拒絶するために、ボクは目を閉じた。
補足
今回、特定の個人に対して不利な話の展開になってしまった。 しかし 他者を非難し、自分の正当性を主張することが本文の意図するところではない、と付記させて欲しい。
「ライナーノーツ」はエンターテイメントであり、多分に自分を中心とした、自分に有利な観点で書かれているであろうことを否定しない。もちろん「ボクにとってはすべて事実。ドキュメンタリー」であり感情に流されず、客観性を保ちながら書くように努めてはいるけれど・・ドラマの展開上、その行く手をさえぎる形になる悪役という立場が出てくる。
しかし、それは見方を変えればボクの方が悪役なのかも知れない。
現実の世界では 誰もが真剣に、その時々で精一杯の選択をし、一生懸命に自分のドラマを作り上げているはずだからだ。
その中で、互いの利益が相反して衝突しても、それは どちらが悪いとか、良いとか、言えないのではないか?
時には今回のZAKKIのように、損な役回りも出てくる。子供時代の母親とかもね。しかし、それは 彼らの人間性とは全く関係ない。
切り離して、あくまでも「ストーリー展開」として楽しんで欲しい。
今後、いかなる個人、団体においても それは同じで、悪意を持たれることのないよう重ねてお願いしたい。
登場する全ての人々が 物語に変化をもたせ、彩りを与えてくれていることに感謝している。
なお、この文を書いたのは もう何年も前で、ZAKKIは その後、自分の時間を再び歩きはじめ、今は「校長」という立場で頑張っているようだ。
家族を持ったZAKKIは、娘と息子と奥さんを連れて遊びに来たりしている時期もあった。今はまた疎遠になっているけれど。楽しく食事をする日が再び来ることもあるかもしれない。
ロックンロール kaz
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