何かを得るためには、何かを失う
ということ。
これがわかっていないと「悲しみや悔しさばかりに心が囚われ、せっかくの大事な出会いに気づかず拒絶してしまう」
チャンスを失ってしまう。
これは怖いことだ。怖いことだけど、うまくいっていない人の特徴は「不幸ばかりに目を向け、それと引き換えに入ってくる重要な出会いを軽く見て、蹴飛ばして遠くに追いやってしまう」
覚えていて欲しい。重要なことだから もう一度言う。
トレードオフ思考
幸運が起こるには ある一定の条件がある。
大事なものを失う ということ。あれもこれもは手に入らない。「何かを得ようと思ったら、何かを失う」のである。大事なものが欲しければ、大事なものを差し出さなければいけない。
大事なものを失う、差し出すとは
不幸が起こることばかりではない。
子供の頃、みんなが遊んでいる時に「我慢して練習して」音楽家になったり、とかもそうだ。
手に入れるために差し出す。「友達と楽しく遊ぶ時間を差しだして練習する。」「彼女とデートしたいのを我慢して勉強し、希望大学に合格した」
これを、トレードオフ思考 という。
「得る」ために差し出す。手に入れるためには「大事なものを差し出す」あるいは、意図せず 大事な人を「失ってしまった」ということが必要なのである。
「自分の欲しいものは手に入れたい。でも、自分は何も差し出さない」
これは 詐欺師の考え方 である。それで手に入っても、後から大事なものを奪われるか「手に入れたものを全て失う+それ以上のものも取られる」ハメになる。
だから賢い人は「先に差し出す」後から取られて不幸にならないために。
この理論がわかっていれば、悲しいことが起こっても「これだけのものを差し出したのだから、きっとそれに見合う、それ以上の良いことが起こる」と、両手を広げてチャンスを待ち構える癖がつくようになる。そういう人にしか チャンスはモノにできない。あっという間に幸運は通り過ぎるからね。
実は今回の物語、前回のストーリーで重要なメンバーを失い「新しいものが入ってくる準備ができていた」
しかし トレードオフ思考 について知らなかったボクは孤独感ばかりに苛(さいな)まれていた。これからやってくる素晴らしいチャンスも予測できず。だから、
ボクも危うく やってきた「良い出会い」を拒絶しかけた。一見、めんどくさい、もう自分には関係ない事案だと思ったからだ。チャンスは「チャンスの顔をしてはやってこない」
作業服を着た、地味な出立ちでやってきたりする。これは重要なことだ。
その様子を、今回のストーリーから感じ取って欲しい。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィール を見てね
SONG-39 芝居から音楽へ
ミスター スリムをやめて、すぐバンド作りをはじめた。
広島の実家に帰っちゃった「トミノスケ」ってドラマーを呼び戻してね。「トミノスケ」っていっても本名じゃないよ。ボクがつけたの。若山だから。トミノスケ。
「どうして?」
「若山トミノスケって役者、いるだろ?」
「・・・・? それを言うなら、”若山富三郎”じゃないの?」
って言われたんだけど・・
「そうか。でも、とりあえず トミノスケな」
ってことで、トミノスケになったんだ 彼は。
そいつ、オーソドックスだけど 結構うまかったからね。
あと劇団のバックバンドをやってた連中も加えて、再びスタジオに入った。
劇団員はもういない。いるのは、ボクというヴォーカリストだけだ。
ボクは異常体質なのかもしれないけど、スタジオの中で音の洪水を浴びると鳥肌が立ってインスピレーションが溢れてくる。今もそうだけど、当時は麻薬でもやってるようにエンドルフィンが噴出した。
曲のアイディアが どんどん湧いてくる。もっとも、この当時 作曲はできないからミュージシャンにイメージを伝え、もどかしい作曲をしてもらっていた。コードの雰囲気を探り、カッコいいリフを、どこかの曲を例に
「ああいう感じの曲に、できないかな?」
なんて やってた。この時点では音楽知らない、でもイメージはパンパンに膨らんでる。歌詞もどんどん出来てる。つまり「やりたいことは山ほどあって」「それを実現させる音楽的な知識と技術がない」という状態だった。
それでも、この時のボクには技術力があるバンドがあった。だから、MUSE(音楽の女神)が舞い降りて一瞬にして何曲もの作品が完成した。
「この世界はオレに合ってる」
単なる勘違いだったかも知れないけど、「オレって天才じゃん」というジョークが確信に変わるほどナチュラル・ハイな状態がつづいていた。
今思うとね「表現したいものがある」ってことが一番大事。技術は後からついてくる。いろんなミュージシャンとやってみて「やりたいことがわかっている」やつは強い。魅力的だ。
反対に「上手くても 何やったらいいかわからない」プレイヤーの演奏は「なんでも出来るけどつまらない。伝わってこない」のよ。
活動をはじめて。
楽しくなる筈が・・すぐ飽きちゃった。
「なんか違うなぁ。オレのやりたいのは、こういうことじゃない」
皆うまいよ。譜面みて、一発OK。スタジオミュージシャンみたい。
でも、ボクはそういうことじゃなくて、もっとバンドバンドしたものがやりたかったの。
強烈な個性を持った「あの日サンフランシスコで見たようなバンド」を作りたい。
「ブルース ロック」みたいなサウンドに刺激を受けた。でも音楽的知識が足りなかったから、
「ストーンズみたいな ヘタうまなバンドがやりたい」
って皆に言っても理解してもらえなくてさ。結局当時はやり流行のフュージョンみたいなサウンドに落ち着いちゃうんだ。軽いんだよ、美しすぎるんだ!!
あと 動き、ね。
長年 言い続けてたんだけど、ポツポツ動くバンドが出始めてきたんだよ。
「見ろ。やっぱり オレの言った通りになった。音楽はエンターテイメントに変わりつつある。皆、もっと動こうよ」
ってハッパかけるんだけど、地味な人たちだし・・・。
ホント、どこまで行ってもバックバンドだな これじゃあ。って頭を抱えちゃったんだ。
そんなある日――
ボクの劇団のステージをよく見に来てくれてた、言ってみれば”ファン”みたいな女の子から電話がかかってきた。
「仲間を集めて芝居をやるんだけど、”演出”を手伝ってもらえませんか?」
ってね。一瞬、言葉につまっちゃったんだ。色んなことが思い出されてさ。
グループを維持するために、いい加減さや我がままに振り回され、人の面倒ばかり見ていた。
「これからは 人のためじゃなく、自分のために積み上げるんだ」
そう心に誓ったからね。ボクはバンドマンだ。
もう あの頃には戻りたくない。断ろうと思ったんだけど、心の奥に呼び止められた。
「でも まぁ、金も一切出さなくていいって言うし、手伝うだけなら」
・・・まぁ いいかって。
練習に行った。
代々木のオリンピックセンター。
メンバーは女の子ばかり 10人近くいたのかな。
例の、肉体を酷使する練習方法で 軽くしごいてみた。
案の定、何人かやめるって話で。次の練習から6・7人に減ったの。
いいんだよ。そういう「遊び」で来てる奴らはやめちゃっても。
そんな奴らとは関わりたくない。人の劇団だったからね、気楽。やりたいようにやるんだ。
「どうせ みんな根性なくて、やめちゃうんだろ?」
ぐらいな気持ちさ。ステージに立つって、そんな甘いもんじゃないから。客の視線って冷たいもの。シビアに見てる。ちゃんと練習で汗流してる奴だけが、その視線に耐えられるんだよ。
ところが 残ったメンバーは、予想に反して一生懸命ついてくるんだ。
「へー」って感心した。素直なの。
何も持たない奴らの最大の武器は、「素直」ってことだよ。
何かを身につけようと思ったら、絶対素直じゃないと駄目だ。言われたことを、いちいちひねくれて取ってたら、先へは進まないよ。素直な奴だけが残ってく。
コイツらは、有名な劇団の研究生だった。
やっぱ そういう所のオーディションに受かる奴は違うねって思う。こういうメンバーが最初からいれば、ボクも苦労せずに済んだんだ。
素直で一生懸命な奴らだからね、やりがいがある。ボクもだんだん本気になってきた。
熱が入ってきたの。
ボクには 痛い思いをして手に入れた、貴重な体験があったからさ。そう、教えることはいっぱいあった。
本で読んだような、机上の空論じゃない。ボクのは全部、実体験によるものだから。
そういう「リアリティ」を彼女たちも感じとってくれたんじゃない?信頼してついてきた。
「よし。基本的なトレーニングも終わったし、そろそろ芝居を作ろうか」
って。
とは言っても、メンバーが少なくなっちゃったからね。少し補充しようって。ボクはスリムの知り合いとか、今井雅之なんかを呼んできた。今井雅之・・・フフ。あいつ肉体派だったなぁ。この間まで自衛隊にいて、戦車転がしてたとか言ってさ。
ローラースターが終わって、あいつを主役にした芝居をやったんだ。声はでかいけど、滑舌が悪くて、しゃべりがはっきりしなかった。
地方出身だから、独特のイントネーションだったしね。このしゃべりは役者向きじゃないんじゃないか、というのが最初の印象だったね。
ところがあいつ、その後 有名人になった。「ウィンズ オブ ゴッド」って戦争の芝居の脚本を書いて、演出 主演と。ブロードウェイの方に持ってったりして、ニュースでも取り上げられてた。映画にもなったでしょう? レンタルビデオ店に置いてあったよ。
表参道の裏道にある、カフェでバイトしてたんだ アイツ。
メンバーと打ち合わせで、そのカフェに入ったの。今井がバイトしてること知らずにね。
そうしたら、お会計の時 その店のスタッフが
「今日は、タダです」
って言うの。びっくりしたら
「僕、今井さんの芝居を見に、そちらの劇団の公演に行ったことがあるんです。で、店に来られたので、今日はバイト休みの今井さんに電話したら、俺の奢りにしといて、って言われたから」
だって。そういうことすんのね、アイツ。
その後、アイツと会わないうちに今井はどんどん有名になって成功し、ついでに若くしてガンになってこの世を去って行った。
ボクは、その頃 無名のままだったから 当時付き合っていた彼女に何度も
「今井さんのとこ行って、なんか仕事のきっかけもらって」
と言われたけど、「死んでもいやだ。そんなこと言うならお前と別れる」と言って突っぱねたんだ。その後、ラッキー池田と今井雅之がテレビに出てきて楽しそうに話してるの見て、複雑な気分になった。
今はただ、冥福を祈る。
あ、ごめん。なんだかあの頃のこと思い出して脱線したね。話を元に戻そう。
「芝居の公演」を打つにはメンバーが少なくなっちゃったから。少し補充しようって。ボクはスリムの知り合いとか、今井雅之なんかを呼んできた。
連中は連中で、昔の劇団仲間に声をかけて誘ったんだ。
皆、それなりに雰囲気を持った奴らが集まって。池袋の芝居小屋で3日間の公演をした。
フレッシュだったよ。スゴく新鮮な感じ。
芝居はヘタだったけど、何か すごく「ピュア」でいいんだ。魅力があった。ダイアモンドの原石を見つけた気分で「こいつら磨けば面白くなる」と直感した。
その頃、バンドは トミノスケと彼の友達のヒカルっていうギタリストとオレと。
3人で細々とスタジオに入っていた。
劇団バンドは もうやめちゃって。
「このバンドもつまんねぇな」
と思いながら、トミノスケの作ったオリジナルとかを練習してたんだけど・・・
バンドの連中は、そこそこのテクニックはある。でも、つまんない。魅力がないんだ。
一方、劇団の女の子達は、個性的で前向きで楽しいんだけど、残念ながら技術がない。音楽も知らない。
技術と魅力。両方が揃わなければ、ボクの夢の実現はない。
「矛盾」と「葛藤」を抱え、ボクは2つのグループを行ったり来たりしていた。
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