SONG-43【チケットノルマ/日本と海外のライブハウス事情】観客0人

SONG-43main-visual-0-spectators タイトル 「SONG-43 観客0人」 暗闇の階段を登る1人の人。隣にメッセージテキスト 「どん底の時に描いた 理想の未来が本当の夢」
どん底から這い上がる実例

現実を直視できるかが分かれ道

偉そうな人を見ればわかるのだけれど。

周りの評価と、その人の評価にかなりのギャップがある。

もっとストレートに言えば「大したことないのに、自分は偉いと思ってる。威張ってる」

a bossy person

そういう人は「理想の自分」に努力せずに「成ったつもり」の人。空想の世界の住人だ。若ければまだ「井の中の蛙、大海を知らず」で、若いからおそれを知らないねー。で笑って済ませるけど。

年取って「空想の世界で 自分は偉い、と思ってる」勘違いな人は、痛い。自分を甘やかして歳だけ取ってきた人なんだろうな、と距離を置いてしまうよね。

理想とかけ離れた自分の姿

それは誰しも見たくない。認めたくない。

しかし。スタートは誰でも「情けない自分と向き合う」ところから始まるんだよ。

夢を見る。歩き始める。壁に当たる。

その時初めて「自分の無力さ」を知ることができる。鏡に映った弱々しい姿。無様だ。

Warning

さて。そこで目を背けたら、そこで止まる。成長はない。成長しなければ、そこがあなたの限界となる。

人間の大きさとは、どこの限界でストップしたかで決まる。最初の壁で挫折して諦めた人は、小っちゃい、小っちゃい。

2度目の壁で心折れたのなら、まだまだ小物。

3度目で折れたのなら まぁ、普通かな。4度目なら、ちょっと根性あるね。5度目、6度目、7度目・・・ いくつもの壁に当たって痛い思いをしながらも 乗り越えた人。死ぬまで乗り越え続けようとしている人は「大物」立派な人だね。

Breaking the limit

どん底の時に描いた理想の未来が「本当の夢」

夢というのは、人に一生ついてまわる「願い」だ。

大きい夢。小さい夢。

家族を幸せにしたい。子供を笑顔にしたいというのも夢だけれど、「具体性がなければ夢はかなわない」

家族を幸せにしたいなら、たとえば「収入を増やす」そのために「今より稼げる仕事に就く」「そのために、何かの能力を上げる」「そのために・・」と具体的な計画を立て、「いつまでに実現させる」という行動計画を練る。

これをしない限り「夢は空想のまま」

Anyone can do it if they just dream

宝くじが1億円当たればなぁ、と願うのは「夢ではない」そんなものは現実味のない「ドラマをぼーっと見ている観客の世界」だ。どうせなら、あなたが主役の「あなたが作る[現実の]ストーリーに生きて欲しい」

で、話は 最初に戻るが

「夢を見る」

すると壁にぶち当たり「無様な自分の姿を見ることになる」

その現実を直視して修正するのが「成功への道」である

神様は「本気で夢を見る人」に「現実を見せる」

醜い今の姿を見せる。

余計なプライドを 一度 削ぎ落とされた人は、今の現実の自分 小さな「時に惨めな」自分を素直に認め、足りない部分を分析し、それを埋め合わせるために行動する。

そう、誰でもスタートする時は「希望に満ち溢れ輝き、気力もみなぎっている」

しかし、すぐに壁にぶち当たり「痛く惨めな現実と向き合う」

その時、誰でも落ち込むけれど。そこから立ち上がって立ち向かう者だけに栄光が用意されている。まさに「どん底」しかし、どん底になって計画を立て直すと見えてくるののがある。

The ideal figure you really want to be

どん底の時に描いた理想の未来が「本当の夢」

ということだ。今回、ボクのストーリーは「ライブをやったら 観客0人だった」というどん底を味わうことになる。そこからの逆転劇を読んで参考にしていただきたい。どん底から這い上がる実例、ヒントが散りばめられていると思う。


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィール を見てね

目次

SONG-43 観客0人

バンドに限ったことじゃないけど、技術力があるだけじゃ成功しない。見た目もすごく大事なんだ。

本能的に、そのことを理解していたボクは、上手いけど地味なギターとドラマーに 派手な役者志望の女の子たちを混ぜてシャッフルさせ、化学変化を起こさせた。

chemical change

そして猛練習の甲斐あって、ボクたちも 少しづつ、ライブハウスに出れるようになってきたんだ。

とは言っても、有名なライブハウスには出演させてもらえない。ど素人に毛が生えたぐらいのバンドでも出演できるところを探した。出演者も適当なら、店も適当で、

「ここ本当にライブハウスなの?」

という程度の店だったけど、それでも出演できるようになったことが嬉しかった。

「お前らずいぶんメンバーがいるな。何人編成だよ!」

リハーサルでステージに上がると、驚いたその店のスタッフが聞いてくる。

「はぁ。ひい・ふう・みいよ・・・あはは。9人。9人編成ですね、オレたち」

9人なのは わかってるけど 恥ずかしいから。今 気づいたようにトボけてたな。

A man who laughs and deceives

指を刺され笑われてるのを、「えへ、えへ」と照れ笑いで誤魔化そうとしている男の画像。

「カァーッ。ビッグバンド でもないのに 9人!」

呆れてのけぞった オペレータが、リハそっちのけで話してくる。

「ギターが男1人と女1人。サックスがいて、キーボードがいてベース・・ドラマー・・・ボーカル・・ティンバレス までいるじゃねぇか!」

驚いた声がホールに響き渡った。対バン(共演バンド)たちも 面白がって見にくる。顔を見つめ合い コソコソ話し、笑いながら去っていった。

「かーーっ、やりたい放題だなお前ら。贅沢って言うより、こんなわがまま編成のバンド、見たことねぇよ」

ライブハウスのスタッフも 笑いながら話しかけてきた。

「え・・えへへへへ」

ボクはもう、笑うしかない。

そんなこと言ったって、しょうがねージャン。派手でうまくてエンターテインメントなバンド作ろうとしたら こうなっちゃったんだよ。

と、開き直るわけにもいかず。毎度、頭をかいて誤魔化した。

まいったな。誰かに辞めてもらって少し人数減らすか? でも誰に辞めてもらう?

thinking child

爆音

そのあたりから 少し名前の知れた ライブハウスにも出るようになって―――
吉祥寺の「シルバーエレファント」。今はもう無くなっちゃったけど、代々木の「レイジーウェイズ」とかね。

店側にしてみりゃ、迷惑なバンドだったと思うよ。人数が多いから、セッティングもチェックも大変だ。
マコトのギターなんか、マーシャル フルアップだからね。しかも出力が増量するように改造されてる。音出した瞬間に、ビリビリ!! 空気がしびれて、鼓膜が破れそうになるんだ。

「スイマセーン。モニター ぜんっ、ぜん聞こえないんですけどォ」


ヤスコが悲痛な叫びを上げる。
当たり前だ。あんだけマーシャルの音がでかけりゃ もう、他の音は聞こえない。

A woman covering her ears from the noise


「うーん、こっちサイドでは目一杯返してるんですけどね。バンドさんの側で音量下げられませんか?」


やんわりと店のスタッフにたしなめられる。 

「マコト、ちょっと音 下げてよ」


「駄目だよ。マーシャルはボリューム下げても音量は変わらないんだ。”音質”が変化するだけ」


確かにそうなんだけどね。そうなんだけど、程度問題ってものがある。

だいたいマコトは、自分の好きなロックギタリストの インタビュー記事読んで言ってるんだろうけどさ。プロのステージってのは広い。でかいのよ。武道館や東京ドームあたりなら ギターアンプをフルアップで「箱鳴り」の音の良さを表現できるだろうけど。

10坪程度のスペースで それをやったら地獄だよ。音が跳ねて回って「ぐわングワン」して何弾いてるかわからない。バンドで大事なのはお互いの音の混じり具合。バランスだぜ。

今のボクだったら、それを言えるけど、当時 音楽知識が飛び抜けてたのはマコトだったから、ボクを含め誰も マコトの暴走を止められなかったんだ。それでも、ボクは「音を下げてくれ」って何度も言ったさ。だって、いつまでもリハが終わらないから。

マコトは、しぶしぶ音量を下げる「パワーソーク」なんて買ってたけど、あまり変わらなかったなぁ 爆音。

volcanic eruption, explosion

モニターなんて、いくら上げても他の音は聞こえないの。「ピー ピー」ハウっちゃって、もう大変。しかもステージの上の、自分たちの音だけ気にしてりゃいいのに、わざわざスピーカーの前まで行って、「わかったような」顔して、客席の「出音」までチェックする。

「すいませーん。ちょっと500ヘルツんとこ、上げてもらえますか」


マコトが専門的なことを言っちゃって。でも店の人に、


「そういうことは、こっちでやるからいいよ。他のバンドが待ってるから、さっさと自分たちのバランス取って」


って怒られた。

ステージが始まると、誰かがステージから落っこちる。9人もいるからね、ぎゅうぎゅう、ひしめき合っちゃってる。「おしくらまんじゅう」みたいに。ぶつかり合って演奏してたよ。 キャパシティが狭すぎたんだ。うちのバンドには。

A man clinging to a rock

客席には人がいない。ステージの上の方が人間が多いっていう、情けないライブがずっと続いていたなぁ。

あんまり人が来ないから、対策を考えて。
ヤスコ・クイーンとトコモ・チビ太が、ある日 いっぱい人を呼んだ。


「どうしたんだよ、スゴいじゃん」

でも、何か様子が変なの。客が引いてる。


「あたしたち、”同窓会しよう”ってウソついて 友達呼んだんです」

「えっ!?」

 皆 絶句しちゃった。


「そう。今 集まってる人達は皆、ライブじゃなくて 同窓会だと思ってるんですよ。バレないように、ちょくちょく友達の席に行っていいですか?」

bar hostess

売れっ子のホステスみたいに、バンドと客の席を行ったり来たり。
サギみたいなライブだよ。
でも、最後の方には完全にバレて、会場中にシラケた空気が漂ってたね。

観客0人

そんな夏の ある日。

渋谷の有名な「クロコダイル」ってライブハウスに出演した。昼の部だったけど、ボクたちもついにこんなとこで演奏できるようになったじゃないか、って喜んだのも束の間。

ステージに上がると客がいない。0人だ。

今までも客は少なかった。でも、今日は0だ。正真正銘、どこにも客がいない。後ろの方にいるのは店のスタッフ。スタッフとバンドの ボクたちだけ。

0-spectators

急遽出演できることになったのは、昼のバンドが2バンド共に出演辞退したから。昨日、うちに電話がかかってきて出演が決まった。

で、今日は台風直撃。

楽しい空想

そういうことか・・・他のバンドがキャンセルするはずだ。外はざんざん雨が降って、風もすごい。客は・・来ないわな。

typhoon

責任者の西さんがオレのところへ来て、

「そうガックリ肩落とすなよ。次があるさ。今日は まかない食って帰れ」

西さんが出してくれた まかないのカレーを食いながら、心底寂しくなった。

「なぁ、みんな。今日 客が 0 で、ライブ中止になったのは 台風のせいばかりじゃないぞ。オレたち、どこで演奏しても客が少ない。バンドメンバーより客の人数の方が少ない」

「・・・・・・」

「人気がないんだ。ファンがいないんだよ。熱心なファンなら台風の時だって来るさ」

「そうですねぇ。台風のせいにはできないかも」

レイ・ギャング が言った。

curry-meeting

ボクは、この機会に バンドの今後について話すべきだと思った。

「もっと“展望”がなけりゃ駄目だよ。例えば、音楽の世界には、オーディションというものがある。実力をつけて、そうオーディションに受かれば プロとしての道も開けてくる。ずっと続けたいってことは、プロになるってことだ。アマチュアのままじゃ・・・そのうち仕事が忙しくなって毎日の雑務に追われ、自然にやめなきゃならない日が来る」

「・・・・・」

「うーん。だからカズさん なんとかしてくださいよ。どうやったらオーディションに受かって、プロになれるんですか?」

トモコ・チビ太が 食い下がってきた。

「オレだってわかんねぇよ、そんなこと。だって、プロになったことねぇもん」と言いたいのを我慢して、自分が持ってる知識を総動員して答える。

「う~ん、経験と実力を付けなきゃダメだろ。例えば。海外のミュージシャンの場合だと、ライブは バーやレストランがお客にサービスで提供している。酒や、食事に来てくれた人たちが楽しむためにバンドが演奏する。このクロコダイルもそういうスタイルに近いけど、日本では[チケット・ノルマ制] 多くのライブハウスが 出演者のバンドマンに客を連れて来させるだろ? それじゃ、客を呼べない連中はライブ回数が減る」

「なるほど」

レイ・ギャング が分かりやすく頷いた。

なるほど、と納得する女子の画像

「一方 、イギリスやアメリカじゃ、バンドは演奏がうまけりゃ出演できる。もちろん、オリジナルの曲は演奏できないよ。ヒットチャートで流行ってる曲や、昔から人気のある みんなが楽しめる曲だけ演奏できる」

マコト・クレイジーも横から口を挟んでくる。音楽雑誌を読みまくってるから、そういう知識が豊富なんだろう。その言葉をボクが引き継いだ。

「そうそう。うまくて知ってる曲のレパートリーが多いミュージシャンは毎日でも演奏できるんだ。小さなバーやレストランで、毎日やることによって演奏力や表現力が磨かれてくる。クオリティが上がるんだ。人に見られるってことで、育てられていく」

「それが日本と海外の演奏力の差だなぁ。毎日人前で演奏して腕を磨いた連中と、チケットノルマに苦しめられて、年に数回しかステージに立てない日本人との」

マコト・クレイジーが、残念そうに膝を叩いた。

「じゃあ、あたしたちも そういう毎晩演奏できる店作りましょうよ。あたしたちのライブハウス!」

Ray-Gang という美形の女性ベーシストがやる気になって意見を言っているイラスト。

レイ・ギャングがワクワク目を輝かせて言った。ボクは、

「馬鹿。前にも言ったろ? 自分たちのステージを持つなんて・・ いくらかかると思ってんだよ」

「いくらですか?」

レイ・ギャングは、おそれを知らない チャレンジャーのような不適な顔をした。ボクは、

「最低でも・・・500万やそこらはかかるだろう」

と言ったが・・ ボク自身、全然わかってなかった。

ライブハウスが500万程度で持てるはずがない。でも、中目黒の「ドブ川に沈んだスタジオ」が、月に15万円で借りられたはずだし・・

それぐらいあればなんとか。と、甘く考えていた。

we need money

「500万かぁ・・・1人60万?」

ツッパリ・クミコが言うと、みんな黙っちゃった。

Young people struggling with money issues

でも レイ・ギャング が、

「いっぺんに60万って思わなければいいんだよ。分割。毎月少しずつ貯めていくの。5万ずつ貯めたって・・・1年で60万だよ。やれるじゃん!」

groundbreaking ideas

その言葉に、チビ太が

「そうかあ! スゴーイ。それだ。それなら出来るよ」

と興奮気味に、一人ひとりの腕を掴んで 喜びを爆発させた。

make the impossible possible

とことん脳天気な奴らだ。そこが救われる面でもある。客席0の失敗で影を落としていた ボクの 心のもやもやを吹き飛ばすような爽快感がある、コイツらには。

「フフ。 月5万って言ったって、口で言うほど楽じゃないぞ」

ボクが笑うと、レイ・ギャングが

「大丈夫ですよォ。見ていてください、カズさん。みんなも、一緒にやって貰えるでしょ、積み立て」

嬉しそうにみんなを見渡すと、芝居出身者たちだけが

「はーい!!」

と、元気よく手をあげた。

反対にミュージシャンたちは渋い顔で。

ドラマーは「金ないし」と、ボソッと呟いて下を向いた。速弾きヒカル は

「うーん・・」

と唸って無言の否定をした。ボクは

「せめて月2万ぐらいの積み立てにしようよ」

と、妥協案を提示したが

「いや、そりゃ自分たちが毎日演奏できる店なんて作りたいけどさ、積み立てって・・俺 ギター買ったばかりで文無しだしさ」

と、マコト・クレイジーが言い、男のメンバーがほとんど否定したところで話は終わった。

I do not want to give up

「えー、諦めるの? なんか、やだなー」

溢れる熱血の レイ・ギャング が抗議するのを「まぁまぁ」と、ボクは なだめた。

マコト・クレイジーは、重くなった空気を緩和するため、海外のライブハウス事情を また話し始めた。

「向こうのミュージシャンはさ、ヒット曲ばかり演奏するわけじゃないよ。人気が出てきたバンドはヒット曲の合間にちょろっと自分の曲も演奏できるの。そうやって少しづつ自分の曲を演奏できる回数が増えていった頃デビューするんだ」

「そうかぁ・・・カッコいい!」

ヤスコ・クイーンは興奮して飛び上がった。

何がカッコいいのか分からないままに、その場の雰囲気は盛り上がり、

「やっぱり自分たちのライブハウスが欲しいねー」

と、みんなで楽しい「空想」を話し合ったんだ。

ところがーー

それは空想では終わらなかったんだ。

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