SONG-47 【失敗は改良して、前へ進め】こぶし少年

SONG-47main-visual-passion-hidden-inside 内に秘めた情熱。拳を突き上げる画像。 タイトル 「SONG-47 こぶし少年」
うまくいかない原因を分析し、修正する

人が何かを思いつく→やってみる→うまくいかない

最初から大成功することは少なくて、大抵の場合失敗する。思い描いてたのと違う。こんなはずじゃなかった・・

人生あるあるだね。

challenge and fail

ビジネスマンが丸太の橋を渡っている。真ん中あたりに落雷があり、木が折れそうになり、ビジネスマンがバランスを崩し落ちそうになっている画像。

反対に、ギャンブルなどでは「ビギナーズ・ラック」というのがあって、最初に大勝ちすることもある。でも、大抵その後に負けて負けて大負けして「最初に勝ったことを後悔する結果に終わる」

ビギナーズ・ラックも怖いけれど、最初の事業で大当たりするのも なかなかに怖い。

この世の中は、山あり谷あり。いいことばかりも続かないし、悪いままで状態をほったらかしていれば そのままだけど、改善すれば成功を掴めるものだ。

Beginner's rack

ギャンブル場で勝っている画像

だから「最初はうまくいかなくて当たり前だ」と思っていた方がいい。

うまくいかなくても「プランが良ければ」改善して必ず思い描いた状況を実現できるからだ。改善しても一向に良くならないのなら、元々のプランがダメなのだ。

今回、ボクは「原宿 歩行者天国をライブハウスにしちゃおう」というプランを立てた。

そのプラン自体には自信があった。絶対にうまくいくと思った。

ところが、実際に歩行者天国で演奏すると、全くウケない。お客が集まらない。

一瞬混乱したが、プランには自信があったので、「なぜうまくいかないのか」分析し、改善し、段々理想に近い、思い描いていた状況を作り出すことに成功した。

Analyze, improve, and get closer to your ideal

その方法を今回からのストーリーで解説したい。

人が何かを思いつく→やってみる→うまくいかない を、うまくいく! に改善する様子は、きっとあなたのヒントにもなるはずだ。


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィール を見てね

Let's create a fun future
目次

SONG-47 こぶし少年

結局、初日は惨敗だった。

打ちのめされて、スタジオに帰ってから大ミーティング大会を開いた。

「やっぱりさ、皆バラバラに勝手なこと演奏してるって感じだからさ。もっとリズム合わせていこうよ」

「そうだねぇ。まずリズムだよ。リズム」

Rhythm

ドラムのスネアを小気味よく叩いている画像。

トミノスケのタイコは、どんどん早くなってっちゃうし。全員それにつられて、ワーッと走っていっちゃう。

なぜ早くなるかというと、それはヘタだからだよ。

ヘタは「音のスキマ」を楽しめない。その「空間」が恐い。

だから、スキ間が出来ると、すぐ誰かがそこを埋める。それにテンポを早くしていけば、スキ間はできづらいからね。どうしても 走った演奏になっていっちゃうんだ。

Busy

太鼓を叩く者、サンバを踊る者、子供1人に向かって左右から怒鳴る両親の画像。

てことは、うるさいってことさ。スゴく耳障り。全員でガチャガチャ、音をかき鳴らしてるだけだから、音楽でも何でもない。

歌なんか聞こえやしない。おかげて声は強くなったけどね。

当たり前だ。あの大音量と戦ってたらさ。イヤでもロックボーカリストが出来上がる。

次の週は———雨で、歩行天中止だったのかな?

うん。ここぞとばかり、徹底的にリズム合わせの練習をした。

ドラムとベース、ギターとキーボードっていうふうに。2人づつがまず合わせて、徐々に全員が参加していく。

リズムの「表」と「裏」を取る練習とかね、やる事にはこと欠かないよ。

素人さんたちだから。

Let's match the rhythm バンドのメンバー同士がリズムを合わせる練習をしている画像

あと、客寄せ用の「オープニングテーマ」を作ったんだ。

「いきなり演奏するより、まず人の気を引いて立ち止まらせようよ」ってね。

「ジャーン」って白玉でコードを伸ばして、音と同時に全員がパッと散らばるの。ダーッ、と駆け出す。

あるいは「ティン、コン、ティン、コン」 オルタネイトピッキングで、客がよってくるまでずっときざんだりして。

そういう練習を動き付きでやった。公園で。

ラジカセに練習テープを吹き込み、それを鳴らしながら「ウォリャー」とかキメのポーズを作る。フォーメーションで、この音の時、誰々はどこに移動する、みたいにね。

A band with a cool pose

公園にいる人には笑われたけど、カンケーないさ。そんなこと。

「スコーピオンズ」っていうバンドのビデオを見ながら、皆で「うわぁ、スゴいね。誰かのヒザの上に乗って弾いたりするんだあ」

ちょうど、運動会の人間ピラミッドみたいにね。人の上にのぼって弾く。

「マコトはさぁ、ギターとか回してみたら?」

ストラップごと回すのが、海外でハヤっていたし。

実際やってみたら「ガシャーン!」

ストラップ・ピンが抜けて レスポールが飛んでった。 砂利の上を自慢の「タバコ・レスポール」がガリガリガリ・・ 

サーフィンみたいになったから、擦り傷がついたけどボディーは助かったけどね、マコトの顔は真っ青になってた。

surfing-with-Guitar

「太くて長いロック・ピンで ネジがぬけないようにしなきゃ駄目かぁ」

懲りないヤツ。さすが「マコト・クレイジー!」

・・・・そういう準備をして、再びストリートに出たんだ。

まあ。そう簡単には変わらなかったけど、それでも徐々にね。ポツ、ポツと立ち止まる人が出てきた。

「いいか。1人だけでいい。1人が1人、客をつかまえろ。1人だけに向かって演奏しろ。1人だけの目をずっと見つめて演奏するんだ」

ボクが言うと、女のメンバーは張り切った。

「よォーし。あたし、あのシマのシャツ着た男の子にするよ」

「じゃあ あたしは、あの坊主頭の少年担当!」

「自分の客を100%納得させるんだぞ。よっしゃ、行け。GO !」

ダーッと駈けてって、ヘタくそな割りに情熱のこもった目で、自分だけを見つめられると、何だか自分のためだけに演奏してくれているように思えてくる。悪い気はしない。

その姿を見た第三者の客も、思わず 「熱い2人の関係」を面白がって見たりして。

そんな所から、客は食いついてきた。

Band-Members1 ロックンロール・ジーニアスのレイ・ギャングとトモコ・チビ太のストリート ライブパフォーマンス
ロックンロール・ジーニアスのレイ・ギャングとトモコ・チビ太

ボクは集まって来た客を少しでもつなぎ止めようとして、ヤマハの箱型スピーカーにのぼったの。

それを見ていたマコトが真似して反対側のスピーカーに飛び乗る。

「ウォーッ」という拍手がわき起こった。

A man leaning on a box speaker and playing the guitar
ロックンロール・ジーニアス Macot Crazy

よしよし、受けてるぞ。マコト・クレイジーに合図すると、あいつも笑った。

爆音とケンカするように、ボクはシャウトする。

情けないことに、すぐノドがつぶれて声が出なくなった。

発声法もへったくれもないから。ただバックの音に負けないようにシャウトするだけだから。

でもね。ボク、これで発声を覚えたんだ。

声がつぶれて。「どうしよう」と思ったけど、とり合えず歌うしかない。

他に歌ってくれる奴はいないし。

1人1人、自分のことで精一杯だから。持ち場を死守、みたいな。

jumping vocalist
ロックンロール Kaz と レイ・ギャング

無理して声を出そうとするんだけど、「ハー」ってかすれて、声にならないの。

しょうがない。ノドに負担をかけないように。ノドを広げて、炎症を起こした箇所に触れないように空気を出す。

実はこれが腹式呼吸の基礎なんだよ。長く息を吐く、発声の練習の意味がやっとわかった。

最初はハッキリした声にならないから、心もとないんだけどね。

それから毎週ストリートやって帰ってくるとさ、腹が痛い。

「どうしたんだろう?」

と思ってたんだけど、気づいた。

「アッ、ずっと歌ってたからだ。そうか、腹から声を出すってこういうことなのか!」

発見だよ。

人間の体って、まるで大きな袋。長いチューブ。腹の袋から、いっぱいに詰まった空気を長いチューブに向かってしぼり出すんだ。声を出すって、歌うって、そういうことなんだよ。

ねばりのある、太い声が出るようになってきた。

vocalization method

レパートリーは5曲しかなかったけど、1日3ステージ。曲の順番を変えながら、さも新曲のようなフリをして切り抜けてたの。冷汗ものだけどね。

「あっ、あの子、又来てるよ」

トモコ・チビ太が気づいたのかな? 気弱そうな少年が、次のステージも見に戻ってきてくれたんだ。

「あっ、また来てる」

「ほんとだァ。うれしいね」

何度も来る常連になってくれたの。常連第1号。

そのうち皆が気にして、その少年を捜すようになってきた。

「きてる。きてる。」

「ホントだ。また、こぶし 握ってるよ」

ボクがシャウトしながら、客に言ったんだよ。

「イェーイ。ノッてるかい? 恥ずかしかったら、別に無理しなくていいからさァ。でも 楽しいと思ったら、“心の中”だけでも そっと こぶしを振り上げてくれよなーッ!」

そしたらね、少年が反応してくれたんだ。大人しい子だよ。シャイな少年。でも彼、精一杯自分の心と戦ってくれた。

両方の手を“ぎゅっ”と握りしめて、その手を振り上げるんじゃなくて、下にね。突き下ろしてた。曲に合わせてずっと。

hidden-passion

体が小刻みにゆれて、顔はぎゅっと口を結んで、紅潮している。表情は乏しいけど、充分楽しんでくれてるのが解るよ。

「こぶし少年」

ボク達は、彼に敬愛を込めてそう呼んでいた。

「ジーニアス」を認めてくれた、はじめてのファンだからね。うれしくて いつも彼の姿を捜していたんだ。

The-boy-who-became-our-fan-for-the-first-time
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