SONG-65【誰もが業界人 気取り、有名人の知り合い。だからどうした?】バブル到来

Bubble economy arrives タイトル 「SONG-65 バブル到来」 美女2人を侍らせ、葉巻を燻らす成金風の男の画像。 テキストメッセージ 「誰もが業界人気取り」
誰を知っているか、より「自分がどう生きるか」

コネクションというものを大事に考えすぎ

誰と知り合おうが、たくさんの人間関係を構築しようが、魅力的じゃない人には良い情報や仕事は入って来ない。

ところが、自分を磨かず「有名人を知っているからうまく行く」と思う人は多い。勘違いだ。

1990年代のバブルのあの時代ーー

とにかくそういう人が多かった。

酒を飲む場所で「有名人の知り合いだ」とか「業界人」だとか「TVに出してやる」なんてチャラい話をする奴が増えていた。そして、そういう話は発展せず「口だけ」「その場だけ」のタワゴトで終わる。

一番大事なのは、「自分が何を積み上げているか」だ。

90%以上、自分の力で、実力でやっている時にだけ「思いもよらない助けが入り」物事は好転して行く。最初から人に助けてもらおうとする計画は、ほぼ失敗に終わる。


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィールを見てね

once more from the top
目次

SONG-65 バブル到来

once more from the top

その晩、ホテルでパーティーがあった。

会場の片隅には、楽器やアンプがセットされていて、演奏したい人間がいつでもプレイ出来るように なっている。

そこでは 凄いことが行なわれていた。

誰かが座って、ピアノを弾き出す。

play the blues

と、いきなりその場はタイムスリップして、ジャズが生まれた頃の ピアノバーに早変わりする。

オーバーな表現でも何でもないよ。空気がね、本物のジャズ。

 
そのピアノサウンドが どんどんくずれてきて、ハネたラグタイムになってさ。それにギターが入ったり、ベースが入ったりして、リズムが変わり、ブルースになって。

OLD MUSIC

ドラムが入れ代わると、ギターがリフを弾きはじめ、大げさなハードロックがはじまる。

何気なく女のボーカルが歌うと、4オクターブぐらいのレンスがあって。太い声からハイトーンまで、ド肝を抜く声を出す。

「アマチュアなんかじゃない。コイツら、すぐにでも世界のメジャーに行ける 一流のミュージシャンじゃな いか!」

まるで音楽の歴史を旅してるみたいにさ。どれも空気が本物なの。本物の世界を作り出せる本物のミュージシャンたち・・・・

A journey through the history of music

日本人は、もう ビビっちゃって、誰もセッションしようとしないんだ。
たまに調子に乗って飛び入りする奴もいたけど、みじめなもんだよ。勇気の割には音がね、まるで違う。
まったくどこまで昇っても、上には上がいる。きりがないような気がした。

「ああ、ここにシフトの連中がいればな」

※シフトについては、こちら

日本人だって負けねぇぜって、ガツンとやりたいけど、残念ながらボクたちじゃ駄目そうだ。
インプロビゼーションするためには、いかに多くの音をコピーしてきたか。それに尽きるよ。

きっと連中は、朝も昼も夜も 音楽漬けの日々を送っているんだろうな。クラシックや、ジャズの基本的な技術を身に付けた上でロックやポップスをやっている懐の深さを感じた。

次の日、ホテルをチェックアウトして、バスは静岡に向かった。

ヤマハが「つま恋村」っていう、一大レジャー施設に招待してくれたの。
目的は、各国の参加者の労をねぎらい、日本での思い出づくりをしてもらおうってことなんだけどさ。
日本人もついて行った。

tsumagoi

ヤマハの「アスレチック保養施設」嬬恋村

シーズンオフだから、人は少なかったね。 アスレチック・テーマパークという雰囲気で、アーチェリーやゴーカートなんかが だだっぴろい敷地にぽつん、ぽつんと点在していた。

夜になると、またパーティーがあって。ヤマハの社長だか会長が手作りしたごちそうが山ほど出て来たんだ。本格的フランス料理ってやつだよ。

ボク、そこでベロベロに酔って。何かやらかしたみたい。 多分大声で歌ったのかな? 

ヤマハのスタッフに両腕を抱えられて、強引にパーティー会場から連れ出された。

A drunk man is taken out of the venue

ホテルの部屋まで連行されるように連れて行かれて

「なんなんすか。オレまだパーティー会場にいなきゃ。オレがいなけりゃ始まらないっての!」

呂律の回らなくなったボクが言うと、ヤマハのスタッフは、

「いいから。もうわかったから。カズは 今日は寝ろ」

「いやだー!! オレたちが主役だよ、って言ってくれたじゃ無いですかー。主役がいなくちゃパーティー始まらんでしょ」

凄い挫折感に、酒の力がなきゃ どうしようもない精神状態でさ。荒れてたんだ。でも、ヤマハのスタッフが静かに言った言葉に、ボクは凍りついた。

「もう終わりだよ。カズ すべて終わったんだ。大人しく寝ろ」

party-is-over

静かに酔っ払いを諭す男のイラスト画像。

手のひらから こぼれていく砂―――

ボクは恐いから今持っているものを必死で守ろうとする訳。やっと掴んだ栄光。だよな?

でも、どんなに強く握りしめても いや、強く握りしめればしめるほど こぼれていくんだな、未来が。

サラサラサラ・・・

英語圏の音楽用語で、「once more from the top」という言葉がある。

スタジオなどでミュージシャンが演奏している際「曲のあたまからもう一度やろう」という意味で使われるが、翻って「もう1度、やり直そう」「もう一花、咲かせようぜ」ってニュアンスで使われることもある。だから、

「もう一度、もう一度頑張ろうぜ。やろうぜ。オレ達。ここまで来れたんだ。このままフェードアウト したんじゃ寂しすぎるぜ。オレ達なら出来る。また、やろう 一から」

メンバーを集めて、自分自身に言いきかすように言ったんだよ。

once more from the top

「ウン」

「そうだね」

「やろう、やろう」

全員がその場では うなづいてたけど・・もう駄目だった。

みんな、心ここにあらず。上の空って感じで・・

例えば、外国人の「神技レベル」の音楽プレイに心酔しすぎて。

それは、アメリカやイギリス、ヨーロッパの連中のレベルが違う、ってだけじゃなくて。
例えばフィリピンから来たバンドなんかでも、フィリピンの「外国人向けのクラブ」みたいなところで毎晩演奏してる連中だから、とんでもなくうまい。もう、思わずため息が出ちゃう程だ。

ヤスコ・クイーンの目も完全にファンのようなハートマークになっちゃって、

「スゴいですよねぇ、外国のバンド」

なんて言われると、 ボクはイライラして。怒って、

「馬鹿、感心してどうすんだよ。あいつらと同じ位置まで登るんだ。また猛練習すれば、スゴいスピー ドで追いつけるさ」

Angry Man

焦っていた。なぜ? なぜだよみんな。あいつらに土下座状態でいられるんだ? 同じ土俵で戦わなけりゃ、今後プロとしてやって行くことなんか出来なくなるぜ。何落ち着いちゃってるんだよ! ここまで来たからいいや、って気抜いてんじゃねーよ。なぜわかってくれないんだ!

仲間と、メンバーと。あの時のボクは全然意思の疎通が出来なくて。思いを共有できなくて。それは、ボクがおかしくなってたのかもしれないけど。みんなが落ち着いて危機感が薄いのが嫌だった。すごく孤独を感じた。「言ってもわからねーんだな、お前ら」って引きこもりたい気持ち。

早弾きヒカルもマコト・クレイジーも また雰囲気がおかしくなってきてる。

「まぁ外タレに挑むんなら、プレイの腕もっと磨かないとな」

マコト・クレイジーが言うと、新しいドラマーは

「いやいや。そんな暗くならないで パーティーを楽しもうよ、ハハハ」

って感じ。

新しいドラマーは、やけにC調になって ハシャいでるけど、まるで地に足がついていない。

話が通じなくなったボクは、もう誰とも話さなくなった。

広いつま恋の敷地内を、ボクはメンバーと別れて一人で歩いた。とぼとぼ・・いつまでも歩いた。寂しくて、悔しくて 孤独なあの気持ちをどう表現すればいいんだろう?

チャンス、音楽、グループ、自信・・・・・ 音がするんだ。 サラサラと積み上げたものがこぼれて、消えていく音が。

Fear of losing what you've gained

誰も彼もが業界人 気取り

時代的には明るい時代だった。みんな浮かれてた。バブルだもの。バブルに突入したんだもの。

でも、バブルなんて「どこがいいんだ?」気持ち悪い。

ボクたちには この時代の空気がまったく合わなかった。

誰もが業界人気取り。カラオケスタジオが流行って、レンタル・ビデオが大ブーム。駅前には何軒かのレンタル・ビデオ店がある。

あるビデオ・レンタルフランチャイズ店のオーナーに呼ばれて

「お前らを友達の業界人に紹介してやるから曲持ってこい」

と言われて。
なんか偉そうだな、と思いながらも「せっかく好意で言ってくれてることだし」と デモテープ持って行くでしょ?

なんか大袈裟なオーディオ・ルームに通されて、あの頃 そういう「ホーム・シアター」みたいなの流行ってて。ボクらの持って行った カセット・テープ流すわけ。腕組みしちゃってさ。「ふむふむ、お前ら ここはいいけど あれだな。ここのアレンジはもっとこうして・・」とか言ってくるわけ。

あー、そうですか。と聞いてるけど、なんだかなーって気分になるわけよ。だって音楽業界の人じゃないし。なんで専門家みたいな顔して ちょっと的外れなこと言うのか?

そういうボクの表情を見抜いたのか、

「いや。俺さぁ、たくさんのレンタル ビデオとか CD 扱ってるだろ?だから耳が肥えちゃって、わかるのよ。大衆の聴きたい音楽が」

とか言っちゃって。

知り合いの業界人に「デモ・テープ」渡すって。でも、そういうので話が進むなんてこと、まぁ ないからね。業界人「気取り」したいだけ。なんちゃって業界人。

The era when everyone is a celebrity

うちのバンドの スタッフが夜中に電話かけてくる。

「カズさん、今 レコード会社のディレクターと知り合って飲んでるんですよー」

夜中の2時、3時だぜ? 電話口からでかいユーロビートが流れてきて。大嫌いだよ、ああいう音楽。

「なんだよ、ディスコで踊ってんのか?」

ボクの言葉に スタッフは「ツボ」にハマったみたいで。

「ガハハハ。なにが ディスコですかぁ。古いなぁ。今はクラブって言うんですよ、六本木のクラブにいるんですよ、ク・ラ・ブ! ガハハハ」

「オメェ、うるせーよ。今何時だと思ってんだ。バカ!」

頭きたから電話口に怒鳴ったらさ、

「あぁん? チッ! なんだよ、人がクラブで知り合った業界人 紹介してやろうと思ったらさぁ、カズ おめぇ今、レコード会社決まらなくて困ってんだろ?」

ガチャン、と電話切ってやったよ。再びかかってきたけど、もう出るもんか! あのスタッフ クビだ!

fight over the phone

酒飲むとこで「有名人の知り合いだ」とか「業界人」だとか「TVに出してやる」なんてチャラい話をする奴が増えてほんと気持ちの悪い時代だったよ。

「バブルの頃は良かった」なんてぬかすヤツがいるけど、そんな奴は チャラいヤツだよ。大嫌いだ、あの時代! 儲かった金で、アメリカの有名な建物や施設買いまくったから怒りを買って、後でアメリカに酷い目に遭わされたじゃないか。

そういうことすれば仕返しされるんだよ。金儲けて、調子に乗って好き勝手したらさ。

誰々を紹介してやる、なんて話をする奴は心底 軽蔑して睨んでた。顔面パンチ入れてやりたい。 

「誰々を知ってる」って自慢するヤツ、信用しない。お前はどうなんだ? ってこと。有名人を知ってるより、お前の生き方はどうなの? 誰に知られてんの? っていう方が大事だ。ボクは「kaz を知ってる」って言われたい。有名人なんて知ってても自慢にならないと思ってる。

あと友達がさ マンション2個も3個も持って マンション転がししてたり。不動産王になるとか言って浮かれてたけど・・・間も無く地獄を見るのよ。そういう時代だもの。

バブル・・・ あの 土地転がしの、クソの時代が、ボクたちの未来を根こそぎ 奪っていった。人も音楽も時代も・・・ すべてが浮ついていた。ボクとは 絶対に合わない時代ーー

ロックよりユーロビート。あるいは タテノリ バンド か。1、2、1、2、ンチャ、ンチャ、ンチャ、ンチャ・・ スカのビート。誰もが先を争って生きてる時代のリズム。

いずれにしても、

ここらへんから、何をやってもうまくいかなくなってきたんだ。ボクたち。

A man walking around lonely
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