本気で思ってないなら、それは夢じゃない。空想だ。
宝くじで3億当てるなんてものは夢にすらなっていない。たわごとである。本気に手が届きそうで届かない。そういう夢は自分でわかるはずだ。
もしかすると、届くかもしれない。やれば、なんとかなるかもしれない。そう思った時、人の心には希望が芽生える。
というのが今回の物語のテーマ。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
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SONG-7 航空大学校
あんな高校に入ったのに、ボクはまだ どこかで自分の未来に夢を見ていた。
いや、違うな。空想だ。ボクはかなわない夢、バーチャルな仮想現実の住人になろうとしていた。
ここは、とても重要だから聞いて欲しいんだけど「かなわない」と思っていることは絶対にかなわない。本気で思っている夢の、ほんのわずかだけ実現する。
本気になっていない人が語る夢は虚しい。子供が
「ボク、将来ウルトラマンになる」
と言っているぐらいとりとめがないからだ。ウサイン・ボルトより早く走る、と願うのは夢だろうか? ほとんど多くの人にとっては現実味の無い話だと思う。
走るということに関しては遺伝子が強く影響するからゴリラとチーターでは「走る」意味において、そもそも能力の差を縮められない。
同じ人間でも日本人と黒人のスプリンターとしてのポテンシャルに開きがあるのは明らかだろう。日本人はウサイン・ボルトのようにはなれない、と言ってしまうのは語弊があるとしても、ボクの言わんとしていることは理解してもらえると思う。
つまり人それぞれ。生まれ持った資質が違う、ってことだよ。
努力しなくてもある程度出来ることがある。
どんなに頑張っても出来ないこともある。
ここに、やりたいこと とやりたくないことが絡んでくる。
得意でも、あまりやりたくないこと。その道の才能はないのに、なぜか大好きで関わってしまうこと。この組み合わせで、その人の未来が輝かしいものになるのかどうか決まる。
どうせなら、あんまり頑張らなくても出来ることで成功を目指せ、ってこと。
ただね、やりたい道にこだわるなら方法がある。
サッカー選手になる才能はなくても、サッカー選手が最高だと認めるグッズは作れるってことだよ。センスのいいウェアやボールを作る才能に恵まれていれば、その道で大成することもできる。あるいはスポーツ選手の体のケア、マッサージなどで世界的権威になった人もいる。
好きなことと得意なことをどう組み合わせるか。
自己分析と自分の持っているものをどう活かすかで、その夢がかなうかどうかが決まるんだ。自分がやりたいことだけを強引に推し進めて、能力も、合っているかも無視するのは神様にわがままを言っているのと同じことなんだ。
そんな夢はかなわない。
反対に、自分の得意を「好き」とじょうずに結びつけて夢を描けば その夢はかなうよ。
「得意」をうまく使いこなすことが夢実現の秘訣だね。
得意──
簡単に出来るってことは、その道が向いてるってことだ。努力しなくてもそこそこ出来ることを目一杯頑張れば、その道で成功する。・・・かもよ。
実現できる夢だけを追う
このように、自分の能力も顧みず、「出来ない夢を夢だ」と言う人がいる。無駄な努力は自分の心に挫折感だけを植え付けていく。
もしかすると、届くかもしれない。やれば、なんとかなるかもしれない。そう思った時、人の心には希望が芽生える。火がつく。熱く心が燃える。
そういうものが本当の夢だ。たあいもない、宝くじで3億当てるなんてものは空想にすらなっていない。
たわごとである。
本気に手が届きそうで届かない。そういう夢は自分でわかるはずだ。
大谷翔平が好きだからと言って、今まで野球もやったことないヤツが30過ぎてからメジャーで活躍することを目指す、なんて漫才にもならない冗談だ。単なる思いつき。
空想ばかり話す人とは会いたくもない。時間の無駄だ。本気の自分の夢を追いかけている人とは話して面白い。刺激を貰えるんだ。
手が届きそうだからといって「小さな夢」ばかり追いかけろと言っているんじゃないよ。実現までに何十年もかかる夢だってあるだろう。
それでも、自分の能力、環境、財力、人脈を冷静に分析して「この夢はかなうのか?」と問いかけるべきだ。自分を推し量るのは多分に「才能」のいることだが、この夢は自分に絶対かなえることができる、そう思った夢にだけ突進しないと永久に夢という幻を追いかける「だけ」になる。
かくいうボクも「空想の家」の住人になりかけたことがある。
航空大学校
高校の時、ボクはパイロットになりたかった。
───ね? こういうのが空想。
あんな高校に行ったボクが目指す職業じゃない。自分の現在位置をまるで把握できてない。ナビが壊れてる。
本当はおやじみたいに成りたかった。おやじはカッコ良かった。タンカーの機関長の制服。船長を目指す途中で目が悪くなりコース変更。エンジニアとしてトップの機関長になった。
そでの所に金色の4本線が入っていて、タラップから降りてくる。子供の頃のボクには「外国帰り」おー、七つの海は俺のもの、みたいな「ひみつのアッコちゃんのパパ」みたいなイメージがふくらんでいたんだ。
後でおやじに聞いたら、船の底の方のエンジンのうるさい所で、オイルと汗にまみれていたらしい。船長は船の上、機関長は機関室で指揮をとるわけだから。
「船はもうだめだ。海洋産業なんか目指すもんじゃない」
てなこともおやじは言うもんだから、えー、そうなの? とかなり腰砕けになったけどね。でもあの制服はかっこいいな、と思った。格好しか目に入らないところが馬鹿なガキ丸出しなんだけど、とにかくボクはあの制服が着たかったんだよ。でもおやじの口癖は「商船大学には行くな、もう未来がないから」って・・・
しょうがない、で考えたのがパイロット。同じような制服着て、外国帰り。子供の頃にテレビで「アテンションプリーズ」っていう航空業界のドラマをやっていて憧れたってのもある。いろんな国の香りが混じってる空港の匂いも好きだ。OH ! インターナショナル。
よし、パイロット目指すぞ。
高校2年からボクは進学クラスに入った。そんなたいそうなもんじゃない。あの馬鹿学校で唯一の「大学進学を目指すクラス」だ。とはいっても二流三流どころか五流の大学にやっと入れるかどうかって程度だよ。せいぜいクラスの半分ぐらいが、そういう一応大学と名がつくどこかの学校にもぐりこんだ。
そんな大学、行きたくもないわ! このゴミ溜めに入れられた怒りは高校卒業で断ち切らなきゃ。三流大学行くぐらいなら中卒の方がマシだ。
そういう思いで勉強しなおした。
中学でわからなくなった所にまで戻って自分なりにガリ勉したよ。くそっ、こんな所から抜け出してやる、と思ってるから勉強も苦痛じゃなくなってきた。クラスで1~2番の成績になった(それでも一般の高校に比べれば低レベルだろう)
英語はつまづいた所が認識できるようになって、だいぶ面白くなってきた。古文とか歴史も、それなりに理解しはじめてきたんだ。でも───
パイロットって理数系。物理、数学、苦手。頭に入ってこない。そういう部分のセンス、ボクには無かった。エンジニアのおやじの息子なのに。チンプンカンプン。やばい、体が拒否反応を起こしてる。
高三の夏休みが終わり、蒲田の専門学校でパイロットになるための試験があった。「航空大学校」の入学試験が。航空大学、じゃないよ。航空大学校っていうの。
普通の大学入試より半年も前から試験が始まる。なぜなら筆記試験、適性試験、実技試験と。1次、2次、3次試験まであって振り落とされていくからね。試験期間がとにかく長い。3次試験は仙台の飛行場まで行って空に飛び立ち、実際に空の上で操縦桿を握っていろいろ質問されながら操縦するみたい。
もともと航空大学校は、飛行場があるような地方の..広い所に学校があるから、筆記試験会場として東京の専門学校の会場を借りて実施されたんだ。
で、試験だけど。
配られた問題をパッと見て「終わった」と思った。こりゃ全然駄目だ、話になんない。小学生が大学受験してるようなもんだ。それでも英語は多少、問題と格闘してみた。物理と数学は何を質問されてるのかもわからない。
休憩時間に考えた。
こりゃ、十年かかっても、この試験には受からない。他の連中と、頭の回路がボクは違うぞ、ってね。それでも、ない頭を振り絞って最後まで試験を受けたよ。時間が余ってしょうがなかった。
終わって。
まだ夏の名残のある夕日の中、ぞろぞろと校舎から出てくる人の波に押されて、ゾンビのように重い足取りで駅に向かった。ホームで電車を待ってても自分の頭の悪さに絶望した。先が見えたって感じ。
ボクはこうやって試験に落ち続け、どんどん不利な場所に追いやられていくのかなぁ・・・ 人がやりたがらない仕事に就いて、朝から晩まで働いても貰える給料はわずか。楽しい未来は想像出来なかった。人ってこういう時、人生をあきらめたり悪いことに走ったりするのかな。
暗いトンネルの向こうから風が吹いてきた。
小さな灯りが見えて、近づいてくる。
風はどんどん強くなって、ボクの顔に強く当たり髪をかき乱した。電車の先頭が見える。風が額を冷やして絶望の炎を一時的に吹き消した。
そして、心の声が聞こえた。
「このままじゃボクは駄目になる。どこかで、この流れを断ち切らなきゃ」
そう思った瞬間、稲妻のようなアイデアが降り注いだ。
そうだよ、やり直そう! イチからやり直すんだ。生まれ変わって自分だけで生きていこう。今までのすべてを捨てて。
ボクのことを知るヤツが、誰もいない場所でやり直すんだ。
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