SONG-77【魑魅魍魎の音楽業界】さらば!中島社長

SONG-77-main-visual-Farewell! President Nakajima タイトル 「SONG-77 さらば!中島社長」 つるんとした顔立ちの怪しい中島社長のイラスト画像。
悪い状況を打破するためには

状況を変えること。

大成する経営者になるためには 3つの T が必要と言われる。3つの T とは、

「大病」「倒産」「投獄」

のこと。

緊急入院して生死の境を彷徨い、やっとの思いで危機を乗り越えベッドの上で天井を見上げるだけの日々になった時。初めて過去と未来を考える。

倒産して一文無しになって、信頼していた人に裏切られたり笑顔を向けてくれていた人に「鬼の形相」で睨まれたり、そっぽ向かれたりした時。本当に必要な物、必要な人が見えてくる。

多くの人が経験しない「逮捕、投獄」も、心が研ぎ澄まされる。牢屋に入った人を、会社も近所の人たちも敬遠するだろう。もう、誰にも相手にされないかもしれない。自分のことを知らない人が多い街に行ってやり直すしかないかも。

このように、究極の選択を迫られないと 人間なかなか変われないし状況を改善できない。

Serious illness, bankruptcy, imprisonment

要は、今の悪い状況を変えるには

1)今までの人間関係を断ち切る

2)引っ越しなどをして、人間関係をリセットする

つまり「人間関係のリセット」以外に事態を好転することはできないということだ。

今回のストーリーは、そういう話だ。


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィールを見てね

目次

SONG-77 さらば!中島社長

電話があって。六本木の事務所に呼ばれた。
入るなり、ジミー木場 さん凄く怒ってる。

「フザけやがって! 中島のヤツ、俺におまえらから手を引けって言ってきたぞ。どう思う?」

「えー、冗談じゃないよなぁ」

トミノスケが顔をしかめたので、他のメンバーも口々に不満を解き放った。

that's enough!

「オレたち、ジミーさんとやってきたんです。中島 社長の言いなりになんかなりませんよ」

ボクが言うとジミーさんも、

「だろ? そう言うと思ったぜ。・・そうか、それなら話が早いや。いや、あいつ 中島の野郎な、 俺から多額の金を借りたままで、バックレてやがるんだ。それを俺がつついたら、お前らまで もう来させないって言うからさ。くそ。どっちが悪いんだか 、わかってんのか あいつ」

中島 社長の所にいる新人歌手のデビュー曲を、ジミーさんに依頼したんだって。ジミーさんは宇崎竜童か誰かに作曲してもらった。

そのギャラの立てかえ分を、中島 社長が踏み倒そうとしている。っていうのが事の真相らしいよ。

「中島 社長が発掘した」という その新人・・ ボクも会ったことがある・・というか 大喧嘩したことがあるんだ。

big fight

以前 話した「中島社長と待ち合わせたら、 長時間も待たされた挙句、酒の匂いぷんぷんさせて打ち合わせに来た」というエピソード覚えてるかな? あの時、この新人が同席したんだ。

こっちは待たされ続けてキレそうになってんのに、その新人。偉そうにふんぞり返ってドカッ、とボクの前に座った後

「この人たち、誰っすか?」

アゴをしゃくって面倒くさそうに言いやがった。

怒りの炎が頭突き抜けて、青白くなった顔のボクは、

「さぁ、誰だろね? もしかしてお前の先輩なんじゃない? ふざけた態度で挨拶も無しだから、テーブルひっくり返そうかと思ってるとこなんだ」

と睨んでやったら少し身構えて、

「なんなん、この人・・コワ」

と、スタッフに助けを求めた。

battle

慌てた中島 社長が、

「まぁまぁ、そう凄まないで。いやー、今日 彼をラジオに出演させた後、テレビ局のディレクターと打ち合わせたら思いの外 伸びちゃって・・すみません」

「へー、それでコイツも交えて酒飲んでたんですか」

トゲのあるボクの言い方に新人が反応した。

「コイツってなんだよ!」

「まぁまぁ・・2人とも落ち着いて」

スタッフと中島 社長が必死にボクと新人の間に入って止めるほど、一触即発の空気に変わっていた。いつでも OK って感じだよ、こっちとしちゃあ。そうでもしなけりゃ、待たされた苛立ちが収まらない。

stop a fight

「いやー、ごめんね。ごめんね kaz くん。彼、見た通り ロックの雰囲気でやらせてもらってるんで。でもホラ、ここは・・先輩たちにちゃんと挨拶しないと」

中島 社長に促された新人は、渋々

「ちわっす! この事務所でボーカルやらせてもらってます ⚪︎⚪︎デス」

と挨拶にもならないような挨拶をした。「しょーもな」と思って睨んでたんだけど、新人の方が下手に出てきて色々話しかけてくるから、こっちも「いつまでも怒ってちゃ大人気ないか」と思って なんとなく話してそこそこ打ち解けた。

「いやー。でも、コイツすごいんですよ」

と、スタッフが新人を褒めてくる。

young man with a Foolish proud attitude

「ラジオでも ロックな感じで、ワイルドに話すからパーソナリティに気に入られちゃって」

なんて言うから、

「別に・・ロックってそういうことじゃないんだけどな。イキがるよりもサウンドで、お客さんもメディアの連中も納得させ、ひれ伏すほどファンにさせちゃうのが 本物のロックだぜ。矢沢永吉の真似してんのかもしれないけど、まずサウンドありきだろ」

ってチクリと刺してやったら、その新人

「いや、俺 エーチャンより レッドウォリアーズ派なんすよね」

なんて、本質と外れたことを言う。苦笑いしたんだけど・・

ジミー木場さんに言わせりゃ、曲も作れないから宇崎竜童に頼んで・・それって アイドルと一緒じゃん。カッコだけ ロック気取っても、そもそもミュージシャンじゃない。そんなヤツに本気で熱くなって怒って・・損した。

Go my way

そんなことを思い出していたら、

「もうさ、やめちゃえよ あんな事務所。別に借りがある訳じゃないんだろ?」

いまいましそうに舌打ちをしながら、ジミーさんが言う。

「ええ。借りどころか、嫌な思いばかりさせられましたよ」

「だろ? じゃあさ、“ やめる ”って言っちゃえよ。電話して吠え面かかしてやれ!」

「ええ。ただ・・・・・」

「ん?」

気になることがあった。

A little anxious

考え込む画像。

「うちの弟が紹介してくれたんですよ、あの事務所」

ボクの言葉に ジミー木場 さんは、

「関係ねぇじゃん。結果として、俺と出逢ってさ、こっちでやります って言えば? 弟には、デビューしてから恩返しすりゃいいじゃないか」

「ええ、それはいいんですけど・・・うちの弟、中島さんに金を渡してるんですよ、タイアップの金」

「なんだ、それ?」

ジミー木場 さんは身を乗り出して聞いてくる。

「ニュース番組のエンディングで、オレらの曲を流すって条件で、金を払っちゃったんです」

「いくら?」

「350万円」

「え――――――っ!!」

Astonishment

はたして ジミーさんは驚いた。

この場合、驚くのが当たり前の反応で、弟や 中島 社長のように、さも『そういう事が当たり前』みたいな感覚は、おかしいよ。

「お前には悪いけど・・その弟、完全にだまされてるぞ。タイアップが350万なんて・・・・・ハハ。笑っちゃう」

ジミー木場 さんは冷ややかに、少し意地悪な表情で言った。

「やっぱり・・・・・だまされてますよね?」


暗澹たる気持ちになった。

「当たり前だろ。お前んちの弟、中島 たちのいい“エサ”になってるぞ。一刻も早く手を切らせないと手遅れになる」

「わかりました」

Cut ties with scammers

ドクロと蝋燭の画像の上に、詐欺師とは縁を切れ、というテキストメッセージ。
詐欺師にいつまでも関わるな。さっさと縁を切れ

その場で事務所に電話を入れた。

「オレたち、もうそちらの事務所をやめます」

なんだかんだと言ってくる。
でも契約結んでる訳でもないから。引き止めることなんて出来ないんだ。それでも 中島 社長は、

「電話じゃなんだから、今日会おう。夕方、待ってるから」

って、しつこいの。ボクたちがやめれば、金づるの弟も居なくなる訳だから、向こうも必死だよ。

「わかりました。会いましょう。でも、いつもみたいに待たされたら、帰っちゃいますからね」

強気のボクの言葉に、中島 社長は、

「わかってます。待ってますから」

と受話器の向こうで必死に言った。

立場逆転ってやつだよ。「フン、ざまあみろ」って感じ。

scammer begging

「ジミーさん、向こうも必死だから電話じゃ駄目みたいっス。これから行って、きっちりカタつけてきますから」

ボクの言葉に、ジミー木場 さんは

「チッ。あきらめの悪い野郎だな」

と吐き捨てた。

色んなこと、思い出してるみたい。ジミーさん、また怒り出した。あの中島だから。相当なことしてるんだ。

「ジミーさん、これ。気分直しに このビデオ見てくださいよ。オレたちの最新作。へへ、自信アリアリって奴で」

出来たてのビデオを渡した。今までジミーさんに言われてた事が、全部盛り込んである。
それから自分達なりに考えたアイディアも実行して。
ジーニアスの昔からのファンが撮影してくれたんだ。ビデオマニアのファン。

結構本格的な機材を持っててね。画像もいい。

awesome Band

「ガシャン」それをデッキに入れて。演奏が始まった。

「おっ! ・・ほぉう・・・」

見る見る ジミーさんの表情が変わる。

「うおう。・・うん。そうだよ! うん。でも何で二人ともスカートが長いんだ? もっとミニにしなきゃ」

その時、レイ・ギャングとクイーンが演奏をしながら、いきなりスカートに手をかけて。
ひきちぎるようにすると、マジックテープで止めてあるスカートが飛んで、ミニスカート姿が現われた。

前にジミーさんがチラッと口にしたアイディアを試してみたんだ。これはちょっとギャグっぽくて、やりすぎたかな? とも思ったんだけど。

「アッ!!」

やられたって顔をした後、ジミーさんは、

「ホラ! 良くなってるゥ」

shocking performance

興奮して、声が上ずってんの。でも顔は、中島 社長をののしった後だから、怒った顔がまだ残っていて。 怒りながら喜んでいる。

「くっそ、中島の野郎・・よっし! うん、うん」

「・・・・・・あはは」

ヤスコクイーンが笑った。

「・・・・・うふふ」

レイ・ギャングも笑う。て言うかーー

こちらとしては笑いをこらえるのに必死なわけさ。 だって、ジミーさん。笑わせようとしてないのに、面白い顔して喜怒哀楽がくるくる変わるんだからさあ。誰だって あの場に居たら耐えられないって、ほんっとに。 もう。歯くいしばっちゃったもん。

「よおーし。もうこれで商品になった。あとは細かい修正だけだ。このビデオを持って、レコード会社を決めてこよう」

Record debut decided

ジミーさん、どこかのディレクターに電話をかけてくれた。大手のレコード・メーカーの「ジミーさん専属」の担当者。ジミーさんが「こいつらデビューさせる」って言えば、速攻で話が通るらしい。よし、デビューまでもうすぐだ!

デビュー話は ジミーさんに一任するとして。

ボクたちはボクたちで 決着をつけるべく、西麻布の中島 社長の所へ行ったんだ。

Sales strategy written on whiteboard

六時すぎだったかな。事務所の一番奥の部屋――――

白くて でかいホワイトボードがあった。そこにマジックで「ジーニアスをどうやって売るか」
みたいな事が書いてある。その部屋で待ちながら。

「ふざけんじゃねぇよ。今さら とって付けたみたいに」

そんな気持ち。もうけがわらしい連中とはつるまない。「さよなら」

どや どや どや、って。中島 社長たちが入ってきた。

「じゃあ、はじめましょうか?」

中島 社長の言葉に、

「何を?」

とボクは聞いた。

「ミーティングですよ。ジーニアスの今後について」

へっ。ふざけるな。

Scammers coming in
Scammers coming in

「ちょっと待って。もう一人、来るから」

真木さんっていう、中島 社長の所に出入りしている音楽ブローカーが場を仕切った。

真木サン――― この人も仮名にしときました。いろいろ、つながってるんで。

「おいしい話はないか?」と周辺にうろついている人間が、この世界にはたくさんいる。

そうそう、例のタイアップの話も、この真木さんが持ってきたんだよ。中島 社長にはそんな力は無い。

真木さんは、業界に顔が売れてるからね。いろんな意味で。

こっちとしては とっととケリつけて、こんな事務所とは 早いとこおさらばしたい所なんだけど。敵は手をかえ、品をかえ 引きとめるからさ。「ま、最後に後くされがないように、キッチリ話し合っとくか」 と思って、もう少し我慢することにした。

世間話に相づちを打ったりするのは苦手だ。苦痛な時間が流れている。しょうがないから、メンバー同士でジョークを飛ばしたりしている時だった。

「ガチャリ」

うすっぺらな扉を開けて入ってきた その人物を見て、ボク達は一瞬目を疑った。

「・・・・・・・・」

アッ、と声を発したかもしれない。とにかく、あっけにとられて口を開いたまま固まった。

We are stunned and speechless

言葉を忘れた レイ・ギャングが、うめくように。やっと、ゆっくり口を開いた。

「ケーシーさん・・・・・」

= つづく =

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