1970年代までは、音楽が輝いていた
人々の心の中には 大好きな音楽 があり、自然に「音楽は生活になくてはならないもの」と思う人が多かった。
今はどうだろうか?
もちろん今だって「音楽大好き」という人はいるだろう。でも、昔ほどの勢いはない。突然、無名の新人が「目の覚めるような楽曲を引っさげてデビューしてくる」という奇跡も起きない。
「起きてるだろ!」と言う人もいるけど・・本当かな?
そういう「ストーリー」にはされているけど、裏で仕掛け人たちが蠢いて「そういうこと」にしているだけだ。自然発生的じゃない。
インターネットから「新人」が現れて、今までのルート以外の出方をするけれど、衝撃というには程遠い。まだまだ小粒だ。
音楽に限ったことではないけれどーー
情報が正しく国民に伝わらない。権力者の意向に沿った偏向報道が酷い世の中だ。こんな社会じゃ「ナチュラルにモノがヒットする」なんて難しい。
テレビ、新聞、雑誌。NHKでさえも・・みんな「スポンサーの意向」で動いてる。業界内部にいたボクだから、よくわかる。
今回のストーリーで、その「国民洗脳の一端」を紹介しよう。
昔、寺山修司が 「書を捨てよ 町へ出よう」と言った。
今ボクが思うのは、「TVを壊して捨ててしまおう。新聞も雑誌もやめて 受け身じゃない情報を自ら取りに行き、目覚めよう!」ということだ。流れてくる情報が真実なんて思っていると危険な場所へ誘導される。とんでもないことになる。
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィールを見てね
SONG-80 ~デモテープのゆくえ~
「デビューも決まったし、皆に給料を払うよ」
六本木で お祝いのごちそうを食べながら、弟の耕次が切り出した。
「えっ? 給料って・・・・まだ早いんじゃない? デビューもしてないのに」
ボクは 不安を口にした。
「大丈夫。そのぐらいなら、ポケットマネーでなんとかなるから。そんなに 沢山は払えないけどね」
ちょっと気が早いんじゃないかなぁと思っていると、
「それに兄キだって、今までみたいにトラックを転がしてる時間は無くなってくるよ。曲作りして、レコーディングして、キャンペーンしたり いろいろ・・・・・」
「心配してくれるのは嬉しいけどさ、それだったらスタッフに少し 払ってやってよ」
音楽業界と関わるようになってから、胡散臭いマネージャーやらプロダクションのスタッフに悩まされていたボクたち。じゃあ、ってことで昔のファンと、前に付き合っていたボクの「元カノ」が スタッフとして事務作業やら細々としたボクたちバンドの面倒を見てくれていたんだ。
バンドが売れるようになったら、お礼するからさ、ってことで連中はただ働きしてくれていた。
でも・・出世払い、とは言っても気になっていたからね。ボクに給料払う金があるんなら 少しでも連中に払って欲しかった。でも弟の考えは違って、
「まぁ、スタッフのアルバイト代も、もう少ししたら考えるからさ。最初は兄貴たちだけでも 音楽で生活できる環境を整えるよ」
「いや・・だけど」
と遠慮するボクに、
「最初は兄貴一人に払うつもりだったけど。それだと雰囲気悪くなるだろうからバンドのみんなに払うよ。メンバー四人いるから、 金額は少ないよ。バンドメンバー全員で少しづつ分け合う感じの給料になるけど。それでいいね」
半ば強引に決めるのが弟の性格なの。押しが強いというか・・・
「ウン。カズダケデモ アルバイト ヤメテ 体フリーニ シトイテクレナイト。コレカラショッ中 VIP-中島 社長 ニモ、会ワナケレバ イケナイシ。昼間ニ アルバイト シテルト セッカクノ チャンスヲ失ウヨ」
ケーシーさんや周りの人間達にも言われて。トラックの運ちゃんをやめた。
実際、それからは レコーディングや打ち合わせで忙しくなっていったんだけどね。
新人のギャラの相場
1ヶ月のバンドメンバーのギャラというか給料は、一般の会社の給料と比べれば遥かに見劣りするものだったけれど、それでもバイトしないでなんとか生活出来たから悪くない金額だよ。
ケーシー さんに言われたもの。
「ウワァ。カズ タチ コンナニ貰ッテンノ? 贅沢スギ。新人歌手ヤ売レナイ タレントの給料ナンテ 月4万円トカ、多くても6万ヨ。ひどい事務所は2万円とか、無給デ 衣装代を請求スル トコダッテアル。売レナキャ給料ナンテ モラエナイ世界ナノニ贅沢!」
って抗議してくるからさ。
「いや・・・そんなこと言ったって、給料もらえってケーシーさんも言ったじゃないですか」
「コンナニ貰エ ナンテ言ッテ ナイ!」
「う・・ だったらどうすれば・・」
「カズ タチ バンド メンバー ハ 6万円づつ貰って、あとはボク ニ チョーダイ!! プロデュース料!」
ケーシーさんはボクたちに手を差し出した。
「あ・・じゃあ そうします」
ボクがポケットの財布を探っていると イタズラな目で ニッと笑った ケーシー・ランキン さんは、
「ジョーダン ヨ! ミンナノ イマノ オ金ナンカ ホシク ナイ。バンド ガ 稼ぎハジメタラ タンマリ貰ウ。アッハハ!!」
弾けるようなケーシーさんの笑いに、ボクたちもつられて笑った。
「あ、そういうことですか。アハハハ」
全員の笑いに釣られて ヤスコ・クイーンは
「あー、良かった。バイト禁止だから ただでさえ少ない給料なのに、ケーシーさんにまで取られたら」
と また余計なことを言う。
「おいおい。少ない給料ってなんだよ。聞き捨てならんな。これでも、俺のポケットマネーがだいぶ減ってんだぜ」
弟が苦笑いすると ヤスコ・クイーンも、
「あ、すみませーん」
と言ったから、全員
「あはははは」
と緊張しかけた空気をほぐすように笑った。
「デモ 冗談ヌキデ。貰いスギヨ。新人の給料は いいとこ6万。10万以上貰ッテル新人ナンテ、聞イタコト ナイ。ソコハ、ワカットイテネ。コノ世界、オ金ハ 自分ノ作品ヤ技術デ 稼グノ!!」
ケーシー・ランキンさんはボクらに「この世界はそんな甘いものじゃない」と教え込むように釘を刺した。当たり前じゃないからな、金は安易にもらうものじゃなく、「作品を認めさせてお客さんから頂くものだよ」と徹底的にわからせたかったんだと思う。親心だよ、それが本当の優しさだ。だから ボクも、
「わかりました」
と神妙に言ったし、他のメンバーも真意がわかったようで、
「はーい」
「アハハハハ」
と返事をした。
笑い声が飛び交う中で、ボクは昔を思い出していた。
ケーシーさんの事務所と、はじめて「委任状契約」を交わした頃のこと・・・・・・
ひとつの 同じパイ
業界通の連中が、
「カズさん、用心した方がいいよ。ケーシーさんって、業界の中じゃ 金に汚ないっていう噂も あるらしいよ」
「えっ!? ・・・・・まさか」
はじめて知る業界の人だったから、まさか とは思いながらも、音楽ビジネスの恐さみたいなものを 感じたのも確か。
「あのケーシーさんでも、金がからむと人が変わるんだろうか?」
と少し警戒心が動いた。
ところが 「金に汚い」ケーシーさんの姿は どこからも感じられず、月日が過ぎた。
ある日、その真相が何だったのかを知ったんだ。
ケーシーさんが新しいアルバムを発売しようとしていた時、契約問題で かなり悩んでいたケーシーさんと酒を飲んだ。疲れた表情で頭をかきむしりながら、ケーシーさんはつぶやいたんだ。
「コノ世界ハネ、一ツノ パイノ 取り合イ ナンダ。タクサンノ 業界スタッフガ 権利ヲ主張シ、ボクノ焼イタ パイヲ ドンドン持ッテイク。ヤット ボクノ番ガ来テ。見ルト ボクタチ ミュージシャンニハ 皆ガ ムシッタ アトニ コボレタ、パイノ クズシカ 残ッテ ナインダヨ。ソンナノ オカシイ デショ?」
ケーシー・ランキン さんが、その時に主張した「契約金額」と業界側の取り分を比較すると、妥当というより ミュージシャン側がかなり譲歩した条件だった。それでも音楽業界側は譲らず、交渉が難航しているらしい。普通、日本のミュージシャンは ここで根負けして条件を飲むが、アメリカ生まれのケーシーさんは なかなか折れず話が先に進まない。
音楽業界が、パイの取り合いだということは 知っていたけれど、それ程とは知らなかった。
しかも、ミュージシャンとして、当然の権利を主張するケーシーさんは、業界内で 「金に汚い奴」という噂を流されてしまう。
「リスペクトガ 足リナインダ。プロダクションモ、レコード会社ノ人間モネ。ボクタチ アーティストノ作ル作品デ 商売シテルノニ、ソレガ ナケレバ ハジマラナイノニ・・ ボクタチノ身分ハ、トテモ低イ」
「マーケティング」という名の詐欺
いい? 断言するね。
世界的な今の「音楽産業の低迷」の原因は、ここにある!
決してインターネットの世界になったからでもなければ、楽曲ダウンロード販売が主流になったからでもない!
本当は「中間搾取が酷すぎて」ミュージシャンと業界の信頼関係が崩れたことに起因するんだ。
特にこの時代から、音楽業界人はマスコミや権力者と結託して ミーハーを洗脳して音楽を売り、あまりにもミュージシャンや作品を踏みにじった。
音楽を愛する人に向けてではなく、自分たちが洗脳した「テレビの言うことはなんでも聞く ミーハー」に向けて音楽を作った。そしてミュージシャンを粗末にしすぎた。
それが、今の音楽低迷の本当の原因なんだ。ボクはあの時期、不当なそういう扱いを受けた一人だからよーくわかる。
「今の時代、作る側よりも 売る側が偉い」
という話を散々された。
「俺たちは、そこら辺に落ちてる ゴミだって売ることができる。だから作品なんて あまり関係ないんだよ。俺たちが売りたいものを売る。それがヒットするんだから」
うんざりするような自慢話。ボクらがこうも軽く扱われる理由。
ゴミを高い値段で売るのは詐欺って言うんじゃないのか?
それを「マーケティング」なんてオシャレな言葉で包んでも、下品な行いは変わらない。日本人、質が落ちたな。
そういえば、ボクたちが所属する B・ミュージック の VIP-中島 社長 の所に行った時もね、ダンボール箱が無造作に置いてあった。中にはカセットテープが ぎっしり入ってて。
送られてきた、デモ・テープの山なんだよ。
「それ、好きなだけ持ってっていいよ。どうせ捨てるだけだから。つぶして 練習テープにでもして 使えば?」
VIP-中島 社長の言葉に「えっ?」って驚く。ボツになったら そういうことされるのか・・・・
「うちのスタッフが、暇な時に聞いてね、ダメだったらポイッ。この箱に捨てるの。毎日 毎日送られてくるからさ、キリがないんだよ。でもね、たまに俺も聞くんだ。俺が聞く時は、そのボツテープの山の中を聞く」
VIP-中島 社長は、カセットテープで溢れそうになっている大型の段ボールを指さした。
「ガシャガシャっとかきまわして、何気なく一本取る。オッ、いいじゃないか、なんてのもあるんだぜ。たまにだけど」
VIP-中島 社長は、俺こそが この世の支配者だ、と言う顔をして 満足そうに笑った。ダライ・ラマが世界に向けてメッセージを送るように ボクの目を見て。話を続ける。
「スタッフを呼んで『駄目じゃないか、こういうテープを捨てちゃ』って言ってね、採用。実際、俺がそうやって救済したテープが、ウチのオーディションでグランプリをとったことがあるよ」
VIP-中島 社長は 大袈裟な身振り手振りを交えて 自慢気に話してたけど、ミュージシャンサイドからすれば、胸の詰まる思いだ。
「オレ達も・・・・大昔 ここ B・ミュージック のオーディションにテープを送ったことがあるんですよ。不採用だったけど・・・・・きっと、このダンボールに捨てられてたんですね」
ちょっと皮肉を込めて言ったんだ。そしたら VIP-中島 社長、悪びれもせずに
「大事なのは 今、お前がこの場所に居るってことだ。こうして この部屋に入り、俺と話が出来る。来月にはCDを発売する。その事実こそが大事なんだ」
その表情は 世界を救済する天使のようでもあったけど、目の奥は 悪魔のように冷たかった。
「辿り着くためには、実力だけじゃない。運も必要なのさ。それも強力な運がね。ボツにされるってこと自体、実力か運か その両方がないってことだ。」
CD発売が決まって。ハッピーだけど複雑な気分になった。
「運」というのは、何て便利な言葉なんだろう。権力者の気まぐれを見事に正当化することが出来る。
あるいは、途中で投げ出してしまった人の 言い訳にもなるね。
「ガンバッたけど、運がなかったから・・・・・」
運、運、運。そんな言葉でずっと片付けられてきた。これ以上、振り回されてたまるか!
VIP-中島 社長、ボクの帰り際にこうも言ったんだ。
「バンドマンに人格はいらない。いい曲だけあればいい。つべこべ言わずに、曲を作れ。ライブはやらせない。金にならないし、逆に金がかかるから」
って。
マスコミ、ミーハー、支配者が創る世界
音楽業界ーー
ボク の肌に合わない気がする。気のせいだろうか?
VIP-中島 社長も、あの 茹で卵の 中島 とどこか似ていて、信じきれない。業界特有の、「こんなの真っ当な社会じゃ通用しない」って言ういい加減さや嘘がまかり通る。ボクが目指したのは、こんな場所じゃない。ボクは最も苦手な人間たちの中で生きている気がする。
音楽は好きだけど、音楽業界は嫌いだ!
ミーハーと中間搾取業者が 世の中をどんどん つまらなくしていくーー
音楽業界の「お偉いさん」が「次はこの曲をヒットさせる」と決めて、大手の企業がスポンサーになりタイアップが付く。後は、その大手企業が大量の宣伝費を払っているテレビ、ラジオ、雑誌や新聞などが「次に流行る音楽はこれですよー」と大々的にヘビーローテーションで宣伝しまくる。
すると、まんまと洗脳された「ミーハーたち」が「言われた通りの曲を買って」ヒット曲になりブームが起きてミリオンセラーになる。
「そんなバカな。国民はもっと賢く自立してるよ」と思ってた。でも・・ボクの期待はことごとく裏切られ、ブームの仕掛け人たちは次々にヒットを生み出していった。楽曲の良し悪しなんて、もう関係ない。業界とマスコミが売りたいものが売れるんだ。いい曲が「自然発生的に」売れる時代なんてとっくの昔に終わってる。
絶望的な現実を見せられ、ボクは焦った。「モノづくりをする人間が弱い」ことを識(し)った。ミーハーが社会にどんどん増殖するサマを知って テレビを見なくなった。マスコミを信じなくなった。新聞もとるのを辞めた。この世界は、マスコミとその奥にいる人たちに操られていることを業界内部にいて散々見た。
音楽のヒットがコントロールされているだけなら、まだいいよ。可愛いものだ。
でも、こんなに増税されて、日本人だけ給料が30年間上がらなくて 変な政治がズーーっと行われているのに選挙にも行かないジャン。「自分だけ行っても何も変わらないし、めんどくさいから」って思わされてる。
これ、「業界がミーハーをコントロールしてる方法と同じ」だよ。政治のこと考えるなんてダサい。怖い。胡散臭い、と思ってる。
思ってるんじゃないよ、思わされてる。誰に?
学校の教育で。テレビの報道で。新聞のニュースで。
「今の流れはこうですよー」って言われて。何も考えないでしょ?テレビの言ってること、鵜呑みにする。神様からの言葉のように、信じきってる。なぜ、そんなに無防備なの?
本当かなー? って疑えば。自分の頭で考えれば、自分で本当の情報を探しに行くようになるよ。すると この世が「マトリックス」であることに気づく。「こう考えろ。こっちに行け」って言われて誘導されていることがわかれば、目覚める。
テレビばっかり見てる人は永遠に眠り続けている人。マスコミに「陰謀論」って言われたら それ以上扉を開けようとしない人。この世は陰謀だらけなのに。
「テレビに出てくるその人」偉い肩書きは持ってるけど、本当に信じられる人なのかなぁ? 調べてみてよ、その人のやってきたこと。誰とつながってるのか。どこへ連れて行こうとしてるのか。人気者でも「みんなに好かれてる人」でも、スポンサーの意向で簡単にあなたを騙す人かもしれない。
顔や雰囲気、地位や学歴が高い人だって下品な人はいるよ。「イケメンや美女の」売国奴だっているんだ!
ちゃんと考えて、正しい政治家に投票すれば「アッ」と言う間に社会は変わるのに。給料上がるのに。税金減るのに。「自分1人が選挙に行ったって」って思う人が多いから「組織票持ってる議員に勝てない」んでしょ?
組織票って言ったって、「国民全員が投票に行けば、たいした数じゃない」そんな組織票に、ずっとコントロールされてる社会、それが今の時代だ。
アホな政治やめさせるように、ちゃんと「誰を選べばいい世の中になるか」情報を集めて(マスコミからじゃなく別のルートで)選挙に行けば、そういう人が増えれば間違いなく未来は良くなる。好転するよ。
「目覚めろ!」
って、あの頃のボクも思ってた。ミーハーが減って ちゃんと音楽を聴く耳を持てば「いい音楽が増えるのに」ボクの音楽が評価される機会だって出てくるだろうに。業界に操られるミーハー。支配されるミュージシャン。
叫び出したくなるほどのイライラ。いや、まともな業界人もいるのかもしれない。 ボクがまだ巡り合っていないだけ? ボクは変なやつらとしか出会えていないってこと?
わからない。わからない。
結局、業界の中で信じられるのは、 ケーシーさんだけってことなのか?
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