額に汗して働くのが「カッコ悪い」と言われたのはいつから?
ボクが子供の頃は、一生懸命汗を流して働くのは尊いことだと言われていた。
でも、バブルの頃には もう「そんなブルーワーカーダサい」と言われるようになっていた。
「きつい」「汚い」「危険」「カッコ悪い」という頭文字をとって 3K だとか 4K なんても言われるようになった。
学校がそうやって教えていた
勉強しないと、肉体労働のような「人がやりたがらない仕事に就くことになるぞ。それが嫌なら勉強しなさい」
ホワイトカラーと言われる、デスクワークに就きたい人が増え、丸の内で「大手企業」のOL、ホワイトカラーをやることこそ「かっこいい働き方」と言われていた。
今もそうかもね。キツイ仕事は外国人にやらせて「移民を増やそう」みたいな計画、国がやってるでしょう?
でも、日本人の給料は全然上がらず、アジアの他の国の方が豊かになってきてるんだから、そのうち「日本人が安い賃金で外国に出稼ぎに行く未来」がすぐそこまで来てる。のに、何やってんのかね、この国の政府は。
学校の教育が、そういう人を増やすから
みーんな、「楽でカッコよさそうな」仕事に就きたがった。バブルの頃、その傾向がピークだったんじゃない?
バブル時代の人気就職先は、
航空業界、広告業界、金融・株の業界、マスコミ業界、音楽業界、etc…
チャラさ MAX の時代だったな。
人気の音楽業界も、「ミュージシャンになりたいヤツ」多かったけど ミュージシャンとかバンドマンって、外から見るほど楽な世界じゃ無いからね。どちらかというと 3K 4K に近い世界だよ。
この物語を読めばわかると思うけど。
ただ、音楽業界スタッフは、そうねー「楽で華やか」な部分もあるかもね。一流大学出た連中がいっぱい入ってきてたから。
すると「業界人」じゃなく「業界気取り人」がいっぱい増えることになるワケよ。今回の物語のように・・・
具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。
ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜
ボクについては プロフィールを見てね
SONG-83 業界気取り
レコーディングが終わった。
いい感じでミックスダウンも終わり。あとはプレスするだけ。ジャケットの撮影に入った。
ところが―――
「えーっ。こんな写真がジャケット写真になるんですかぁ?」
ビジネス・ミーティングという会議があってさ、デザイナーやらなんとかディレクターという連中が 資料を持ち寄って「こんな感じは?」というアイディアを出し合う。いろんな方向性でね、ジーニア スのイメージを決定するんだけど・・
結構カッコイイ方向もあった。「うわおう!ロックっぽいし、洗練されてるね」っていうようなのとか。さすがプロが考えると違うなぁ、って喜んだのもつかの間。
「お、これでいんじゃないか」
気まぐれのように横を向いていた Vip-中島 社長が ひょい、と1枚の資料写真を取り上げた。
「え・・」
バンドメンバーの 口から出たのは そんな言葉だったけど、メンバー全員心の中では「ゲッ!」て叫んだよ、絶対。
Vip-中島 社長 が選んだイメージは、あまりにも奇抜なものだった。
黄色い背景に、赤いTシャツ。黒のでかいサングラスをかけた、フランスの自転車競技にでも出場しそうな「サイクリング野郎」たち。そんな雰囲気の写真だったの。
ナニ、って感じ。他にいい写真はいっぱいあるのにさぁ、よりによ ってギャグのオチみたいな写真選んじゃってさ。オレ、自転車乗ってないよ。コミック・バンドじゃないよ。やめてくれーって叫びたくなる。
どんどんロックからはかけ離れて行く。て、いうよりも 今じゃ完全に色モノだ。
「君たちは無名だからさ。よりインパクトのあるCDにした方がいいよ。これでいこう」
「・・・・・・・」
Vip-中島 社長の言葉に、バンドメンバーは言葉を失った。
ていうより 不満だった。ふざけんな、って心で叫んでた。でもね、
「イーンジャナイ? ジーニアス。コレデ 行キマショウ」
ケーシーさんとしては、こんな所で Vip-中島 社長に反発して、みすみすチャンスをつぶしたくないと 考えていたみたい。素直に従って、デビューして、あとは実力勝負。とにかく土俵の上に上がらなければ 何も出来ない。そんな事を言われたのを憶えている。
そこまでケーシーさんに言われちゃあね、我がままなんて言えない。
「俺は、君たちよりも階段の高い位置に立っている。君たちがまだ見えていない所まで、見て いるんだ。俺の言うとおりにしていれば、間違いはないよ」
Vip-中島 社長が そう言った。
考えてみれば、この人の考えそうなことだ。
マニアの中で有名な、「ある大人のブルースマン」にチョビ髭書いてうさんくさい格好をさせ、 イロモノバンドでギター弾かせちゃうような会社だからな。
不満を飲み込んだ。
デビューの日は 近づいている。
今は、楽しいことだけ考えよう。
★
自由ヶ丘―――――――― ケーシー・ランキン 邸
レイギャングと ボクとケーシーさん。ヤスコ・クイーン、トミノスケ。速弾き・ヒカル。それから スタッフの人とかがいて。デビューを祝して、乾杯をした。
何をするにもビールを飲みながら、というのが ケーシーさんのスタイルだ。
「カズ、ジーニアス オメデトウ。コレカラハ モウ ボクト 同じ立場。プロ ノ ミュージシャンヨ」
「有難うございます」
ケーシーさんが認めてくれていることが、どれ程 支えになっているか。
自分だけで「オレ、才能あるんじゃないかな?」と、言っているだけじゃ、単なる思い込みかも しれない。
周りの評価があって、はじめて突き進む力が湧いてくる。そういう勇気をくれる人達に恵まれているのは、ボクの幸せのひとつだな。 ケーシーさんとめぐり会えて、本当に良かった。
ただ・・ 今までの友人。ロックなバンド仲間たちにデビュー CD のジャケットを見られるのが本当にイヤだった。笑われるに決まってる。
「どうしちゃったの? ロックやめてお笑いに転向かよ」
知り合いはそんなこと言ってないのに。なんか、心の中で そう言われてる気がしていたたまれなかったよ。
オレは何やってんだろう? ここまでイヤな思いして、それでもデビューにしがみつくのか?
自分がやりたいサウンドでもない。ロックなイメージともオサラバ。でもプロになる。ミュージシャンを職業にする。それと引き換えに失うものは多い。それでも・・・先へ進むんだ!
心は泣いてる。プライドは今までの様々な出来事で、とっくにズタズタのボロボロだ。
それでもオレは、プロになる!
それだけを支えに歩いていた。
業界は嫌い。イヤな奴らばかりだ。気取ってて、中身がないのにカッコばかりつけてる連中ーー
ところがね。バブル、お花畑のあの時代。みーーーんなが「業界ヅラ」してたよ。
日本中が「業界気取り」してた。業界人でもないヤツらが。
例えばジーニアスの CD のサンプルができたとき 知り合いに聴かせたんだよ。あ、この話。前にしたかな? ま、いいや。
「あ、じゃ これ ちょっと貸して」って持ってっちゃってさ。
数日したら「知り合いの業界人に聴かせたらさ、作り込みが甘いねって言われたよ」
って言うんだ。
「あ、そう。業界人って誰?」
って聞いたらさ。レンタル・ビデオ店のオーナーだ、って言うわけ。
「レンタル・ビデオ店のオーナーは、業界じゃないだろ」
って言ったらさ
「いや、何店舗も経営してて。ビデオもCD も貸し出してるから聞く耳が肥えてる」
って言う。
アホらしい話だよ。そんな話いっぱいある。
ボクの知り合いが、有名なCBS ソニーの ディレクターに聴かせたら、「これじゃ売れないね」って言われた、って言うんだ。
カチンときてね。
「その ディレクター、名前なんて言うの?」
って教えてもらって。
と言うのも、ケーシー・ランキン さんが、CBS ソニーと深いつながりがあった。当時の社長や会長とも仲良し。プロデューサーや、ディレクターにも いっぱい知り合いがいたから調べてもらったんだよ。
そうしたら、どうだったと思う?
「こんなんじゃ売れないよ」って言ってたやつね。
ディレクターでもなんでもない。レコーディングの現場にも参加したことがない、レコード店周りをして、ポスターとかなんかの販促物を配る係だったの。
それどころか、社員でもなく。
その会社のアルバイトだったんだよ。
その事実を知って、衝撃を受けた。
うちのスタッフの知り合いの「大学の友達」だったらしく、大学生のアルバイトが 業界のフリしてただけなんだよね。
でも本人は嘘ついたとも思ってないの。業界の中で働いてるし、大学卒業したら実際に業界人になるし。そのうち・・って。偉そうにしてんだよなー、素人が。
こんなヤツ、いっぱいいたわ! もう日本中が「業界気取り」だった。
誰も彼も、業界人みたいな話をする。TV 業界、広告業界、音楽業界、芸能界・・・
いろいろ裏事情みたいなこと話すからさ、ふーん。って聞いて。その情報、どこで仕入れたの? って尋ねたら「TV で言ってた」って。
あの、バブルの時代。
確かにその後の世界経済や政治で「バブルが崩壊した面」もあったろう。
だけど、それだけじゃない。思い上がっていた。浮ついていたんだよ多くの日本人が!
アメリカ人の大事にしてたビルを買って、ステータスを踏みにじって。
だから外国の恨みを買って 足元救われたんじゃないの?
あの「バブルでお金が余っていた時代に」もっと日本をアピールする方法があったはずだ。日本の良さは、あんなバブルで経済的に豊かになったってことよりも「人を裏切らない誠実さ」だったり「丁寧なモノ作り精神」「優しさや細部に渡るサービス」「外国からのものを 発展、改良する 日本の独創性」など。いいものがいっぱいある。
それを世界に発信し教育するシステムを作ってれば、バブルが崩壊しても多くの尊敬を集め、国は尊厳と世界をリードする役割を持ち続けていただろうに・・・
恥ずかしいヤツ増えたな、日本に。「軽佻浮薄な時代」と思っていたけど、そのうち。ジーニアスのスタッフも「業界かぶれ」みたいなことを言うようになって来た。業界の中にいる、みたいなね。変なプライド持つようになっちゃって。
おいおい、お前もか。って、かなり失望したよ。
そういうの嫌いだから。オレ。
知らず知らず「業界気取り」するスタッフに冷たくなってたのかもね。
何年も後になって。音楽業界を離れてライブやってた時、そのスタッフがオレの所へ来て言うわけ。
「俺 カズさん大嫌いなんで。このライブ、カズさん見に来たわけじゃないですから。対バンの知り合い見に来ただけなんで」
って言うからさ。そんなこと、わざわざ言わなくてもいいのに、と驚いて。まじまじと そいつの顔を見たよ。まぁ、敵が多いんだな、オレは。と思って
「あ、そう」
と笑った。苦笑い。怒りとかは湧かないね。
嫌いだろうがなんだろうが、ボクは自分の性格も行動も変えられないし、変える気もない。
こんな生き方してて、みんなに好かれようなんて思っていないのよ。奇跡的に気の合う、本当に魂が惹かれ合う人だけに好かれればいい。
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