SONG-89【プロを名乗るニセモノどもめ!】 鹿児島凱旋ツアー②

SONG-89-main-visual-A-musician-who-has-a-bad-attitude-and-gets-booed タイトル 「SONG-89 鹿児島凱旋ツアー②」 態度が悪く、ステージ上でブーイングを浴びるミュージシャンの画像。
プライドを持つのは良いこと?

Pride=誇り・自尊心・自負心

プライドは人間なら誰しもが持つ感情だ。

自己を肯定し、国を大事に思って家族を愛する。

自己肯定感が低い人は、自分も他人も軽く見て傷つける傾向にある。生きる、というか人生への執着が薄いからだ。

これは「命へのハードルが低い」という言い方も出来るかもしれない。

「殺人者」には 自殺を試みた人が多いと言うから。つまり、自分に対しても他人に対しても認める気持ちが少ないと、命をも軽んじるようになる。

murderer

ゆえに 誇りを持って、「自分も他人も尊重できる」人が 強く優しい人と言えるのだ。

とはいえ「プライド」には、

「良いプライド」と「悪いプライド」がある

悪いプライドは、

対人関係において本当に厄介だ。人間関係を複雑にしている大きな要因でもある。

自分を客観的に見ることができず、高圧的で自分の優位性をアピールするために使うプライド。こういうプライドを振りかざす人に多いのが「努力せず得ようとする」優位性だ。

相手より年齢が高いから、自分の方が知っている。経験が豊富だ、と考える。でも、年齢が若くても凄い人はいっぱいいるし、大谷翔平や井上尚也は、年をとっていなくても良質の経験や技術、知識を得ているので ぼーっと生きてきた年寄りには太刀打ちできない。

そういう有名人には一目置くが、周りの「自分より若い者に偉そうにする」老人は醜いものだ。年齢なんて、たいした モノサシ にはならない。ボーっと流されて生きても「年はとる」。老人になるのに努力はいらないのである。

もちろん、チャレンジを続けて「良い年を重ねてきた老人」は美しいしカッコいい。こういう老人になら、見習うべきことが たくさんあることも付け加えておこう。

身分や生まれながらの金持ちを自慢する

生まれた国の優劣で、自分の方が偉いと言ったりするタイプも「悪いプライド」にしがみつく人だ。昔でいえば「身分」が高い家に生まれたボンクラも権力を振りかざしたがる。

良い国に生まれたのも、「高い身分の家」に生まれたのも、先人が頑張ったからであって、感謝はしてもいいが、偉そうぶるのは大きな勘違いだ。

こういう「努力せずに優位性を与えられた人たち」は、絶対に自分の非を認めない。ただただわがままな誇りを持つ。こういうのを 馬鹿げた誇り。

フーリッシュ・プライド という。

Foolish Pride

じゃあ、良いプライドとは 何か?

フーリッシュ・プライドが「他人に向けて 自分の偉さを誇示し自慢する」のに対し、良いプライドは「自分の内面に向く」

今いる自分の場所は変わらない。自分自身で、「自分が今、どこにいるか」「どこに行こうとしているか」を正しく認識しており、自分が目標とする場所に向かって意識が向いている状態であること。その上で、

俺はまだまだこんなはずじゃない!まだいける!ここで負けたくない!

と湧き上がってくる自分への期待。信頼、誇り。希望ーー

こういう部類の感情が良いプライドで、美しい生き方だ。

良いプライドは誰も傷つけない。むしろ「美しく誇り高い人」がそばにいれば 周りの人の幸福度も上がるものだ。自分自身を磨き上げ、今いる場所から更なる高みを目指すための原動力に影響され、「自分も頑張ろう」という気持ちになる。他人を励まし、自分のやるべきことを日々やる人、生き方が美しい。

Samurai-pride

日本には 本来、そういう サムライのような美しいプライドを持つ男女がたくさんいた。

目先の損得、くだらない「エリート意識」という優位性が 悪いプライドを生み出す。そんな フーリッシュ・プライドにハマっていると感じたら、

自分の中にある「本来持っている」美しいプライドに目覚めよう!


具体的なストーリーで考えるヒントをつかもう。

ドキュメンタル STORY で人生をリセット!
〜机上の空論じゃ現状を変えられない。実例からヒントを得よう〜

ボクについては プロフィールを見てね

Live -Tour
速弾きヒカル、トミノスケ、ヤスコ・クイーン、ロックンロール・Kaz
目次

SONG-89 鹿児島凱旋ツアー②

ゲスト・バンド

様々な地方都市のツアーを回って、地元の「鹿児島県 出水市」に戻ってきた。

いよいよ 大 公会堂でのライブが始まる。

このライブを聴きに、昔の「ボクのマネージャー」の倉本 さんが来てくれた。東京から、わざわざ 鹿児島の、さらに小さな町の、ボクの田舎まで。来てくれたんだ。彼は長崎生まれで、学校を卒業して東京に出た。だから、ボクらのライブを観た後、久しぶりに長崎に里帰りするらしい。

「おー、ここが kaz の生まれ育った場所かー」

rural bus terminal

田舎の、ちょっと大きいバス・ターミナル へ迎えに行くと、倉本 さんは感慨深げに そう言った。※ 倉本さんについて詳しくは⇨ コチラ

そこのバス・ターミナルから ちょっと行ったところに ボクたちが 凱旋コンサートをやる 大 ホールがある。

明日。いよいよ その 公会堂での「本番ライブ」だ。

「いいステージ見せるよ、倉本さん」

気合いを入れてたら、妹の同級生の「呼び屋」の子から、「サプライズ」があると申し出があった。

ボクたちの バンドのライブに「ゲスト」を呼んだというのだ。

妹から、そう伝えられて面食らった。

「なにそれ。聞いてないけど?」

「いやぁ、せっかくの デビュー・ライブだし。ここは有名なプロのゲストを入れた方が盛り上がりますよ」

と、呼び屋の子が言ってるらしい。

special guest

「有名? プロ? 誰なの?」

ボクの質問に 呼び屋の子が 教えてくれた名前は、確かに知ってるけど。それほど人気バンドってわけでもない。一部のマニア受けはしそうだけど・・

さらに 「呼び屋」の子の説明では、正式メンバーは「ボーカル」が一人来るだけで、あとはサポート・メンバーが「楽器担当」するらしい。メジャーのバンドが フル・メンバーで来る訳ではなく、ボーカルが サポート・メンバーで結成した 「別のバンド」が来てるという。

「来てる?」

Band members arriving

そう、もう来てるの。明日のイベントに前のりで。ボーカルだけ ちょっと名前が知れてる「聞いたことないバンド」が数名で到着したらしい。今日 来たってことは、数名分の宿泊代が出てるってことだろう? 駅前のホテル高いよ。誰が出すの? 不安になったボクは、

「ちょっと待ってよ。サプライズ失敗だわ、こんな話。嬉しくもなんともない。ボクら、ゲストなんて望んでないよ」

って言ったんだけど・・

だって そうでしょう?

ボクらの「デビュー前 お披露目ライブ」で わけわかんないゲストなんか呼ばれたら 企画自体 がボケるわ! と思って。

勘弁してよ、って妹にゴネたんだけどね。「呼び屋」の子の 夢だったみたい。その「ヴォーカル」のオリジナルバンドを呼ぶのが。

今回、バンドは違ったけど、「ヴォーカル」だけでも来てくれた、って大感激してんの。

A man who is satisfied with his dream come true
A man who is satisfied with his dream come true

これはボクの勝手な思い込みだけどね。

ボクらの九州ツアーを成功させるために、妹は プロの「呼び屋」に頼んだ。そうすればいろんなイベントやライブハウスに顔も効くし。間違いない、と思ったんじゃない? 実際、いろんなイベントやステージにスムーズに出れたから その点は深く感謝している。

でもねぇ、事前承諾なしの ゲストを呼ぶなんて・・・

当然、妹は いくばくかの金を「知り合いの呼び屋」くんに 払ってるはずだ。いくら知り合いだからって、ロハで人は動かない。特に、こういうエンタメの世界の人たちはね。

弟の金か、親父の金かは知らないけど それなりに渡ってるはず。

で、それを ボクらのライブが円滑に出来る方向で使ってくれりゃいいんだけど、

「自分が永年のファンだった バンドを呼ぶために使った」のなら話が違ってくる。

いくら使ったのかは知らないけど。こっちが まったく望んでないことに「使われた」のは間違いないと思う。

A man who plays tricks in his mind

ジャンルの方向性が似てるならまだいいけど。まぁ、ボク的にはゲストの「音楽ジャンルは嫌いじゃない」けど。そのバンドに特別な思い入れは無い。「ゲスト呼ぶなら せめて相談してよ」と思った。

でも来ちゃったから。しょうがない。楽しくやるしかない。

高級 焼肉店

親父もおふくろも「ゲスト・バンド」に 気を遣って。

「まぁまぁ。うちの子のイベントを盛り上げるために来てくださったんですねー」

って、その晩。メンバーとスタッフ達と、そのバンドを「高級焼肉」に連れて行ったんだ。
佐賀牛の美味しい店で有名なとこらしい。「いったい いくらするんだよ?」と思うほど 美しい肉の山。大皿に山盛り盛られてる。

Yakiniku restaurant

金の無いバンドマンには、身分不相応で恐縮しちゃう感じの店だった。

みんなで恐る恐る、高級焼肉店 の座敷に 座った。

ボクらのバンド、スタッフ。うちの妹、「呼び屋」の彼。そして ゲストバンド・・・20人近くいるよ。

うわー、今の親父達の財力じゃ、かなり無理してんなーと思って 食べるのもためらわれるんだけど。みんなは楽しそうに 美味しそうに食べてるから「まぁいいや」と思っていたら。

ゲスト・バンドの連中。上座の席に座って腕組みして、思いっきり「偉そうに」してんの。

どこの スーパースターが来たんだよ、っていうぐらいの態度。その態度を見て、みんな居心地悪そうにしていた。

Bossy men with folded arms
Bossy men with folded arms

場の空気を読んで。慌てて「呼び屋」の彼が ゲストバンドを紹介すると、ヴォーカルは アゴで軽く「おう」と頷き、サポートバンドの連中も ニヤリとカッコつけて笑った後、「どうも」と言いやがった。

それを聞いてボクはどう思ったか?

こいつら嫌い!

即 退場!

顔も見たくないから、明日 演奏なんかせずに 肉食ったら とっとと帰れ!!

マジでそう思ったからね。キレそうになった。そのぐらいの空気出してやがるんだ。ゲスト・バンド。何様?

「呼び屋」の彼を睨んで「こんなの連れてきやがって」と心の中で叫ぶけど、彼はもう「憧れのミュージシャン」と夢中で話していて、こっちのことはまったく気にしてない。

なんとなく食事の会場がシラケてたけど、ゲスト・バンド は「ボンジョビ」かと思うような態度で横柄に振る舞ってる。

なんだよ、と思ったけど 一応 ヴォーカルは 業界の先輩になるし。挨拶はした。でも、お互いギクシャクして 会話は弾まなかった。

Rude people will be killed

これねぇ、「呼び屋」の子が悪いよ。このイベントは「どういう立ち位置なのか?」連中にちゃんと伝えてないんじゃない?

ボクらのバンドの「デビュー・ライブ」なわけ。

実際には「デビュー前 お披露目ライブ」だけど。

だから、このイベントのメインは こっちなわけよ。いわば金出してる、スポンサーがいるのは「こっち側」なんだから。

この世界、スポンサーあってのイベント出演でしょ? そうじゃなけりゃ、バンドに人気があって 何百人も何千人も呼べるなら「バンド始動」のイベントだよね? でも ゲスト・バンド の客はいない。明日、少しのファンとスタッフが来るかも知れない、って言ってるぐらいだから。

「こんな遠くまでは、さすがに俺のファンも あまりこないだろ」

とか軽く鹿児島を ディスること言って「言い訳」してたけど、本当に 人気があるバンドなら、どこでコンサートやっても それなりに来るさ。この田舎の町にだって、ファンがいれば来るわけだし。

でも、明日のイベントは ボクの親戚とか知り合いが大挙押し寄せて客席を埋めるんだ。つまり、どこまで行ってもスポンサーはコッチだろ? だったらスポンサーに挨拶しろとまでは言わないけど、せめてその態度はやめろよ!

boo

そのことを「呼び屋」はきちんと伝えなきゃいけない。

なのに それをせず。

こっちの金を使って勝手に「自分の好きなミュージシャン」を呼び、こっちのイベントにねじ込むなんて、契約違反もいいとこだ。さらに「呼び屋」はファンの目線でゲスト・バンドに話すから。彼らおだてられて木に登っちゃう。田舎にスーパー・スター様が舞い降りた。

勘違いしてるから、そういう偉そうな態度なのか、元々そういう性格なのか?

いずれにしても、親しくは なれない連中だ。

ボクとゲスト・バンドの間には ギクシャクした空気が流れていたんだ。

他の連中も、居心地悪そうにはしていたけど、ボクほどの警戒心はなかったと思う。

そう、警戒心ーー

ボクは、こんな不穏な空気で 明日のイベントが失敗すること だけは避けたい。だから、警戒していたんだよ。

ゲスト・バンドに振り回されることだけは避けたかった。この「偉そうな空気」を明日のイベントで出されたら、客席がシラケる。せっかくみんなを楽しませて盛り上がろうとしてるのに台無しになってしまう。

それを恐れた。だから うちのバンド・メンバーに、

「いいか。良いライブをやることに集中するんだ。ゲスト・バンドの変な空気に影響されるなよ」

って言ったんだけど。その焼肉屋の店を出た 路上で レイ・ギャング が バッターン、と派手に転んで腰を打った。

A woman falls violently on the street

「なにやってんの?」と思ったんだけど、うちのバンドは肝心な時に こういう失態をやらかす。明日のメイン・イベントを前に浮き足立ってるんだ。腰に大きな湿布を貼って。ステージには影響なかったけど、かなり痛がってたよ。

その「バッターン」て転ぶ瞬間を ゲスト・バンド の連中は目の前で見てたから。薄笑いを浮かべながら 素人が緊張しやがって、みたいな顔で余裕かまし、

「大丈夫ー?」

って言ってた。なんか 舐められたな、って思って イライラしたんだ。「なにやってんだよ、大事な時に! ここは失態を見せたらいけないタイミングなんだよ」

なんだろうな、あの気持ち。流れが悪い時に起こる「間の悪い出来事」

普段、しっかりしてる レイ・ギャングが、こういう時には 脇の甘さを見せる。明日のライブが心配だ。

フーリッシュ・プライド

当日、公民館の控室に行ったら、ボクらのバンドの楽屋の半分が水浸しだった。どういうこと? と思ったけど、古い建物だから。あちこちボロが出てて、先日の大雨で 雨漏りだか、近くの川の氾濫で床上浸水して、まだ水が引け切ってないとか・・とにかく水浸しの楽屋なんだよ。

Backstage flooded with water above the floor

半分は水たまり。残りの床も湿っていて、カビ臭い。電気も2つぐらい切れてて 薄暗いし。

荷物の置き場所が少ないから困った。

「おいおい。もっと まともな楽屋ないのかよ、こんな大きな公民館なのに」

と言うと うちのスタッフが、

「綺麗な楽屋は ゲスト・バンドが使っているみたいですよ。そっちが本当の楽屋で、ここは今 使ってないんだけど 今日はバンドが2つも出るから 急遽こっちを開けたんだって」

と教えてくれた。「呼び屋」の彼が、そういう割り振りにしたみたい。

Proceed through the flood

「ハァ?」だよ。すべてこんな調子で「ゲスト・バンド」中心で進んでいく。出番だって、ボクらが前座みたいな扱いで、ゲスト・バンドが出る時に「さぁ、お待たせしました。いよいよ〇〇バンドのご登場です」みたいな放送が入った。ふざけんな!!

こっちのイベント 乗っ取られた気分。「呼び屋」にしてやられた。

ゲスト・バンドのコンサートを うちの町の大ホールでやるために、他の街のツアーの手配を引き受けたようなもんだ。そういうことだろ?

イライラする気持ちを鎮めてステージに出た。胃のなかで噴水のように 胃液がピューっ、と出るのがわかった。

「うぐっ」

と体調が悪くなったけど、今更引っ込めない。ボクの育った町に ロックのバズーカ砲をお見舞いする。とにかく始まったんだ。

Gastric juice gushed out like a fountain in the stomach
Gastric juice gushed out like a fountain in the stomach

「行くぞ、進めー!!」

シャウトして、ロングトーンで歌って。動いてアクション決めて。歌って。客席に向かって「ハロー!鹿児島」って挨拶して。歌って。

気がついたら終わってた。40分くらいの演奏が終了した。拍手があった。

良かったのか悪かったのか?よくわからないな。

このところの アウェイな空気はなかったけど、こういうロックを聴く年齢層ばかりじゃないし。ボクも知らず知らず気負っていて。対バンに 舐められてたまるか、って気持ちが強くあったし。精神的にナチュラルじゃなかった。大きな失態もない。それなりの演奏は出来たつもりだ。

でも、なんか「やり遂げた」っていう開放感がないというか。田舎の人たちと一体になって楽しんで「凱旋ライブ」をやった達成感までは得られなかったんだ。

ただ ホッとした。「これで 九州ツアーが終わった、やるだけやった」ってのが本音かな。

I'm tired and take a breather

演奏が終わったら、すぐ 親戚とか知り合いとかが集まる「身内だけの軽いお食事会」があるから。

来てくれた人たちに挨拶に行くよう言われてたんだけど。ゲスト・バンドがどんな演奏するのか気になって、2曲ぐらい聴いてから 公民館を後にした。

普通だったな。よくあるバンドって感じ。下手じゃないけど、うまくもなく。2曲聴いただけだから判断できないけど、特に目新しいことをやっているわけでもない。

ライブハウスで年配の人たちが、ロックやブルースをギグ(セッション)するイベントがあるけど、あんな感じ。

既視感がある、いわゆる「よく見るタイプのバンド」であり演奏だった。まぁ、プロなりのレベルにあるから。これなら 一応お客さんも満足してくれるかな? と少し安心したんだけど・・とんでもないことが後でわかる。

お食事会で挨拶して「お久しぶりです、元気でした?」なんてやりとりを顔見知りの人、顔は覚えてないけど会ったことある人、親戚の親戚の、そのお祖父さんの奥さんの親戚。みたいな、よくわからないけど「みんな親しげ」な田舎あるあるを経験して、ビールをついで回ったりした。

pour beer at a banquet

「あんた、音楽やってるんだねぇ」

「西郷輝彦みたいに有名になってねー。田舎の自慢になるわ」

「バンドやってるんですね、有名人に会ったりします?」

「もっと演歌調の曲作ってくれるとレコード買うけどなー」

なんていう噛み合わない会話に冷や汗をかきながら笑って会話した。

「曲いいねー。演奏も歌も上手いし、カッコよかったよ」

という肯定的な意見を言ってくれる人にも、ピントはズレてるけど 一生懸命 理解しようとして足を運んでくれた人にも感謝した。心底 ありがたいなー、と思う。あの 公民館の大ホールが埋まって、ライブが出来たこと。凱旋と呼べるかどうかわからないけど、とにかく九州ツアーに来て、ボクのバンドがどんな音楽をやっているか 見てもらうことが出来たこと。いろいろあったけど、来た甲斐があった。

Shake hands with gratitude

曲を多くの人に知ってもらって ヒットさせるように頑張ろう。今度来る時は、ちょっとは有名にもなっていたいな。そう思いながら、みなさんと別れて喫茶店に入った。

この喫茶店は 実家の隣にあり、元々はおふくろが作った店だった。母親が店主で、オヤジが喫茶店のマスターとしてコーヒーをたてていたんだ。あの 親父がねぇ・・真面目で堅物だったのに、水商売をやるなんて。と、初めて訪れた時は 気恥ずかしかったけど。親父は 母親に言われて「喫茶のスクール」に通って本格的なコーヒーが入れられるようになった。

驚いた。親父のコーヒーは 美味しい。

ま、それも昔話。今、この店は 別の人のものだからね。

喫茶店に入って、窓側の席に座っていると、店に入ってくる人やら 窓の外を通り過ぎる人が、ペコン、ペコンと ボクに頭を下げて挨拶していく。最初は「近所の知り合いか?」と思ったけど どうやら「公民館に見に来てくれた人たち」みたい。

隣の席の人が、

「コンサート、客席の・・真ん中へんで見てましたよ。この町にコンサートが来たのは久しぶりで」

と話しかけられて

「あ、観に来ていただいたんですか? ありがとうございます」

と嬉しくなって笑顔を返した。

The person next to me was talking to me

「でもねぇ・・アレは良くないなぁ」

「え? ボクら、なんか やらかしました? いけないとこ、ありましたかねぇ」

不安になって尋ねると

「いや、ゲストで演奏してた人たちが・・まぁ、いいんだけど」

と口を濁して教えてくれない。何かあったのか? と急速に不安になり理由を聞きたかったんだけど

「じゃ、頑張ってください。応援しています」

と行ってしまった。

person leaving

そういえば、知り合いと親戚のお食事会場でも、

「あんたらのバンドだけでやれば良かったよ。あんなゲスト・・」

なにやら意味深なことを言われて面食らった。

でも、音楽詳しい人じゃないし、何か勘違いして言ってるんだろう ぐらいに聞き流していた。

ことが発覚したのは、夕方に 仲間たちと合流してからだ。

talk with a friend

「すごいこと言われてましたよ、あのゲスト・バンドに」

「そうそう。あの人たち ステージで。俺たちこそがプロだ、これがプロの演奏だ よく見とけー」

って散々 客席に吠えてたらしい。5〜6人の連中の仲間だけが客席で「そうだそうだー」って盛り上がってたらしいけど、会場は戸惑った感じで拍手もパラパラだった。仲間内とゲスト・バンドだけが変な騒ぎ方をするライブで、正直シラケたコンサートになって終わったらしい。

「まじか」

悪い汗が ドドドっと出てきた。ライブが最後、悪い印象で終わったと聞いてショックだった。「凱旋ライブ、失敗」

ゲスト・バンドはそのまま帰って行ったらしいけど・・後足で砂かけられた気分だよ。飛ぶ鳥、後を汚しまくり。フンまみれ。

A flying bird leaves no trace behind
A flying bird leaves no trace behind

「くそッ!」

思わず声が出たけど、もう遅い。ボクらの遠征コンサートは 最後の最後にボロボロになった。

ステージ上で、ヤツらは。ゲスト・バンドの連中は「ボクらを暗示するように」アマチュアが プロを気取ったって、本物とは違うんだよ「俺たちが本物のプロなんだ」「よく見とけ、これがプロの演奏だ!」って散々 叫んでたらしい。

100歩譲って、ボクらはまだ「アマチュア臭が抜け切らないバンド」で、自分たちが「本物だ」と教えるとしても。

そんなの ステージで叫ぶことじゃない。

演奏力で、歌で、曲で。聴かせればいい。本物の真価を見せて「あー、やっぱりプロは違うね」って思わせるプレイをすればいいんだ。そういうショーをして客席を楽しませればいいんだよ。

ロックバンドのSHOW を楽しそうに見つめる女性の画像。

Don't put up bravado, use your ability to convince them
Don’t put up bravado, use your ability to convince them

なのに 何度も何度も「これがプロだー」「俺たちこそプロなんだー」「本物なんだ、どうだすごいだろー」って何万回叫んでも、

「ハァ、そうですか。どこら辺に違いがあるんでしょう?」

って会場中にクエスチョンマークがいっぱい出ちゃうよ。

事実、会場が引いちゃって。最後は誰も笑わなくて、拍手もパラパラで、変な空気だけが残ったコンサートになっちゃったみたいね。盛り上がりに欠ける、というよりも 「うるさい人に怒られに来た」みたいになっちゃって。それじゃ、楽しめない。尻すぼみになっちゃうよね?

彼ら、何がしたかったんだろ?

わかってることは「俺たちはプロだ」って威張りたかったんだろうね。なんで?

よっぽど「コンプレックス」があるんだよ。だって 多少なりとも 顔と名前が知られてるのはヴォーカルだけ。あとのメンバーは、知らん。見たことも聞いたこともない。バンド名も、無名。

観客に、虚勢を張るミュージシャン

これじゃあさ、あとは実力しか判断材料が無いじゃん。でも、「実力で差を見せつける」って大変だよ。天と地ほどの差がなけりゃ「誰が見ても違うねー。大差あるねー」とは ならんよ。だから自分たちで必死で「俺たちはプロだー」「本物だー」と叫びに叫んで ボクらとはモノが違うことを証明しようとした。

でも、ボクらだって それなりに百戦錬磨だから。そりゃ、まだプロになっていない。プロと名乗れるほどの実力じゃないかもしれない。だからと言って、ゲスト・バンドに大差つけられるほどの実力差はないよ。まぁ、見方によるけど ボクらの方がいい、カッコいいって意見だってあった。当日のアンケートにね、そういう意見1つや2つじゃ無かったよ。でも、先方はプロだから、顔を立てて、あえておとなしくしてた。

でもさぁ。いい加減 虚勢張るのやめたら?

アマチュアとプロの境界線上にいる ボクはたくさんのミュージシャンを見てきたから よくわかる。

虚業なんだよ「エンタメ」の世界は。凄い人もいるけど、ハッタリかましてポジションを確保するヤツも多いんだ。

歌舞伎風のメイクで、ハッタリをかまそうとする男の画像。

Get the upper hand by bluffing
Get the upper hand by bluffing

例えば、ケーシー・ランキン さんちで開かれるパーティー行くでしょ。

昨日の夜の 音楽番組 にゲストで出てきたミュージシャンがいるわけ。座って、ラザニア食ってる。ケーシーさんの奥さんの得意料理、ラザニア。

たまたま席が隣同士になって。

「あー、昨日の番組見てましたよ。ギター上手いっすね、カッコ良かった」

ヴォーカリストだけど、ギターも弾くの。そのミュージシャン 上手いんだギター。

同じヴォーカリストとしてさ、憧れるわけよ。歌いながらカッコよく楽器を弾く人。ボクのギターはへなちょこだからね。曲作りと、たまーに「イメージのために」弾きながら歌う。他の楽器に助けてもらいながらね、ヘタがバレないように弾く。

だから そのミュージシャンに好意を持って。色々話してたんだ。いつからギター弾いてんのか、とか。
ギャラの話になって。最近ちょこちょこテレビに出てるし、CDも売れてるみたいだから「表参道のビル、一棟ぐらい買えるんじゃないですか?」って言ったら まだ貧乏だと言う。

「あんま、食えないよ。今でも。女に食わせてもらってる」

去年はバイトしてたこともあったって。そういう世界なんだよな。

だからね、プロって言ったって 食えるのはテレビやマスコミにバンバン出てくる ごくごく一部のミュージシャンだけなんだ。多少テレビに出てたって、バイトしてるヤツがほとんど。それが現状だよ。

just a handful of superstars

バイトにはいろいろあってね。有名人のバックバンドで弾いたり。楽器を教える講師になったり。着メロ作る仕事請け負ったり。地域振興の音楽作ったりね。

そんなに音楽の仕事ばっかり あるわけじゃない。ほとんどの食えないミュージシャンは、どうするか?

人がやりたがらない仕事に就く。たとえば どういうの?

工事現場の肉体労働、トラック運ちゃん、警備員、コンビニ、タクシー。いろいろ・・・

バンドマンやってると、世の中の仕組みがよくわかる。「職業に貴賎なし」とか学校で教わるじゃない? あれ大嘘。職業に「貴賎と差別は はっきり あります!」

The work I do to continue playing music
The work I do to continue playing music

上の方から条件の良い仕事をしていって、最下層になると もうカスみたいな仕事しか残ってない。奴隷仕事ってやつだ。

じゃあ、条件の良い 上の方の仕事って誰がやるの? 頭のいい大学を出て、良い職場環境に就職できた連中か、親戚知り合いに「いい会社の社長」がいて特別枠で雇ってもらえるか。宝くじで当たったぐらいの確率を潜り抜けた人が上位の仕事を取っていく。

それから良い学校順に「有利な仕事が無くなっていって」スポーツとか何かの技術で飛び抜けた連中が別ルートで駆け上がって楽しい職場とたくさんのお金を持っていくね。

で、普通の人は競争しながら「少しでも条件の良いとこに就職して、幸福を目指す」

ここぐらいまでが「真っ当な仕事」

こっから下は地獄の門が開いている。過酷、長時間労働、危険、退屈、安い賃金。腐った上司、裏切る同僚。パワハラ、セクハラ、カスハラ、ブラック企業・・・

奴隷同士は相手を卑下したり差別したり 電車を降りたら少しでも先に行こうと、走って人を押しのけたりね。修羅のごときだ。

A world of competition and discrimination
A world of competition and discrimination

この最下層の仕事は 誰もやりたがらない。嫌な仕事だし、顎で使われて人間扱いされないし。体が曲がっちゃうぐらい重いもの持たされて病気や事故になるけど 貰える給料は 安くて笑う。でも、もう そういう仕事しか残ってない。

誰がやるの?

外国人か。

何も考えず、流されるように生きてきた人か、病気や親の介護など、自分ではどうにもならない事情により メインストリームから外れた人。これは ごく少数かな? あるいは、

「何かの夢を追いかけて、まだ掴めてない人」つまり 夢が叶ってない人が「夢を追いかけながら過酷な仕事に就く」

そりゃそうだ、夢がキラキラしてるからこのキツさに耐えられる。いつか夢を手に入れて幸せになろうと思ってるから耐えられる。

people who carry burdens
people who carry burdens

でもね、キツいから。

今回のバンドのように「俺がプロだー」普段の仕事は仮の姿だ。お前ら見とけー。

と、やりたくなる気持ちはわかるよ。

でも、本物になりたいなら やるべきじゃなかった。それを見たお客さんたちは「2度とそのバンドを見たいと思わない」から。悔しい思い、叫びたい気持ちは「作品に昇華」すべきだ。

多くの人が非難している画像

ボクらが「呼び屋」クンみたいに「ひれ伏さなかった」のが気に入らないのか?

「うわー、プロの有名な先輩。憧れです、ボクたちも頑張ります」

って言わなかったから怒ってるのか? 今となっては、わからないけどさ。

プロかどうか、本物かどうかを決めるのは「自分じゃない」周りだよ。

お客さんだよ。お客さんが感動するような作品を作り、演奏をして心からの拍手をもらう。それがプロだろ?

He has his talent recognized by a fortune

「自分はプロだから、良い加減なことはしない」とプライドを持つのは良いことだ。

でも「俺はプロだから、尊敬しろー」と変な気持ちを押し付けるのは 馬鹿げた自意識過剰。「フーリッシュ・プライド」だ。

物の見方が一方的で、偏りすぎてるよ。

If All You Have is Hammer, Everything Looks Like a Nail.

ハンマーしか持っていなければ、全てが釘のように見える(イギリスの諺)

strong-minded man

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Musicians waiting for their turn in the waiting room
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